第2話 初冒険の朝
鳥の鳴き声がする。もう朝なのね。
「ありがとう。起こしてくれて。ふぁー」
あくびしてる場合じゃない。そうだ。今日から、いよいよ冒険に出かけるんだわ。
「うー。嬉しいよぉー」
思わず嬉し過ぎて声に出しちゃうよぁ――い、いけない。私、はしゃぎすぎだよ。遊びに行くんじゃないんだもんね。
*****
あっ。サムさんだ。もう来てる。よし、ここは、私も急いで
「はぁ。はぁ。おはようございます!」
「おはよう、チェリル。そんなに
「それが、あまり寝れなかったんです。なかなか寝付けなくって……」
「ははは。僕にも覚えがあるよ。そういうものさ。冒険の初体験の時というものは」
「はっ、初体験! サムさんとの初体験ですね」
ああ、初体験かぁ。私、違うこと
「チェリル? 大丈夫かい? 顔が赤いよ。ぼぉーっとしてるし。熱でもあるのかな?」
「あっ。だ、大丈夫です。多分これは、走ったからです」
いけない。いけない。変な想像してるの知られると嫌われちゃう。私は、どうかしてるよ。平常心に戻さなくちゃ。少し目を閉じて、
「あっ」
驚きの余り思わず声が出た。サムさん? どうしたの? 私を急に抱きしめてくるなんて。
「サムさん。し、してもいいですよ」
「あっあの。サムじゃないよ。あたいだよ」
「えっ? あっ! ロ、ロタノーラさん。おはようございます」
私って、
「おはよう、チェリル。ペロペロペロ」
「な、何で、顔を舐めるんですか?」
「こ、これが、あたいとチェリルとの挨拶なの」
「……」
もう、好きにしてくださーい……。でも、
「おーい。二人ちょっといいかな」
ふう。サムさんが、ぺろぺろを
「あっ、ロタノーラさん! サムさんが呼んでますよー。残念でしたね」
「えっ。何で? 楽しくなってきたのに」
「えっとだな。これから仲間を呼ぶ時だけど、呼び捨てにしよう。戦闘中に呼ぶのに時間を短縮した方がいい。でもって、敬語も無しだ。まぁ、ロタノーラは、言う必要ないけど。チェリルは、そうして」
「はい……。う、うん。了解よ」
「その調子だよ。チェリル」
「うん。サム」
サムって呼び捨てしちゃったよぅ。男性を名前で呼び捨てなんて何年振りかなぁ。子供の頃は、友達にいたけど。
最近まで魔導士の師匠の所での修行の毎日だったからなぁ。男っけ無しの日々だったもん。
ふああ。なんだか、恋人を呼ぶ気分になっちゃう。なんだか、む、胸がキュンとする……。もう一回呼んじゃおうっと。
「サム」
「なんだい。チェリル」
「あ、あの。少し不安なの」
「大丈夫だよ。僕が付いてる」
ああ。サムの優しい言葉。私の目を見つめてくれてる。
「ちょっと、二人とも。見つめ合っちゃって。今からデートに行くみたい。あたいもいるのに! 真面目でなきゃ! チェリル分かったの? プンプンだよ!」
ええっ。ロタノーラが、それ言うんだなぁ。なんか怒らしちゃったな……。でも確かに私もサムの名前を呼ぶだけで舞い上がるなんて、駄目だよね。反省しなくちゃ。
「そうだな。ロタノーラの言うとおりだ。僕がしっかりしなきゃだな」
「ほんと。しっかりしてよ、サム!」
たはは。私と違ってロタノーラは、呼びなれてるなぁ……。
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