第9話 異世界グルメを堪能しよう!
「…………」
「……エノア? どうしたの、固まっちゃって」
「…………」
「お~い、お~いってば」
俺が鑑定結果に圧倒されていると、ルーナが俺の顔の前で手をヒラヒラと動かしていた。
そして、俺の耳元でボソッと呟く。
「……動かないと、また好きにしちゃうよ?」
「――ハッ! だ、大丈夫! ボーっとしちゃっただけ!」
身の危険を感じ、俺は何とか意識を取り戻す。
ルーナは不満げな表情で舌打ちをした。
(なんだこのトンデモ包丁は……!)
とにかく、使用してみないことには真偽が分からない。
早速、料理を始めてみることにした。
「じゃあ、料理を作るね!」
「楽しみにしてるよ~!」
まず、珍しい紫色のキノコを手に取ってみる。
鑑定によると名前は「ルナマッシュ」。その表面はつややかで、紫が毒を連想させる。実際に毒素を含んでいて人間が食べると腹をくだしてしまうらしい。
しかし、俺が手に持つこの包丁「トゥルーカット」の能力には『毒性や有害成分を自動で無効化』と書かれていた。
包丁で食材に触れると紫色の淡い光を放ち消えていく、今ので無毒化できたのだろうか。
次に、シイタケによく似た「サンリーフキノコ」や、深い緑色の「ウィスプシェイド」そして野草も食べやすい大きさに切っていく。
鍋には、能力で汲み上げた澄んだ水をたっぷりと注いで火にかける。
水面が小さく揺れながら、次第に温かさを帯びていった。
そこに、切り分けた食材が次々と投入されるたびに、鍋の中で淡い光の粒が一瞬はじけ、魔力が溶け出していくのが目に見える。
それぞれの食材に秘められた別々の能力効果があるのだろう。
湯気とともに豊かな香りが立ち上り、平野なのにまるで森の中にいるような静謐な雰囲気が漂い始める。
スープは徐々に深い
オタマで軽く混ぜると、キノコがふわりと浮かび、スープの表面にさざ波のような模様が広がる。
時折、食材に秘められた力が光の筋となって浮かび上がり、それが鍋の中で融合する様子は、まるで魔法がかけられているようだ。
「出来上がり!」
「わーい! 良い匂い!」
料理が出来上がって、ピョンピョンとハシャぐルーナ。
その隣で、早速出来上がった初めての異世界産キャンプ料理を鑑定してみた。
【ごちゃ混ぜキノコ鍋】
効果:
体力上限 +20
体力回復+25
10分間、魔力再生速度 +20%
1時間、毒耐性 +20%
2時間、知性 +10
概要:
エラスムスの霊峰で採取されたキノコをふんだんに使用した鍋料理。食べることで、食材に宿る自然の力が体に浸透し、体力と魔力が共に強化される。一時的に魔力の再生速度が向上するため、魔法使いにはうってつけ。また、一部のキノコには自然界の毒素を中和する成分が含まれており、毒耐性が一時的に強化される。知性の上昇効果も付与されるため、頭脳労働を伴う作業や戦術を必要とする場面での利用を推奨。薬草も入っている為、体力も少し回復する。
深みのある味わいと芳醇な香りは、宴の席には欠かせない一品となっている。
(うん、思ったとおり)
やはり、この包丁で作った異世界料理はステータスを上げるらしい。
一時的な効果もあるけれど、つまり……
『料理を作って、食べるほどに強くなれる』みたいだ。
――――――――――――――
【感謝!】
☆評価を入れてくださった皆様、本当にありがとうございます!
人気が出なくてもできる限り続けてみようと思います!
☆評価はいつでも大歓迎ですので、ぜひよろしくお願いいたします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます