魔導士チェリルは胸キュン!
零式菩薩改
第1話 出会い
冒険者ギルドの建物内は、賑わってるわ。でも、周りなんかに気を取られる余裕がないよ……。
やだ、私ったら緊張してる? なんで緊張なんかしているのよ。冒険する仲間をギルドが紹介してくれるだけなんだもん。
そう自分に言い聞かしても、心臓のドキドキが止まらないのー!
受付カウンターの前に、男性の戦士と猫耳女性獣人が見える。あそこね。ブーツの足音が早まり、急いで駆け寄る。
「あ、あの。冒険者パーティーの森の木漏れ日の、お二人ですよね? わ、私は、魔導士で。あの、その」
「ああ、そうだよ。僕達は、冒険者パーティーの森の木漏れ日だ。君は、確かに魔導士のようだ。そのとんがり帽子と、その
あっ、爽やかで優しい声だな。見た目も素敵だけど、声もいいな。噂で強く有能な戦士で、顔もいいと聞いていたけど。今、なんだか胸がキュンとしてる。
私は、ぽーっとサムさんの顔を見つめながら自己紹介をした。
「チェリル、歓迎するよ。前の仲間の男の魔導士が、いい腕だったけど高齢者でね。引退しちゃって……。でも、チェリルみたいな若い女性が入って嬉しいよ」
「私も、サムさんと仲間になれて凄く嬉しいです!」
やったぁ。嬉しいって、嬉しいって言ってくれたよぅ。舞い上がっちゃうよぅ。私も嬉しくて、思わず声が大きくなっちゃった……。もう前の男の魔導士さん、絶対に復帰しないでね。女神様にお願いしなきゃ。
そう思ったら、私の心の中に宿る小さな精霊さんが出て来た。これは、他の人には見えない存在。『こらこらチェリル、そんな意地悪な事を思ったら駄目ちぇり。サムに知れたら嫌われるちぇりよ』と言う精霊さん。そうだよね。優しい女性にならなきゃ。精霊さんの言う通りだね!
私が嬉しくて、はしゃいでいると肩をちょんちょんと指で触られる感覚に気が付いた。直ぐに振り向いてみると、猫耳さんが、もじもじした感じで私を見つめて立っている。
あっ、猫耳さんのことを忘れてしまうなんて……。だって、サムさんと目と目が合ってる間は、まるで、時間が止まったようなんだもん。
「あの、あ、あたいも仲間だよ。
「チェリルです。よろしく、お願いします」
挨拶をした後にロタノーラさんは、私に近寄り両肩に手を置いた。そしたら、私の顔は彼女の顔に引き寄せられる。えっ? ちょっと待って。これって? キ、キスの感じ……。と思った私は、思わず目を閉じた。あら……キスじゃない。ほっぺをぺろぺろと優しく舌で舐められている。少しくすぐったいよぉ。結構長いかなぁ……。
「おいおいロタノーラ。そのくらいにしないと。チェリルが驚いてるぞ。チェリル、ロタノーラを悪く思わないで。一部の猫獣人族の挨拶なんだよ。気に入った相手には長いんだ」
「そうなんですね。気持ちが落ち着いてきました。挨拶なら、悪くなんて思わないです」
挨拶なのかぁ。サムさんに注意されたロタノーラさんは、挨拶行為を終了すると頬を赤くし、照れた感じの顔をしていた。
ちょっとお互いに恥ずかしい雰囲気の私とロタノーラさんの思いを知ってか、サムさんは右手で私のを左手でロタノーラさんの手をそれぞれ握る。サムさんの手……温かいよぉ。
「よし、これからは三人で力を合わせて、頑張ろう!」
「はい。頑張りましょう」
その時に私は、サムさんの素敵な爽やかな微笑みを見て、頑張ろうと心から思った。冒険も恋も。
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