第19話 異世界でサウナを作る
(ロマリアに嫌われてないと良いけど……)
そんな事を恐れながら、俺は服を脱いでいく。
昨日は動き回っていたし、結構汚れているはずだ。
ルーナもずっとクンクンと俺の匂いを嗅いできたし、やはり匂っていたのだろうか。
ルーナにまで嫌われたらちょっと立ち直れる気がしないな……
極上の体験が得られると評判のドラム缶の湯にゆっくりと身体を沈めていく。
(ふぅ~、これは確かに心地が良いね……)
常にお湯が沸き出るという特性上、かけ流し状態で湯も汚れない。
溢れるお湯のせいで加熱していた焚火が消えてしまっているけれど、そもそも温度が下がらないので常に適温だ。
一応、水はけの良い場所を考えてクラフトしたんだけど、俺が出せるキャンプ用品に珪藻土のバスマットもあったことに気が付いたから次からは足元に敷いても良さそうだ。
テントサウナと水風呂も出せるので、頭を冷やすついでに整ってから出ることにした。
異世界でもサ活ができるなんて、思わなかったな。
◇◇◇
風呂を終えると、キャンプスキルで出した新しい服に着替える。
ちなみに、最後は冷水を数分程度浴びてから風呂を出た方が健康に良い。
身体が自分で温まろうとするから体の内側からポカポカしてくる。
肌にも良いし、免疫力向上、抗うつ効果や抜け毛防止、痩せやすくなるし便秘にも効く。
いい事しかないのにみんなあまりやってないから不思議だ。
そんなどうでも良いことを考えていると、仕切りの向こうからロマリアが声をかけてきた。
「あの……エノア様! もしよろしければお洗濯は私にお任せください!」
「大丈夫、自分で洗うよ。ありがとうロマリア」
「そ、そうですか……差し出がましいことを言ってすみません」
きっと、ロマリアも自分で何か役に立てないと居心地が悪いのだろう。
「良かったら次は料理を手伝って欲しいな」
「は、はい! 何なりとお申し付けくださいっ!」
皮むきとか、簡単な事から少しずつロマリアにも手伝ってもらおう。
俺のキャンプスキルの道具があれば随分と楽になると思うし。
2人で作れた方が楽しいしね。
俺はお風呂場の桶に自分の着ていた服を入れる。
お風呂の残り湯で洗濯するのは前世でもよくやっていたな。
懐かしい気持ちになりながら、ドラム缶風呂のお湯を衣服にかける。
すると、衣服から汚れが一瞬で溶けて消えていくようだった。
(そうか、お湯の効果で汚れが消えるんだ)
これなら擦る必要もないから、洋服も傷まないで済みそうだ。
まさか、お風呂の残り湯の効果も活用できるとは思わなかったな。
◇◇◇
お風呂から出ると、ルーナはもともとの自分の服に着替えていた。
「もう乾いたんだね」
「うん、すっごく早いよね!」
「多分、焚火の効果かな。ロマリアが着てたボロボロの奴隷服はもう捨てちゃっても良い?」
「は、はいっ! あの、エノア様が出してくださったお洋服、とっても快適です!」
ロマリアはそう言って、背筋を伸ばして立っていた。
キャンプ用の服の中でもできるだけデザインが良い物を選んだけど……。
この世界のデザインの良し悪しは正直分かっていないのでロマリアが気を遣ってそう言ってくれているだけなのかは分からない。
「それにあのっ! 何より自分の傷跡が治ったことが嬉しくて……! 本当にありがとうございますっ! 何度言っても言い足りませんが、どうか言わせてください!」
「俺も嬉しいよ、ロマリアの本当の顔が見れたし……それに笑顔もね」
俺がそう言って微笑みかけると、ロマリアは恥ずかしそうに笑う。
「うんうん、ロマリアが笑顔になってくれて私も本当に――」
ルーナがそう言いかけた瞬間、急にピタリと動きを止めた。
そして、何やら猫耳をピクピクと動かす。
「――2人とも、私のそばに来て! 急いで!」
「――へ?」
「わ、分かった!」
意味は分からなかったけど、ルーナの表情は真剣だった。
俺はロマリアを抱いてすぐにルーナの近くに寄る。
ルーナは洞窟に背を向けて俺たちを自分の後ろで守るように前に立った。
すると、突然目の前で突風が吹き荒れた。
木々はなぎ倒され、叩きつけるような風に身体が飛ばされそうになる。
「きゃああああ!」
「ロマリア、俺にしっかりと捕まって!」
俺はテントを固定する杭の大きくて細長い物を作り出し、地面に突き立てて踏ん張った。
最初に見えたのは大きな翼と尻尾だった。
やがて、鱗に覆われた俺たちの何倍もの大きさの赤銅色の胴体が見えて、その禍々しい瞳が俺たち3人を捉えていた。
巨大なドラゴンが、俺たちの目の前に降り立ったのだった。
――――――――――――――
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おまけ(第19話)
【エノアが風呂に入っていた時の2人の様子】
を投稿しましたので、よければ見に行ってみてください!
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