第5話 手紙

 夜明けの時間だ。朝は、決まったように大体同じ時間に目が覚める。習慣ってすごいと思うよ。

 昨晩は、夢を見た。最初の冒険のような夢。杖を忘れて、慌てる夢。

 あの日の素敵な歓迎会の夜から、どの位の月日がたったかなぁ……。うーん。もう三年も経過してるよぉ。今まで、無我夢中むがむちゅうな感じで、冒険依頼をこなしてきたもん。


「あっと言う間だったなぁ」


 サムとの関係に進展しんてんが無い。胸キュンな気持ちは、むしろ増大してるのにな……。


魅力みりょくないのかなぁ。私……」

 

 ううん。そうじゃないよ。サムも私の事を好きな気がするんだ。私は鈍感どんかんじゃないもの。

 そんな他愛たあいもない事を考えながらテーブルの上に朝食の準備をする。準備といっても、パンと珈琲コーヒーだけなんだけど。すると、昨日は読まずに置きっぱなしの手紙が目に留まった。封筒ふうとうから出してぇー。片手でパン食べながら読んじゃえ! 流石にサムには、見せれない行儀の悪さだと我ながら思うよ。


「くちゃ。くちゃ。師匠から何だろう?」


 魔導士の師匠からの手紙の内容は、簡単に言うと仕事の紹介だった。魔導士学校の初級魔法の教師の欠員が出来る予定なので、私に就任しゅうにんしてはどうだろうと聞いてきたのだ。

 師匠の紹介ならば、間違いなく就任は確約だよなぁ。悪い話じゃないよ。


「うーん。ちょっと悩んじゃうなぁ。返事する期限には余裕よゆうがあるから……」


 パンを食べ終え、カップに残る珈琲を一気に飲みす。迷いをも飲み乾したい思いの強さの現れのよう。ゴクッとのどが鳴ったの……。

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