第24話 エルフ族のお姫様
邪龍エラスムスを討伐したルーナは俺を指さしてわざとらしく驚いた表情を見せる。
「あっ、エノアがまた女の子泣かせてる~!」
「えっ!? ご、ごめんっ!」
確かに、エルフの女の子は俺の隣でずっと泣いていた。
突然現れて俺たちの手助けをしてくれた彼女。
俺が泣かせたと指摘されたらその可能性もあるので反射的に謝ってしまったけど……
もしかして、釣竿を引いてる時に変な所触っちゃった……とか?
さっきは必死だったから……。
エルフの女の子は俺の服をギュッと掴む。
「ありがとう……! ……貴方たちがいなかったら、絶対に倒せなかった……!」
それだけを言って泣きじゃくった。
ホッとしつつ、俺は彼女の頭を撫でる。
「こちらこそ、助けてくれてありがとう。君の見事な弓の腕で足止めしてくれなければエラスムスを取り逃してたと思うよ」
「そうそう! 私も全力で走ったんだけど間に合わなくてさ! エノアたちが釣り竿で引っ張ってくれたおかげだよ!」
「あわわ、そ、そういえば私エノア様に思い切り抱き着いてしまいました! すみません、すみませんっ!」
ロマリアはいつも通り、よく分からない理由でペコペコと頭を下げる。
「それで、君は一体――」
――ぐぅぅ~
俺がエルフの女の子に事情を聞こうとする前に、ルーナのお腹が鳴った。
ルーナは少し恥ずかしそうにエヘヘと頬をかく。
「詳しい話はあとあと! みんなでご飯を食べようよ!」
「ルーナは一番走り回ってたしね」
「私だけじゃなくて、みんな頑張ってたよ! だからみんなも腹ペコのはず!」
「あはは、そうだね。じゃあ、何を食べようか」
「えっ、コレ食べようよ」
ルーナは、さも当然かのように指さした。
横たわる邪龍エラスムスの死体を。
◇◇◇
焚き火がパチパチと音を立てて燃え、熱気が肌に感じられる。
その焚き火の上には、俺が包丁で捌いたばかりのドラゴンの肉が串に刺さったまま並んでいた。
いわゆる、バーベキューという奴だ。
ドラゴンの肉は厚みがあり、火の熱がじっくりと伝わると脂が表面に浮き出してくる。
炭火の上で肉が焼かれ、滴り落ちる脂が炎に触れて瞬間的に大きな火柱を立てた。
「香ばしくて、凄く良い匂い……!」
ルーナは尻尾をフリフリと動かして、舌なめずりをする。
ロマリアとエルフの子も興味深そうに俺が串をクルクルと回して肉を焼く様子を見ていた。
「お肉が焼けるまでもう少しかかるから、先に君の名前を聞いても良い?」
俺が問いかけると、エルフの子は小さな声で恥ずかしそうに答える。
「……フェリ」
「素敵なお名前です! よろしくお願いいたします、フェリ様!」
そう言って、ロマリアはフェリの手を握る。
一緒にドラゴンを釣り上げたからだろうか、ロマリアはすでにフェリに懐いていた。
フェリは顔を赤らめる。
「うん……よろしく……ロマリア。ごめん……私、森から出たの初めてで……人見知りで……」
「フェリはエルフ族だよね? ってことは、東のエルフの里『カイリス』の出身?」
ルーナが尋ねると、フェリは答える。
「うん……。でも、エルフの里……このドラゴンに燃やされた……」
「えぇっ!?」
俺は驚いて、肉を焼いている串を落としそうになる。
恨みがどうこう言ってたけど、まさかそんな事をされてたなんて……。
「私は何とか逃がしてもらった……でも里のみんなは……」
フェリは悲しい表情でうつむいた。
――――――――――――――
【業務連絡】
次回はみんなでお食事会だと思います!
ドラゴン肉のステータス上昇効果、凄そうですね!
もっともっとエノアたちを大活躍させたいです!
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