第26話 ドラゴン肉でBBQ!

「じゃあその前に腹ごしらえだな! お肉が焼きあがったよ!」


 俺がエラスムスの串焼きをお皿に盛りつけると、ルーナは耳をピコピコと動かして喜んだ。


「里を焼いた悪いドラゴンも今は美味しいお肉になってるワケだし。食べて恨みを晴らしちゃおう!」


 ルーナはそう言って、真っ先に串を手に取って豪快にかぶりつく。

 肉汁が溢れて、ルーナの口の周りを汚した。


「おいし~い! ほらほら、みんなも食べて食べて!」


 そして、あっという間に1本を完食。

 ルーナはすぐに2本目を手に取る。


 人食い龍の肉ということで俺は少し抵抗があったけど……

 すでに俺は屋敷で出された魔物の肉を何度も食べているし、今更か。

 魔物たちは当然、人を襲って食ってるわけだし。

 その魔物を冒険者達が狩って市場に肉が売られているんだ。

 文字通り、食うか食われるかの世界なので俺の感覚も随分と麻痺してきた。


「エノアもボーっとしてないで! ほら、あーん」


 ルーナはそう言って、俺の口元にエラスムスの肉串を差し出す。

 

「…………」

「…………」


 それをなぜか、無言で見つめるロマリアとフェリ。

 変な羞恥心に襲われながら、俺はルーナが差し出す串を咥えた。


「――っ! 本当だ! すっごく美味しい!」


 あの性悪龍がこんなに美味いとは思わなかった。

 炭火で焼いたことで、香ばしい風味が加わっている。

 肉汁が口の中に広がり、深い旨味が嵐のように押し寄せてくる。


「ほら、2人も遠慮せずに食べて!」

「そうだよ~、早くしないと私が全部食べちゃうかも!」

「流石のルーナでも食べきるのは無理だよ」


 何せ、ドラゴン1匹分だ。

 食べる分だけキャンプスキルの包丁「トゥルーカット」で切り分けたけど、ほぼ丸々残っている。


「で、では……頂きます!」

「頂きます……!」


 ロマリアとフェリも手を合わせると恐る恐るドラゴン串を取る。

 小さな口で肉にかじりつくと、2人とも瞳を輝かせた。


「お、美味しいですっ!」

「うん……!」

「良かった! フェリも大変だったけど、いっぱい食べて元気だしてね」


 俺は2人の様子に満足しながら、まな板で今朝採取した野菜を切る。

 それら更に細かくして、ボールに入れると酒、しょうゆ、みりんなどで味を整える。

 出来上がった野菜のソースに、最後にすり下ろした大根を加えた。

 その間に煙で炙っていたキノコを取り上げる。

 細かく切って、別のボールへ。

 今度はケチャップ、醤油、砂糖などの調味料を出して混ぜ合わせる。

 エラスムスの赤い爪は鑑定で調べると『ドラゴンペッパー』という香辛料の原料だった。

 なので最後にこれを削って加えると、キノコが香るピリ辛BBQソースが出来上がった。


 俺はこの2種類のソースをお洒落な容器に移し替えると3人が座っているテーブルに提供する。


「ソースも作ったから良かったら使って。こっちはピリ辛の濃厚ソースで、こっちはサッパリとした野菜ソースね」


「――あっ、この辛いソース。すっごく美味しいですっ!」

「私は……野菜のソースが好き……」

「どっちも美味しい~! エノア、天才! こっち来て、食べさせてあげる!」

「ルーナ、俺は自分で食べられるから大丈夫だよ」


 俺も席について、4人で和気あいあいと食べ始める。

 うん、やっぱりこうやって自分たちで仕留めた獲物を食べてる時が一番生きている実感が得られる。

 こんなに素敵な仲間たちに囲まれるなんて思ってなかった。

 ずっと独りぼっちで生きていた生前の自分に教えてやりたいくらいだ。

 猫を助けると良い事があるぞって。


(そういえば、このBBQでもきっとステータス上昇効果があるんだよね)


 俺は、エラスムスのBBQ串に鑑定を使ってみた。


 ――――――――――――――

【業務連絡】

 本日、10月10日はジュウジュウの日ということで、お肉が焼ける良い音がしそうですね!

『ギルド追放された雑用係の下剋上~超万能な生活スキルで世界最強~』

が発売中なのでもしよかったらお買い求めください、早くも15万部突破の人気シリーズです!(漫画です)


 明日からも引き続き、毎日投稿頑張ります!

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