第40話 決闘することになりました


「――ぐへっ!?」


 ドミニクは俺に殴られると、ギルドの壁まで吹き飛ばされた。

 ガシャンと音を立てて床に落ち、周囲は騒然とする。


「おいおい、ドミニクが吹っ飛ばされたぞ……!」

「あのガキ、どんな筋力してやがる!?」


 朝風呂の時に念のためサウナにも入っておいたからバフがかかっていた。

 だからドミニクを殴り飛ばす事ができた。

 そんなことよりも……


(や、やっちゃった……ルーナには我慢するように言っておいて、俺は自分で……)


「ごめん、我慢できなかった……」


 謝ると、ルーナは俺にニッコリとほほ笑む。


「エノア、ありがとう。あと一瞬遅かったら、コイツ殺しちゃうところだった」


 見ると、ルーナの右腕にはバチバチと電気が纏っていた。

 多分、冗談ではなく本気で殺すつもりだったんだろう。


「ルーナ、ダメ……殺すのは情報を吐かせてから……」


 フェリもパーカーの中に隠し持っていた弓をいつの間にか出している。


 一番最初に俺が手を出しちゃっただけで、どうやら全員気持ちは同じだったらしい。

 ロマリアを傷つけたコイツは絶対に許せない……。


「わ、私なら大丈夫ですっ!」

「そんなに震えてて大丈夫なわけないよ。フェリ、ロマリアをお願い」

「任せて……」


 フェリがロマリアを抱き寄せると、俺に殴り飛ばされたドミニクは立ち上がる。

 額には、はち切れそうなほどに血管が浮き上がっていた。


「……テメェ、どこの誰か知らねぇが死ぬ覚悟は出来てるんだろうなぁ!」

「あいにく、今はもう死ぬ覚悟なんてないんだ。生きなくちゃ、美味しいご飯が沢山食べられないから」

「そのとーり!」


 ルーナと共に言い返すと、俺とドミニクの間に剣が飛んできた。

 そして、床に突き刺さる。

 剣が飛んできた方向に目をやると、グラサンをかけた強面のギルドマスターがグラスを拭いていた。


「お前ら、こんな所で騒ぎを起こすなよ? やるなら、そっちでやれ」


 そう言って、親指でカウンターの奥を指し示す。

 ドミニクはやる気満々で両手の拳を自身の目の前でぶつけた。


「決闘だ! この痛み、100倍にして返してやるよ! マスター、奥の闘技場を借りるぜ!」


 こうして、俺はドミニクと戦うことになった。


――――――――――――――

【業務連絡】

 早く、まったりスローライフをさせたいです……。


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