第17話 ラッキースケベはお約束
朝ごはんを食べ終えると、ルーナはニコニコとした笑顔でロマリアに語りかける。
「ね? ね? みんなで食べた方が美味しかったでしょ?」
「はい……! もう死んでも悔いはありません。エノア様、ルーナ様、本当にありがとうございました」
「せっかく助けたんだから、死なないでね」
「そうだよ、生きていればもっといっぱいエノアの料理を食べられるんだから! 損しちゃうよ!」
俺は思わず吹き出しそうになる。
ルーナの意見にはいつも謎の説得力がある。
死んだら美味しい物が食べられないから損……確かにその通りだ。
俺もそれくらい単純に考えて生きても良いのかもしれないな。
そして、ルーナはソワソワしながらロマリアに尋ねる。
「それでさー、私。ロマリアともっともっと仲良くなりたいからさー。話すときは敬語じゃなくて良いんだけど……どうかな?」
ルーナの提案にロマリアはまた顔を青ざめてしまう。
「す、すみません! 私、この話し方しかできないんです!」
「えぇ!? そうなの!?」
「あ~そうかもね」
ロマリアの『相手を敬う姿勢』は恐らく生まれてからずっと仕込まれた物だ。
フランクに話す方法を全く知らないのだろう。
たった一つの失言で鞭を打たれるような場所にいたんだ。
自衛の為、無意識のうちに他の話し方を頭から消していてもおかしくはない。
「じゃあ、そのままでいいよ! ごめんね、無理言っちゃって」
「いいんです! 私がポンコツで役立たずなだけで! 本当にすみません!」
「俺とルーナの会話を聞いてれば覚えるかもしれないし、俺はロマリアの敬語も好きだから気にしなくて良いよ」
「私もロマリアの話し方好きだよ! 可愛くて!」
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
いちいち、地面に頭をつけて感謝してしまうロマリア。
まぁ、焦らなくても一つずつゆっくりと慣れていけば良いよね。
「それにしても……」
俺はロマリアの身体や顔のおびただしい数の傷跡を見る。
鞭で打たれた跡や、葉巻を押し付けられた跡のような物が顔にも平気で付けられている。
失った体力は料理で回復できたけど……
「傷跡、食べても治らなかったな」
「……はい」
「本当に許せないよね……許さないけど。これ、どうにか治せないかなぁ……」
ロマリアは首を横に振る。
「いいんです。こうしてエノア様とお会いできただけで、私はとても幸運だと思っています」
「きっと、傷跡を消す方法はある! 俺がどうにか探しだすから……!」
「――エノア様、私なんかの為に苦心してはいけません。この傷のことはもう良いんです。女として生きることは、とうの昔に諦めていますから……」
ロマリアはニコニコとした表情で笑う。
強がっている、当然だ。
そうやって、自分さえも騙して絶望に耐えてきたんだろう。
俺は絶対に諦めない。
ロマリアに本当の笑顔を取り戻す。
そう、自分に誓った。
「ロマリア、お腹も膨れたし次はお風呂に入ろうか。ルーナ、手伝ってあげてくれる?」
「わーい! ロマリア、一緒に入ろう!」
「お、お風呂なんて……何年ぶりでしょう……」
「いつもはどうしてたの?」
「水の入ったバケツと雑巾を頂いて、それで身体を拭いていました」
「酷い! それって人間にする扱いじゃないよ!」
ルーナが怒りに震えている横で、俺はキャンプスキルでドラム缶風呂を大きな仕切りで囲った。
これなら、女2人で周りの目を気にせずゆっくり入浴できるだろう。
ルーナはもともと気にしなさそうだけど……。
タオルと着替えもスキルで出して、仕切りの中に置いておく。
キャンプスキルでは下着も作り出すことができる。
『ラウンドネック』と呼ばれるキャンプ用の下着だ。
水陸両用の下着なのだが、水着とは違って締め付けず速乾性が高い。
女性用はスポーツブラのような形をしている。
ルーナとロマリアの分はタオルに紛れ込ませて、それを置いておいた。
サイズは道具の能力で勝手に最適化してくれるみたいだ。
アウターはもちろん、他にもシャツにインナー、アウトドア用の衣服は割と無限大だ。
「エノア様より先にお風呂を頂いてしまうなんて……」
「気にしないで、ゆっくりと入ってきてよ!」
「そうそうこのお風呂、気絶するくらい気持ち良いんだよ!」
「2人で気絶しないでね……?」
2人がお風呂に入っている間に俺は仕切りの外で腕を組んで考える。
どうにか、ロマリアの傷跡を消す方法はないだろうか。
すると間もなく――
「きゃーー!?」
「えぇぇ~!?」
お風呂から2人の大きな悲鳴が聞こえた。
――俺は思わず風呂場へと駆け込んだ。
――――――――――――――
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