第4話 宇髄家の日常

樹雄澄との飲み会を終えて、京成は先に帰宅しているであろう遥の待つ家への岐路についていた。


京成が遥と結婚したの2020年の6月であり、京成が24歳、遥は23歳の時だった。


そうして、結婚生活5年目を迎え、お互いに新婚夫婦から落ち着きのある夫婦、普通の夫婦、この新婚夫婦から次の夫婦はなんていうのだろう。

二人はネクストステップ夫婦になっていた。


京成と遥は同じ東京にある大学出身である。


京成が大学3年生の頃に所属していた映画同好会に、新入生の遥が入ってきたことが最初の出会いだった。


宅飲みをしながら映画を観たり、飲み会の場で好きな映画のジャンルや俳優が被ったことで話が盛り上がり、仲良くなっていった。


京成がハイボールを飲む傍らで、遥はオレンジジュースやリンゴジュースを飲んでおり、いたって健全な飲み会ライフだった。


そうして仲を深めていくうちに、二人だけで遊ぶことも増えて、出会ってから数か月経ったころに、どちらからともなく告白して付き合い始めていた。


そこからは大きな喧嘩をすることもなく、他から見ても仲良しカップルとして大学生活の日々を過ごしていた。


京成は大学を卒業後も今勤めている東京の会社に就職したため、遥が卒業するまでの2年間も遠距離となることはなく、週末に会ってお互いの近況を報告したり、他愛のない会話をして仲良く過ごしていた。


遥については、大学が実家から通える距離であったため、大学までは実家暮らしをしていたが、大学を卒業するタイミングで、実家を離れて京成と同棲を始めた。


同棲をすることで、今までは見えてこなかった一面が見えることがあると聞くが、京成と遥にとってはそこまで大きな変化はなく、大学時代と変わらずに仲良く生活ができていたと思う。


少し京成が気になることがあるとすれば、遥はしっかりしているがゆえに、他人に頼ることが下手で、ネガティブな感情を押し殺して生活する一面があることくらいだ。


だから京成としては、ネガティブモードになっている遥と通常モードの遥を見分けることが目下の課題となっている。


喜んでいる時の遥は、京成と同じく分かりやすいので、そこを見分けることは簡単である。


そうして、同棲生活を始めてから2年ほど経った頃に、夜景の綺麗なおしゃれなレストランというベタなシチュエーションで、京成が遥にプロポーズをして、遥が涙を流しながら快諾し、無事に結婚をすることとなったのである。




・・・ガチャ


京成が遥が待っているであろうアパートの玄関を開ける。


「ただいまー!」


「・・・おかえり」


いつもなら同じテンションくらいの「おかえり!」が返ってくるはずなのだが、今日は5割減くらいの返事である。


「遥どうしたの?なにかあった?」


「ん?あ、いやなんでもないよ!ちょっと考え事してて、ちょうどケイ君が帰ってきたから、元気なさそうに聞こえただけ!」


「そっか!それなら良かった。」


「それより今日の飲み会は楽しかった?」


「うん!やっぱりキオは入社した時からずっと一緒に働いてるから、気兼ねなく話せて楽しいよ!!」


「いいね!なんか聞かなくてもケイ君は顔見るだけで、今どう思ってるか分かるよね、ふふっ」


「えっ!?そうかなあ、将来的にはポーカーフェイスになってクールな男前になりたいと思ってるんだけどなあ。ふへへ」


「いや、それは無理だと思うよ。ふへへって笑ってる時点でクールでもないし、お人よしのドッグフェイスにならなれるんじゃない?」


「それはさすがに馬鹿にしすぎでしょ!遥でも許さないよ。」


「あはは、ごめんなさい。それより、お風呂ためてあるけど今から入る?」


「本当!?最近シャワーだけだったからありがたい!すぐに入ります!!」


京成はそう言うと脱衣所へと向かう。


「やっぱりあそこまで嬉しそうにして尻尾振ってる人に、ポーカーフェイスなクールな男前は無理でしょ。」


「ん?なにか言った?」


「え?なんにも言ってないよ!」


少し訝しげに遥を見つめながら脱衣所に引っ込む顔を見て、遥は笑い出すのをこらえていた。


「ふふっ、嫌なことがあっても、ケイ君と一緒にいたらそんなことも忘れられるよね・・・明日も仕事だし寝る準備しよーっと」

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