第21話 追放した者たちは後悔する
エラスムスは改めてルーナに通告する。
「その震えている
ロマリアは俺の服を掴んで、勇気を振り絞るように口を開いた。
「――わ、私っ! それでエノア様とルーナ様が助かるのであればっ! 喜んでこの身を捧げます!」
「ロマリア、そんなことしなくて良い」
「エノアのいう通り。エラスムス、この2人のどちらに手を出そうと私と貴方は殺し合いをすることになる」
ルーナはそう言うと、姿勢を低くした。
いつでも跳びかかれる体勢だ。
「矮小な小娘ごときが、吾輩に勝てると思っているのか?」
「いつでも私から飛んで逃げられる距離を保ちながらいう言葉じゃないね。貴方も分かっているんでしょ、私と本気で戦ったらタダじゃ済まないって」
そう言って、お互いに睨み合う。
最後の確認の為に俺はエラスムスに尋ねた。
「エラスムス、お前はアランと契約を結んでいるのか?」
問いかけに対し、エラスムスは邪悪な笑みを浮かべながら答えた。
「そうだ、アイツは人間にしてはなかなか利口な奴だぞ。この霊山の資源を独占させてやっているんだ。金も鉄鉱石も吾輩には価値がないからな。アイツはその財力で貴族に成り上がったと聞いた」
「……なるほど」
これが、アランが財を成した裏側か。
まさか、邪龍と手を結んでいたなんて。
「――対価として、馬車で俺に『貢物』を送らせている。貴様らのような『役立たず』や『奴隷』だな。食うのは柔らかい子供の肉に限る」
(やっぱり……そういうことか)
アランの奴がこの山に子供を捨てる理由。
エラスムスに食わせる契約を結んでいるんだ。
だから、俺のことも確実に処分してくれると考えたのだろう。
しかし、その前にルーナが俺を保護し、俺がロマリアを保護したからエラスムスは怒っている。
エラスムスは俺とロマリアを見て舌なめずりをした。
「アランは上手く調教しておいてくれるのだ。どいつもこいつも吾輩を見て良い悲鳴を上げる。それを聞きながら手足などをちぎってワザと少しずつ食らってやるのがたまらん。恐怖が、痛みに泣き叫ぶ表情が……病みつきだ」
エラスムスは心から愉快そうな笑い声を上げた。
気を失いそうになっているロマリアを安心させてやるようにぎゅっと抱きしめて、俺はルーナに囁く。
「ルーナ、こいつは殺さないとダメだ」
◇◇◇
――ウィシュタル家。
捕らえた奴隷たちを幽閉している部屋でアランは激高していた。
「言えっ! 姫はどこに居る!」
手に持った鋼鉄の鞭を目の前の男性エルフの身体に振るった。
鋭い風切り音と共に肌に打ちつけられた瞬間破裂音が鳴り、そのエルフは苦悶の表情を浮かべる。
――しかし、その口から何も語られることはなかった。
「……ダメだな、こいつらは。死んでも言わんつもりだ」
アランは椅子に座り、部下を呼ぶと葉巻に火を着けさせた。
「アラン様、このエルフたちも大事な商品です。傷つけては価値が……」
「エルフ族の姫にどれだけの価値があると思っている? 処女であればさらに高値が付く。逃亡中にそこらの山賊に奪われる前に早く見つけて保護せねばならん」
アランはワザと捕らえられているエルフたちに聞かせるように言った。
「お前ら、騙されるな……。姫様は強いお方だ、山賊なんぞに遅れはとらない」
男性エルフがそう言うと、アランは葉巻を咥えたまま立ち上がる。
そして、再び鞭を手に取るとそのエルフが気を失うまで鞭を振るった。
周囲には血が飛び散り、他のエルフたちは悲鳴を上げないように声を押し殺している。
「全く、せっかくエラスムスにお前らの故郷の森を焼かせたのにまさか一番の商品を取り逃すとは……」
鞭を投げ捨てると、アランは再び椅子に腰かける。
「ちっ、まぁ良い。エラスムスさえいればまだまだ稼ぐ方法はある。さて、次はどの村を焼かせようか」
アランは邪悪な笑みを浮かべた。
――――――――――――――
【業務連絡】
次回、エラスムス死す!
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