第42話 悪い冒険者をぶちのめす
闘技場のリングの上に立った俺を、ドミニクは正面に見据え、尋ねる。
「丸腰で良いのか?」
「そんな趣味の悪い鎧を着るよりはマシだよ」
「はん、手加減はしねぇぞ?」
ドミニクは笑いながら剣を構える。
「ふぅ……ふぅ……」
身体が焼けるように熱い……。
俺が今食べた食材の副作用だ。
でも、思考は研ぎ澄まされていて意識はハッキリとしている。
先ほどのグラサンをかけたギルドマスターが俺たち2人の間に立って両腕を挙げた。
「今回の決闘は俺――ギルドマスター、ロッド・マクベスが立ち会わせてもらう。2人とも、良いな?」
返事をする代わりに、俺とドミニクの視線は真っすぐお互いを睨みあう。
ロッドは挙げた両腕を交差させた。
「では、決闘開始!」
ドミニクは剣を掲げ、俺に向かって疾走した。
剣が光り、スキルが発動する。
「こいつを食らいな! 『
俺に向かって荒々しく剣が振り下ろされる。
「エノア様っ!」
心配するロマリアの声が聞こえた。
――バキィ!
「――は?」
次の瞬間、ドミニクの呆けた表情が見えた。
俺が振り下ろされた剣を素手で受け止めると、そのまま剣を握りつぶしたからだ。
「うぉぉぉ!!」
次に俺はドミニクの頭を掴むと、力のままに闘技場の石畳に叩きつける。
――メコォ!
地面にヒビが入り、石畳は煎餅のように割れる。
ドミニクの顔面が床にめり込み、小さなクレーターが出来ていた。
「はぁ……はぁ……」
周囲は騒然とし、食材の副作用で息が荒いままの俺の鼓動がうるさく聞こえていた。
立会人のロッドだけが特に驚くことなく、俺の腕を持って上に挙げた。
「勝者、ガキの冒険者!」
「やったー!」
「さ、さすがはエノア様ですっ!」
「カッコ良かった……」
俺の勝負を見守ってくれていたルーナ、ロマリア、フェリの3人も俺の勝利を喜んでくれている。
「う、嘘だろ……あのドミニクが一撃で……」
「あのガキ、どんな力してやがる……」
「リングがぶっ壊れちまった……」
周囲の冒険者たちは信じられないような表情で床に刺さったままのドミニクを見つめていた。
(よし……何とか勝てたな。問題はこの後なんだけど……)
そんな事を思いつつ、俺は自分の身体に鑑定を使う。
【 名 前 】 エノア・ウィシュタル
【 年 齢 】 10
【 職 業 】 無し
【 体 力 】 114(+300)
【 魔 力 】 46(+300)
【 攻撃力 】 75(+1243)
【 防御力 】 58(+300)
【 俊敏性 】 62(+300)
使い魔
《従属契約》 白虎
【固有スキル】 キャンプ
《バフ効果》
・『整いLv,1』残り4分
(全ステータス+300)
・『ドラゴンの心臓によるバフ』
(攻撃力+943)残り28分
そう、俺が先ほど食べたのはエラスムスの心臓だ。
あらかじめ鑑定していたので、これを食べると一時的に強力な力が手に入ることは分かっていた。
いざという時に利用しようと思ってたんだけど……思ったよりも早く出番がきたな。
【ドラゴンの心臓】
概要:
ドラゴンの心臓には強力な毒素が含まれていて、人間が口にすれば1時間もせずに絶命する。もしも食用とするのであれば毒抜きは必須である。
一時的に強力な力を得るが、その代償として疲弊してしばらく身体が動かせなくなる。
毒については、「トゥルーカット」に解毒の能力が含まれているので問題はない。
しかし、俺の爆発しそうな心臓の鼓動を聞く限りだと代償は免れないだろう。
恐らく、後数時間で俺は身体が動かせなくなる……とはいえ。
「やったよ、みんな!」
「エノアっ!」
俺がピースすると、ルーナが俺に跳びついてきた。
続いて、ロマリアとフェリも俺の手を取って、喜んでくれている。
――とにかく今は、無事に勝てた事を喜ぶことにした。
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