第29話 虎が口からお湯を出す奴
「よーし! 早速お風呂に入るぞ〜!」
「わぁ~! だから、脱ぐのが早いって! まだお湯も張ってないのに!」
ルーナが脱ごうとするシャツを掴んで、ギリギリの所で俺は止める。
「そ、そうですよルーナ様! エノア様は男の人? なんですから!」
「ロマリア、どうして疑問形なのかな? 俺は紛れもなく男の人だよ?」
「私も最初に見た時にどっちか分からなかった……」
「フェリまでっ!?」
コンプレックスをズタズタに踏み抜かれる。
まぁ、中身が年齢30過ぎの俺がこんな若い子たちに男として見られないのは健全なことなんだけど……。
そんな事よりも、俺はお風呂を用意する方法を考える。
「そのままお湯を入れても良いけど……もっと良い方法があるね」
という訳で、俺はお湯が湧き出るキャンプスキルのドラム缶風呂「スチーム・オアシス」を出す。
お湯の効果はログハウスの水道をひねるよりもこっちの方が良いだろう。
なにせ、入浴専用のお湯だ。
次に浴槽のやや高い位置に丸い窪みのある台を作った。
「ルーナ、これを持ち上げてこのくぼみにはめ込んでくれる?」
「はいはーい!」
ルーナはお湯が沸き出るドラム缶を簡単に持ち上げて、その台の上でドラム缶を倒した形にしてもらい、俺がロープで固定する。
「出来た!」
ドラム缶から浴槽にお湯が注ぎ込む形にして掛け流し温泉の完成だ。
「すごーい! これならお湯も使い放題だね!」
「でもドラム缶から出てきてるのは見た目的に……あ、そうだ」
アイデアを思いついた俺はヒノキ材の塊を出す。
コレは『木製の台』というカテゴリでキャンプスキルから出すことができる。
そして、両手に彫刻刀を出して道具の能力で一瞬で削り取った。
出来上がったのは、虎の姿のルーナの顔の彫刻だ。
「わー! 凄い! 私だ!」
「これを、ドラム缶に被せてくれる?」
「おっけー!」
そして、虎の顔の彫刻をドラム缶に被せると、その口からお湯が出てくる形になった。
「わー! 私が透明なゲロ吐いてる!」
「ルーナ、ゲロとか言わないで……そう言われると、コレってあまり見栄え良くないかな?」
「そんなことないですっ!」
「うん……虎の顔……可愛い……」
「2人とも、ありがとう~! 私も嬉しいよ~!」
何とか、全員の承認を得た。
お金持ちの大浴場とかで猛獣のモニュメントの口からお湯が出てくるのはあるあるだけど、知り合いの口から出すのはあまり良くないという二度と役に立たない学びを得る。
でも、ドラム缶から直接流れ出てるのは流石に工業廃水感が凄いから……。
「フェリ、お待たせ。これでようやくお風呂に入れるね」
「あの……ち、違うよ! 普段はちゃんと毎日お風呂に入ってる……」
「わ、分かってるよ! 水浴びをすることすら頭に浮かばないくらい敵討ちのことを想ってたんだよね。フェリに少しでも心の余裕ができて良かったよ!」
俺が笑いかけると、フェリは顔を赤くする。
やっぱり、女性としては恥ずかしいだろう。
俺も配慮が足りなかったと反省する。
「人間って色々と繊細だよね~」
「俺も気を付けるから、ルーナもちゃんと周りに配慮してね」
「私は配慮してるもんっ!」
「――って言いながら俺の前で服を脱ぎ始めてる時点で配慮できてないからっ!」
俺は3人の女の子たちを脱衣所に残して、一目散に退散した。
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