匂いがこもる

5階のエレベーターのドアが開いた。幼稚園に向かう息子と乗り込んだ。エレベーターに内は異様な匂いがした。女が一人でいた。厚塗り化粧をして、大量の香水の匂いをエレベーターに漂わせている。

「ねえ、おばさん臭い」

「失礼でしょう。すみません」

 息子の言葉に、謝罪の気持ちも込めずに行ってしまった。

「教育が出来てねーな。」

 ゲスい女の言葉に、眉間がぴくっとしてしまう。

「まあ、息子は香水の匂いに慣れていないので、」

「はあ、ブスだね」

 女の態度が横暴だった。息子に危害を加えられないように後ろに隠した。エレベーターが1階に着き、ドアが開く。 睨まれ、「気持ち悪い子」と連呼してくる。息子の手を引っ張って、エレベーターを出た。

「相手にしちゃだめだからね」 

 あの女はこのマンションでも有名で、関わらないようにしていたのに、今日は運が悪かった。

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