第41話 完全にかませ犬です


「テメェ、逃げるんじゃねぇぞ!」


 ドミニクに言われて、俺はルーナ達と一緒に冒険者ギルドの奥にある闘技場に連れえてこられた。


 闘技場は石畳で円形のリングになっていて、確かに決闘をするにはうってつけの場所だ。

 冒険者ギルドにいた他の冒険者たちも、俺たちの後からついてくると闘技場の周囲を取り囲む。


「ドミニクが勝つ方に5万ソル!」

「俺は8万ソルだ!」

「おいおい、誰かガキ達の方にも賭けろよ~! 賭けが成立しねぇぞ!」


 そんなことを言って笑い合っていた。

 俺の隣にいるドミニクは大きくため息を吐く。


「ふん、おめでてぇ野郎たちだ。俺はお前の事を甘く見たりしねぇぜ? さっきの一撃、トラにでも殴られたみてぇだったからな。だがしかし、お前は俺には到底勝てねぇ」


 リングの中央に行くと、ドミニクは魔法を詠唱する。

 すると、ドミニクの金色の鎧が淡い光に包まれた。


「おいおい、ドミニクの奴。自分にバフ魔法までかけてるじゃねぇか」

「本気か。こりゃ、すぐに終わっちまうな」

「ガキ相手に大人気ねぇ奴~」


 ルーナはググッと伸びをして俺に微笑む。


「エノア、私に任せて! あんな奴、一発で倒しちゃうから」


 しかし、俺は首を横に振った。


「いや、ルーナ。手を出したのは俺だ、俺が戦わないとドミニクは納得しないと思う。盛り上がってる周りの冒険者達もね」

「えっ、でも……」


 ルーナは心配そうな表情を向ける。


「大丈夫、俺は負けないよ。フェリとロマリアのそばにいてあげて」

「……分かった、エノアを信じるよ!」


 ドミニクが自分にバフをかけたなら、俺も自分にバフをかければ良いだけだ。

 もっと――強力なバフを。


 俺はリュックサックを出すと、その中からとある”食材”を出した。

 ドクンドクンと脈打つは、決して口にしてはいけないという警告をしているようだった。


 俺は、『トゥルーカット』を取り出してそれを一口大に切り分ける。

 そして、口に運んで飲み込んだ。


(うぅ……信じられないマズさだ……)


 そして、そのまま俺もリングの上にあがってドミニクと向かい合った。

 ドミニクは俺に言う。


「俺が勝ったら、その奴隷を引き渡してもらうぜ?」


 俺はロマリアをチラリと見る。

 ロマリアは俺を見て、力強く頷いた。

 どうやら、俺の事を信じてくれているみたいだ。


「良いよ。その代わり、俺が勝ったらドミニクに答えてもらいたいことがある」

「ハッ、俺がテメェに負けるなんてあり得ねぇから良いぜ。何でも言うことを聞いてやるよ」


 ドミニクは笑いながら剣を抜いた。


 ――――――――――――――

【業務連絡】

 次回、ドミニク死す!

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