第12話 傷だらけの少女を拾う


 テントから出てみると、平原ではなく洞窟の入り口付近に建てられていることが分かった。


 建てると言っても、ルーナが自分でテントを組み立てられるとは思えない。

 俺が出来上がったまま出したテントをそのまま運んで来たのだろう。

 そう推測していると、俺の後から出てきたルーナが説明してくれた。


「エノアが眠っちゃった後、エラスムスの霊峰に戻ってこの洞窟に運んだんだ。平原だと、周囲の魔物から丸見えだからね」

「ありがとう。ルーナはもともとこの山に住んでるの?」

「ううん、いつもは別の山だよ。この山は凶暴なドラゴンの縄張りだから」

「……うん?」

「この山の名前、『エラスムスの霊峰』でしょ? エラスムスっていう名前のドラゴンが住み着いてるの」

「えっと、一刻も早く逃げた方が良い?」

「大丈夫だよ、エラスムスは私とその契約者には手を出さないから。だから、猫神様から天命が来た時、私は急いでエノアを見つけ出したかったんだよね。保護しなくちゃいけないと思って」


 そっか、転生して10年も経ってからルーナが俺のもとに来た理由が分かった。

 多分、追放されたことで俺の命が危機に晒されたからだ。

 それで、猫神様のご加護が働いてルーナを呼びつけたのだろう。


「ルーナ、改めてありがとうね」

「エノア、私たちの間に感謝は無しにしようよ。そんなことしたら、私はご飯をもらうたびにエノアに感謝ばっかりになっちゃうじゃん!」


 そう言って笑う。

 ルーナの場合、本当に心からそう思って言っていることが分かるから、俺は謙遜することも出来ない。

 早速、ルーナの気持ちに報いるために朝ご飯を作ろうと思った所で思い出す。


「そういえば、寝落ちしちゃったからまだお風呂に入ってないや」

「大丈夫だよ、私が舐めて綺麗にしてあげる」

「ルーナ、俺は子猫じゃないんだよ……?」


 獣的な発想のルーナは置いておいて、俺は入浴方法を考える。

 ドラム缶風呂は……イケるな、キャンプスキルで出せそうだ。

 俺の身体は10歳の子供だし、ルーナもそんなに身体が大きいわけじゃない。

 小さめのドラム缶で用意しよう。

 俺は洞窟の端に行って、スキルを発動する。


「キャンプスキル、ドラム缶風呂」


 たったそれだけで、火にかかったドラム缶風呂が出現した。

 入り口付近だから煙も危なくないし、安全に浸かれそうだ。

 そして、今回も鑑定を使ってみる。


【魔法ドラム缶風呂「スチーム・オアシス」】

効果:

・身体の汚れを除去

・呪いを浄化

・精神疲労回復 & リラクゼーション効果

・美容効果: 肌の再生、ハリと潤い向上

・髪質改善: ツヤ・コシの回復、髪の成長促進

概要:

「スチーム・オアシス」は、キャンプスキルで出現させることができる魔法のドラム缶風呂。見た目はシンプルだが、その内側には強力な魔法のエンチャントが施されており、湧き出る湯はただの湯ではない。常に入浴者に対して適温の湯が沸き、まるで大自然の秘境に沸く温泉に浸かっているかのようなリラックス効果が得られる。

 湯には特別な浄化作用があり、入浴することで身体のあらゆる汚れが取り除かれる。美容効果はもちろん、貴方が失ったかけがえのない物まで再生するかもしれない。キャンプでの休息としてこのドラム缶風呂が提供するのはただの癒しではなく、極上の体験だ。


 ……なんだか、美容に良さそうだ。

 髪の方はまだ大丈夫、それどころか俺は下の毛すらまだ生えてない。


「わー、すごーいお風呂だー! いつもは水浴びだからさ、寒い時期は辛いんだよね~」


 ルーナはさっさと服を脱ぎ始めてしまう。

 俺は慌てて洞窟を飛び出した。


「あ、朝ごはんの材料を取ってくる!」

「え~、エノアも一緒に入ろうよ~!」

「タオルはこれ使って!」


 キャンプスキルで作ったバスタオルをルーナに投げつけて俺はそのまま逃げるように森の中へ。

 全く、ルーナは獣としての感覚で接してくるから大変だ。


 食材はまたキャンプスキルで出しても良いんだけど……


 俺は試しにまたキャンプスキルで牛肉を出して、「トゥルーカット」で捌いてから鑑定をしてみる。


 【A5ランク霜降り和牛】

効果:

 なし


(やっぱり……)


 異世界の食材じゃないと特別な効果はないみたいだ。

 キャンプスキルで出した食材を食べていても強くはなれないらしい。

 それに、昨日の感動を味わったらやっぱりこの異世界の食材を使って料理を作りたい。

 早速、鑑定スキルで山菜をリュックサックに収納していく。

 小さな手で、キノコや山菜を掴んでは引っこ抜いていった。


 ある程度集められた頃――不意に、女の子の悲鳴が聞こえた。

 それは、決して大きな声では無かったけれど、確かに助けを求める声だった。

 俺はリュックサックをその場に放り捨てて、声がした方へと走る。


 ――フゴォォ!


「きゃー!」


 大きな豚の魔物に追いかけられて、息を切らしながら走る黒髪の少女がいた。


 その少女はボロボロの服を着ていて、身体中が傷だらけだ。


 考える間もなく、俺は助けに入った。


――――――――――――――

【大感謝!】

いつも読んで頂きありがとうございます!

おかげさまで、目標のランキング10位に入りました!

本当にありがとうございます!

☆評価を入れてくださった貴方のおかげです!


よわよわ作者ですが、引き続き頑張りますので

最新話を追い続けていただけると嬉しいです…!

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