第31話 イタズラされました

 俺が風呂から出てくると、3人は暖炉の前で寄り添い合うように眠ってしまっていた。


「アランからエルフ族の里の人たちを解放する方法を話し合おうと思ってたんだけど……」


 お腹を出して寝ているルーナの上にロマリアとフェリが重なり合っている。

 みんな、疲れてただろうしこれは仕方がないな……。

 そう思って、布団をかけようとすると不意に視界が歪んだ。


(あっ、ヤバい……)


 俺のこの10歳の身体も丁度限界を迎えてしまったみたいだ。

 とんでもない睡魔に襲われる……。

 せめてもの抵抗で3人の方へはいかずに絨毯にお尻を着けて、ソファーに背中からもたれかかる。

 俺はそのまま意識を失った……。


       ◇◇◇


「うん……? 朝になっちゃったか……」


 窓から差し込む光で目を覚ます。

 瞼を擦ろうとするが、右腕が上がらないことに気が付いた。

 何だか、柔らかくて暖かい。

 目を向けると、右腕にルーナがギュッと抱き着いて身体をすり寄せていた。


「やれやれ……またか……」


 困った俺は左手で頬をかこうとするが、左腕も持ち上がらない。

 見ると、こちら側はロマリアが腕を抱きしめて寝ている。


「ぐぅぐぅ……」


 何だか棒読みな寝息を立てているけれど……。

 恐らく、ルーナにイタズラを手伝わされているのだろう。

 嘘をつきなれていないロマリアのとても早い心臓の鼓動が俺の左腕を伝っている。


 そして、俺の膝はフェリが枕にしていた。

 ロマリアの狸寝入りは分かりやすいけれど、こっちは起きているのか判断がつきづらい……。

 安らかな表情ですぅすぅと小さな寝息を立てている。


 いつまでもこのままでいたいけれど、そういうわけにもいかない。

 俺は確実に起きているロマリアに声をかける。


「……ロマリア、朝食を作るの手伝って欲しいんだけど」

「――はい! 承知いたしましたっ!」


 俺の声にロマリアは瞳を開いて元気よく返事をする。

 そして、「しまった」とでもいうような顔でハッとした。

 狙い通りだ、ロマリアはいつも俺の役に立とうとしてくれている。

 俺に頼られたことで、反射的に返事をしてしまったのだろう。


 性格の良さが徒になってしまったロマリアを見て、俺は笑う。


「あはは、じゃあお願いね」

「はぃぃ~……。あ、あの、寝たふりをしてすみませんでした……」

「良いよ。ルーナに言われてやったんでしょ? 『両腕を拘束して俺を動けなくしてやろう』みたいな感じで。じゃあ俺の右腕に巻き付いてるルーナを起こしてくれる?」

「か、かしこまりましたっ! ルーナ様、朝ですよ……」


 ロマリアはルーナを揺さぶる。

 すると、ルーナは俺の右腕をさらに強く抱きしめる。

 というか……押し付けてきている……。


「ルーナ、起きて。俺の右腕がもげる前に」


 俺が左手で頭を軽く撫でるとルーナはうすぼんやりと目を開いた。


「う~ん、エノアおはよう~」

「ルーナは本当に寝てたんだな」

「あれー、ロマリアの方が先に起きてたんだー?」

「あぁ、お前のイタズラにちゃんと協力してたぞ」

「イタズラって何のこと――」


 ロマリアは突然慌てだして、ルーナの言葉を遮った。


「エノア様っ! あ、朝ごはん! フェリ様を起こして、早く朝ごはんを作りましょう!」

「ロマリア、そんなに慌てなくても良いよ? やる気があるのは良い事だけど」


 何故か顔を真っ赤にするロマリアと一緒に朝ごはんの用意を始めた。


――――――――――――――

【業務連絡】

 引き続き頑張ります!

 ちょっと他の原稿の締切があり、投稿できなかったらすみません!

 よろしくお願いいたします!

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