第16話 お料理チートで怪我を治す
料理を口にして、ぼんやりとしてしまっているロマリア。
その様子を見て、ルーナが目の前で手をフリフリと動かす。
「大丈夫~? お~い!」
すると、気が付いたようにロマリアは慌てる。
案の定、スープの器を手放してしまったので俺がすかさず受け取った。
ロマリアは両手を頬に当てて興奮する。
「あ、ああ、あの! す、素晴らしいです! こんなに美味しい物が存在するなんて……!」
「良かった、一口だけじゃなくて全部飲んで良いからね。器から手を離さないように今度は気を付けて」
「へ? あぁ、私エノア様に自分の器を持たせちゃってる!」
「あはは、ほっぺたが落ちちゃわないように咄嗟に手で抑えたんだね! ロマリアってば可愛い~!」
「す、すみません! すみません!」
「大丈夫だから、土下座しないで!」
ロマリアが地面に頭をつける前に俺は制止する。
自分でもかなり美味しく出来たと思う。
少なくとも、この異世界で出される料理のレベルを遥かに凌駕している。
まぁ、スキルのおかげなんだろうけれど。
マトモな食事すら与えられていなかった奴隷生活からいきなりコレを食べてしまったロマリアの気が動転してしまうのも納得だ。
(さてと、効果のほどは……?)
俺は作った料理に再び鑑定を使う。
【回復のキノコ鍋】
効果:
・体力回復+500
・5分間、自然回復速度 +50%
・一時的に防御力 +20(30分持続)
概要:
食事する者の健康や回復を願って作られたキノコ鍋。その愛情はキノコ鍋の味以上に感動や安らぎを与えるだろう。
何かこっぱずかしい概要が出てきたが、俺にしか見えないのでセーフ。
すぐにルーナがロマリアの異変に気が付いて指摘した。
「ロマリア! 傷が治っていってるよ!」
「ほ、本当です! あ、あ、痛みが引いていきます!」
そして、出血していた傷は綺麗に治った。
良かった、どうやら効いてくれたみたいだ。
「これは料理の効果なんだ。食べれば傷が治るよ」
「す、凄いです! 美味しい料理にはこんな効果があるんですね!」
「私はこんな料理見たことないけどな~」
「美味しいだけじゃないんです! 何だかすごく暖かくて、優しくて……!」
「あはは……効いてくれて良かったよ」
疑う余地もなかったけど、鑑定スキルで得た情報は真実だ。
俺もキノコを採る時に枝に引っ掛けた指の傷が治っていた。
「スープと一緒にパンもどうぞ、ジャムも作ったから食べてみてね」
「甘い匂いの正体はこれか~!」
「えっと……ど、どうやって食べれば……」
俺は困惑するロマリアの前でパンをちぎる。
カリッとした香ばしい音と、しっとりとしたパンの中身から湯気が立ち上る。
そして、ジャムを付けてロマリアの前に差し出した。
「ほら、こうやって食べるんだよ。どうぞ」
「ひゃ、ひゃい……」
ロマリアは顔を真っ赤にして俺が差し出したパンを食べる。
「んん~!!」
声にならないような嬉しい悲鳴を押し殺して、ゆっくりと咀嚼する。
「あ、甘いです! それにパンがモチモチで、あっでも外はサクサクしてて!」
「あはは、ロマリアは感想を言うのが上手だね」
そんな様子を見て、ルーナが頬を膨らます。
「むー、ズルい! 私もロマリアに食べさせたい!」
「あっ、そっちなんだ」
「もちろん、エノアにも食べさせてもらいたいよ!」
「じゃあ、俺はロマリアから貰おうかな」
「えぇ~!? わ、私の手からエノア様に食べさせるなんて……!」
「食べさせてくれないと、俺はお腹を空かせて倒れてしまうかも」
「そんなっ!? じゃあ、食べさせないと……! し、失礼します!」
こうして何故かパンはお互いに食べさせ合うことになった。
ロマリアが可愛くてついからかっちゃったけど、
これでお互いの距離はぐっと縮まった気がする。
瞳を輝かせながら、一生懸命ジュースを飲むロマリアを見て思う。
ロマリアも俺と同じウィシュタル家の被害者なんだ。
俺一人だったらそんなこと考えなかったけど……
今はハッキリと思う。
ロマリアをこんな目に合わせたアランを許してはおけない……と。
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