第6話 冒険ランクと依頼

 私達は、冒険者ギルドの依頼を数多く受けた。主にCランク。ランク別で、最も低い部類の依頼が多かった。

 お金持ちのペットの犬探し。子犬の鳴き声は、かわいかったよ。ネズミ駆除くじょは、チュウチュウと向かってくる奴が怖かったよぉ……。

 その他も色々あったなぁ。Cランクが多いのは、サムが私の身を案じての事だよね。サムは、優しいから。たまにBランクの簡単のを受けたけど、やりがいはあった。成功報酬せいこうほうしゅうが良いし。ロタノーラも張り切ってたもん。

 Aランクの派手さは無い。それでも受けた依頼は、全て達成してきた。だから、冒険者パーティー、森の木漏れ日のギルドでの評価は高い。この街で、知らない者など無い程になっていたの。戦士サムの名声も高まってる……。


 今日は、久々のBランク冒険の大ミミズ退治にやって来た。ひゃあー! 現れた大ミミズは、迫力の大きさだよぅ。あのニュルニュルが気持ち悪いんだなぁ。でも、頑張らなきゃね。


「僕が、おとりになって逃げる。そのすきにチェリルは、魔法攻撃をお願い」


「うん。了解。気を付けて」


「あたいは、最後に出番だね」


 大ミミズは、剣を振り回しながら突撃したサムを敵と認識したのね。狙いを定めて追いかけ出した。ボーっと見てちゃ駄目だ。


「私が、やらなきゃ……。天のいかづちよ。我の杖に宿りて、あの者の体に向かい力を放出せよ!」


 ビガーン! その音と共に空から杖に雷光が降りた。


「はあー!」


 杖を巨大ミミズに向けて振りかざす。ドゴーン! 落雷の様な音がした時。すでに巨大ミミズの体は、電撃で光輝いた後なのよね。


「やったわ!」


とどめは、あたいが!」


「ロタノーラ頼む! 奴は虫の息だ! 知らないけど……。あと、虫じゃないけど」


「うふふ」


 サムったら。こんな時でも、面白いよぉ。余裕だね。胸キュンだよぅ。

 そんな事を思ってる間に大ミミズは、ロタノーラに体を半分にされてたぁー。

 

「チェリルの魔法の御蔭で助かったよ。ありがとう」


「あっ。そんな。サムが頑張ったから出来たんだもん。無事で良かったわ」


「チェリル」


「サム」


 サムと見詰め合う私を急に後ろから抱きしめる者が! ロタノーラだね。戦闘する前やその後に最近よく抱き着いてくる。私を心配して、守る為らしいけど。今日の戦闘は、もう終わってるよぅ。

 少しして、私を解放したロタノーラ。その表情は、思いつめた表情をしている様に見えた。どうしたのかなぁ?


「二人は、その行為を老人まで続けるつもり? そろそろ進展した方がいいんじゃない? そうじゃないと、あたいは……。あたいがチェリルのこ、恋人になっちゃうよ! どうするサム?」


「ハハハ。またまたロタノーラは、そんな冗談を言う……。ま、まぁ、考えておくよ」


「ロタノーラ、私は……」


 せっかくの、ロタノーラが心配してくれたのに。それで、もたらしてくれた好機だよ。私が此処で告白すれば、胸キュンの思いが実るかも? でも、でも。師匠の手紙の件もあって、心の踏ん切りがつかないよ。それに、サムから言って欲しい思いが強くて……。


「チェリル。どうしたの? 何だか元気がないね。悩みなら、あたいが相談に乗るよ。あたい本気で恋人になってあげてもいいよ」


「ありがとう。ロタノーラは、恋人にならなくても大事な人だよぅ。悩みは後で言うね」


 そして、私達は、冒険者ギルドへ向かう。巨大ミミズの亡骸なきがらの頭部を持参じさんするために。こんなに淋しい思いは、今まで無かったなぁ。だって、道中に誰も会話が無いんだもの。



*****


冒険者ギルドに着くと、サムは真っ直ぐにカウンターへと。少しの時間は受付の者と会話してた。それが終わると、ギルドマスタールームに案内されたようだよ。

残された私は、ロタノーラに師匠の手紙の件を話す事にしたんだぁ。


「ふーん。そう言う事だったんだね。あたいの本心は、チェリルに居て欲しいよ。結婚したいくらいに……。そ、それぐらい大切に思ってるんだよ。でも、チェリルの人生の大事な決断だからね。決めた事には、反対なんかしない。むしろ応援したいさ」


「ロタノーラ……。ありがとう。よく考えて、決断するね」



*****


 ギルドマスターの部屋から出て来たサム。私達に向かって歩いて来るけど、その表情に和やかさは感じられない。なんだか、重々しい雰囲気ふんいきだよ。


「依頼を受けたよ。Aランク相当の」


「へぇー。凄いじゃん。あたいは、サムを見直したよ」


「サム。どうして?」


 その依頼は、ギルドマスターから直々の命令に近いものだそう。冒険者ギルドに資金提供を莫大にしている程の街の有力者。その御令嬢ごれいじょう護衛ごえいして、目的地に送り届けるの。万が一にも御令嬢に何かあれば、私達の人生も破滅するかも?


「依頼主は、森の木漏れ日を御指名なんだから。やるしかないよ。今日は、これで終了だ。帰宅して、しっかりと休息すること。明日の朝、今日と同じ位に、この建物前に集合だよ」


「うん。了解」


「あたいも了解したよ」


 なんだか、初冒険よりも緊張してきたよぅ……。今夜は、眠れるかなぁ?

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