第13話 捨てられた奴隷を幸せにする


「キャンプスキル、『着火!』」


 俺は咄嗟に豚の魔物にスキルを発動する。

 豚の魔物は火に包まれ、こんがりとした良い香りが周囲に漂った。

 魔物から逃げ惑っていた少女は腰を抜かして、その場にへたり込む。


「た、助かった……?」

「大丈夫っ!?」


 俺はすぐに少女のもとへと駆け寄った。

 纏っているのは汚れた布切れのみ。

 俺はキャンプスキルでウィンドブレーカーを出して少女の肩にかける。


(酷い傷だ……!)


 覆い隠しきれない程に体中の傷が酷い。

 今できたような生々しい傷よりも、すでに跡として残っている古傷が数多くあった。


(自然にできた傷じゃない……まるで拷問の跡みたいだ)


 俺が少女の傷の様子を見ていると、少女は俺を見て驚く。

 そして、慌ててウィンドブレーカーを脱いで俺に返そうとしてきた。


「だ、ダメです! こんな上等なお召し物! 私に着せたら汚れてしまいます!」

「何言っているの! そんなの良いから、安静にしてて!」

「だ、ダメですエノア様! 私なんかに触ったら、エノア様のお手が汚れてしまいます!」


 俺は自分の名前を呼ばれて驚く。

 もしかして……


「君は、ウィシュタル家の関係者……?」

「使用人の頃に、エノア様を一度だけ拝見した事があります。私はウィシュタル家の奴隷……だった者です」

「そんな!? ウチに奴隷がいるなんて聞いたこともない!」

「……当主アラン様に奉仕する為に幽閉されていました。私は顔に大きな傷跡がある醜女だったので……痛めつけて楽しむ奴隷として……」


 そう語る彼女の顔には確かに大きな傷跡があった。

 それ以外の傷跡はきっと、アランに長年痛みつけられて出来たモノだろう。

 ストレスと栄養不足で肌も髪もガサガサだ。

 顔には生気が感じられず、立ち上がるのすら難しそうだった。


「……とにかく、君はウチに連れて帰る」


 俺がお姫様抱っこで抱え上げると、少女は酷く狼狽した。


「お、おやめください! そのように抱えられては、エノア様が汚れてしまいます!」

「気にしないよ、俺だってまだお風呂に入ってないし。君の名前は?」

「ロ、ロマリアです……」

「良い名前だね、ロマリア。ちょっと賑やかな同居人がいるけど、我慢してね」


 俺は、そのままロマリアを抱えて拠点である洞窟へと戻っていった。


――――――――――――――

【業務連絡】

「この少女を幸せにしてやってくれ!」

「彼女に美味しいご飯を!そして復讐を!」

「アランに再起不能な制裁ざまぁを!」

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