第30話 あらぬ誤解をされてしまう


 ――エノアが出て行った後の脱衣所ではルーナ、ロマリア、フェリの3人が入浴の準備を始めていた。


「2人とも、身体が凄い綺麗……エルフでもこんなに綺麗な人いない……」

「だってさ、ロマリア! 良かったね!」

「ほ、本当に夢みたいです……そんな風に言って貰えるなんて」

「エノアもロマリアの身体を見て『綺麗だ』って何度も言ってたもんね!」


 ルーナの話を聞いて、フェリは顔を赤らめる。


「えっ……ロマリアとエノアって既にそういう……」

「――ち、ちち、違いますよっ!? 私なんかがエノア様となんて! アレは事故っていうか! ルーナ様、そこだけ言ったら勘違いされてしまうじゃないですか!」

「ごめん、ごめん。フェリもこのお風呂に入ったらツヤツヤのウルウルになるよ~」

「それもエノアのスキルの力……? 本当に底が知れない……」


       ◇◇◇


「エノア、お待たせー!」

「お先に頂いてしまい、申し訳ございませんっ!」

「本当に気持ちよかった……痛んでた髪も凄くサラサラに……」


 お風呂から上がった3人が俺の用意したキャンプ服に着替えて出てきた。


「お風呂場からいっぱい笑い声が聞こえてきたよ」

「ルーナ様がお湯を口に含んで、虎の彫刻の真似をされたので笑ってしまって!」

「その後、私たちにお湯をかけてきた……」

「あはは! すっごく楽しかった! エノアにも来て欲しいから、もう一回悲鳴を上げようかと思ったよ!」

「ルーナ、冗談でも本当に心配しちゃうからやめてね」


 バシャバシャと水音がこちらまで聞こえてきたのはそういうことか。

 ロマリアもフェリも心にとても大きな傷を抱えている。

 そればかりは俺のスキルじゃどうにもできないけれど、ルーナの底抜けの明るさが2人を笑顔にしてくれたんだろう。


 お互いにタオルで髪を拭き合いながら、俺に話をする。


「あ、そう言えばお風呂場に変な部屋があってさ!」

「はい、恐ろしく暑い部屋がありました……それに、焼けたような石と柄杓に水も……」

「そういえば、隣の浴槽は水のお風呂だった……あれも謎……」


 そうか、『サウナ』という存在すらこの世界には無いんだ。

 そりゃ奇妙に思うよな。


「あの部屋は俺の『趣味』だよ。あの暑い部屋で限界まで我慢してから水風呂に入ると気持ち良いんだ」


 俺が『整い』についてそう説明すると、3人とも変な沈黙の後ヒソヒソと話し合う。


「セルフ拷問……!? 火責めと水責めなんて……。エノア様にそんなご趣味が……協力したいですが、私はエノア様を苦しめることなんてできませんし……」

「ロマリア、何か勘違いしてない……?」

「エノア……私なら多分る……必要なら頼って……」

「フェリ、どうして腕をブンブンと回してるの?」

「エノアって苦しいのが好きなの~? 私は手加減上手くできないからなぁ」

「そういう訳じゃないんだよ……」


 苦しい事が好きな変な奴だと思われてしまった。


 どうにかチャンスを見つけて、3人にもサウナを体感させて誤解を解かなくちゃ……。


――――――――――――――

【業務連絡】

 ゆる~い感じが続いて申し訳ありませんが、引き続き楽しんでいただけると幸いです!

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