第25話 追放した者の代償

 フェリは改めて自分の素性を話してくれた。


「私は……東のエルフ族の国『カイリス』の姫……」

「えぇっ!? お、お姫様!? ご、ご、ごめんなさい私のような下賤な者がお近づきになってしまい――」

「大丈夫……! ロマリアが仲良くしてくれて嬉しい……私は城内で育てられたから外界を知らなくて……毎日弓の練習をしてた……」


 俺と似たような状況だ。

 とはいえ、俺は軟禁されていてフェリはちゃんと大事にされていたからなんだろうけれど。


 話すのが苦手そうなフェリは少し顔をうつむかせながら、頑張って続きを話す。


「……そして3日前。城の兵士が私の部屋に来て言ったの……『姫様、直ちに裏口からお逃げ下さい。約束の場所で落ち合いましょう』って」


 恐らく、エラスムスが攻めてきた時だろう。

 一人で逃がしたのは、フェリには弓の腕があるし目立たないようにするためか。


「私はよく分からないまま弓矢だけを持って城の裏口から逃げた。何かがあったら落ち合う場所として指定してあった森の湖まで走った。そしたら、背後で里が……『カイリス』があのドラゴンに燃やされてたの……」


 フェリは再び悲しそうな表情をする。


「それから私は一晩中待った。生き残りのエルフがこの場所に来ると信じて……でも誰も来なかった……。ドラゴンが飛んで行った方向は覚えてたから、私はその後を追いかけたの。そうしたらこの山の上を飛んでるアイツを見つけて、私は仲間たちの敵討ちを決意した」


 流石は一国の姫だ、気高い。

 フェリはこう見えても、結構意思が固いみたいだ。


「でも、私じゃ敵うはずもない。だから身を潜めてあのドラゴンを倒すチャンスを伺ってたら、貴方達がドラゴンを追い詰めてた」


 そして、フェリは再び頭を下げる。


「本当にありがとう。私、貴方たちに恩返しする為なら何でもする……」

「ちょっと、お姫様がそんな事言っちゃダメだよ!」

「でも、私の里はもう無い……私はもう姫じゃない……」


 肩を落とすフェリに、ルーナは語りかける。


「……フェリ、もしかしたら貴方の仲間たちは無事かもしれないよ」

「――え?」

「エルフ族って奴隷としての価値が凄く高いの。数が少ないし、森の中に隠れ住んでるから見つけにくい上に、みんなとても美しいから」


 ルーナの言葉の意味を俺は理解する。


「そっか! エラスムスの行動がアランによる指示だったら…!」

「うん、アランがエルフたちを捕らえて商品にしてるかもしれない」

「そ、そういえば私見ました! 馬車に乗せられる時に入れ替わりで綺麗な方々が運ばれてきた気がします!」


 ロマリアの証言にフェリは表情を明るくする。


「じゃ、じゃあ……!」

「フェリ様、きっと里のみんなは無事です!」

「うん! 助けよう! 俺も力を貸すよ!」


 俺とロマリアがフェリの手を握ると、フェリはまた泣きそうになりながら頭を下げた。


「ありがとう……私、エノアたちに会えて本当に良かった……!」

「よーし! じゃあエルフ族を助けて、ついでにアランにもこっぴどく仕返しをしよう! しっかりと代償を払わせないと!」


 ルーナは元気よく右拳をつき上げた。


――――――――――――――

【業務連絡】

 近況ノートに

 『おまけ(第25話)【エノアからルーナに愛の告白!?】』

 を投稿しましたので、ぜひご覧ください!


 今日は寒すぎてびっくりしました。

 皆様、風邪をひかれないようお気をつけください。


 引き続き、最新話を追いかけていただけると嬉しいです!

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