第39話 我慢できませんでした
俺たちの目の前に現れた金色の鎧の男は、ロマリアを見てへらへらと笑う。
「おいおい、あれだけ醜い傷だらけだったのに随分と綺麗になってんじゃねーか! 一体どんな手段を使ったのか知らねーが高級娼婦って言われても見劣りしねーぜ?」
俺はロマリアを自分の後ろに隠すと、フェリも一緒にロマリアを守るように隣に立った。
ルーナは敵意をむき出しにして問いかける。
「誰よ、アンタ」
すると、周囲の冒険者たちが笑った。
「おいおい、お前らドミニクも知らねぇのかよ!」
「このギルドのD級冒険者だぜ?」
「やっぱりガキだな、怪我する前に帰りな」
金鎧の冒険者――ドミニクはやれやれといった様子で髪をかき上げながらため息を吐く。
「まぁ、良いさ。それより俺の質問に答えろ。どうしてウィシュタル家の奴隷がこんな所にいるんだ?」
俺は身体を震わせるロマリアを見る。
ロマリアの為にも、今はできるだけこの男を遠ざける事に決めた。
「一体、何を言っているんですか? 俺の仲間が奴隷なはずありません」
「いいや、見間違えるはずがねぇ。俺を見た瞬間のその怯えた目も、その仕草も、俺はよーく覚えているからなぁ」
ルーナは既に今にも飛び掛かりそうになっていた。
(ルーナ、我慢してくれ。ここで騒ぎを起こすとウィシュタル家の耳にも入るかもしれない。この男を捕まえて尋問するのは後で良い……)
そんな風に考えている俺の目を見ると、ルーナはグッと堪える表情で深く息を吸った。
ドミニクは次にいやらしい視線をフェリとルーナにも向ける。
「他の女2人もガキくせぇが随分とイケてるじゃねぇか。ウィシュタル家の奴隷も今なら性処理用に使ってやっても良いぜ?」
(怒っちゃダメだ……ルーナだって耐えてくれてるのに、俺が台無しにしちゃダメだ……)
何度も頭の中で繰り返し、俺は理性を働かせる。
「結構です。みんな、ここを出よう――」
俺はロマリアたちを連れて踵を返す。
ウィシュタル家が奴隷を囲っている場所はドミニクが情報を握っているという事は分かった。
ならば、後で1人になった時に襲えば良い。
感情的になるな。
D級ならエラスムスよりも格下、全員でかかればいけるはずだ。
俺はみんなを連れて、そのままギルドの入り口に向けて歩く。
すると、背後でドミニクが笑った。
「お前を痛めつけてる時は楽しかったな~、顔面に葉巻を押し付けると何度も謝ってきてよ! 頭を踏みつけながら、アランと一緒にゲラゲラと笑ってやったっけ」
その言葉を聞いた瞬間、俺の頭の中は真っ白になっていた。
そして、気が付いたら――
――ドゴォ!
俺の右拳はドミニクの左頬を殴りつけていた。
――――――――――――――
【業務連絡】
昨日は投稿できず、すみません!
引き続き、頑張ります!
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