第50話 臨時議会
「楓さん。本会議の議題の提示をお願いいたします」
「はい」
一条先輩に名指しされ、六倉は席を立ち生徒会の面々に持ってきた資料を渡す。
あとついでとばかり俺にも資料を渡してくれた。
「今回の議題は最近起きている不法侵入者についてです」
議題が発表された瞬間一条先輩と六倉を除く生徒会メンバー全員が驚きを見せる。
侵入者、鷹宮が真っ先に思い浮かべたのは三秋の下駄箱に下着やらエグいものを入れた犯人だ。
「数日前から特定の生徒の下駄箱に卑猥な物を混入させ生徒の心身を脅かしていることが判明致しました。それに伴いまして我々生徒会の責任の下侵入者に対する調査と対策をすることが決定致しました」
自分の役目は終わりと自分の席に座る六倉。
彼女と入れ替わるように口を開いたのは長谷都先輩だった。
「おいおいマジかよ?いつの間にそんな事になってたんだ?ほんとならやべーだろこれ」
「会長、その事案は本当なのですか?」
長谷都先輩に続いて井之頭先輩が一条先輩に問う。
一条先輩に軽く答えた。
「本当よ。その証人として彼を呼んだのだから」
そう言って一条先輩は俺を見る。
それに合わせて生徒会の面々が俺に視線を向ける。
「鷹宮君、君は見たわよね。あの中身を」
決して誰のとは言わない。他の生徒会の反応からまだ誰が被害者か明かしていないみたいだ。つまり今確実に被害者を知っているのは俺と一条先輩。
西園先輩はあくまで俺の確保要員と考え知っているかもしれないと組み分け。
六倉はあの反応からして一条先輩から教えてもらっている可能性が高いと見える。
そうなると俺のやることはただ”はい”か”いいえ”で答えることだ。
「見ました。確かに校内にあってはならないものが複数ありました」
俺の答えを聞いて一条先輩は満足そうに頷く。
「これで実害が確認できたわ。ただしもしかしたら校内の生徒が犯人の可能性も十分に考えられるわ」
「それならばいち早く教員生徒に注意を促すべきでは」
「それは許可しないわ」
井之頭先輩の訴えを一条先輩が即座に却下した。
「我が校にはそれなりの数の有名人がいるのよ?それなのに不審者が校内に侵入したなんて知られたらメディアに取り上げられて学校の運営に多大な損害を被ることになるわ」
流石現役の大企業の社長令嬢、淀みのない口調に誰でも想像できる大きな損害。それによって誰にも反対なんてさせないと言うこの空気。流石の掌握術と言わざるを得ない。
「よってこの事件に関しては我々生徒会と一部の学生、職員を除いて箝口令を敷きます」
「すでに玲さんが物証を回収しております。しかし、すでにうっすらとですが噂が流れ始めています。その対策はどうしますか?」
六倉が懸念事項を述べる。
そう、すでにうっすらとだが噂が流れている。俺もその噂を聞いた一人だ。東からの情報をもとに今日三秋の下駄箱を確認したんだ。すでに何人かにはこの事件のことがバレていると考えておいた方がいいだろう。
「それならもっと身近かつ大きな噂で上書きすればいいだけよ」
『もっと身近でかつ大きな噂?』
一条先輩以外のこの場にいる全員が同時にそう言った。
そして一条先輩は俺と六倉を見てこういった。
「鷹宮君協力してくれますよね?」
疑問符付いてるが、それはもう協力しろと言っているのと同義じゃねえか。
だが世話役として俺自身もこの事件は解決しなくちゃいけないからな。
「やれるだけやってみます」
「ありがと。楓さんもお願いできますか?」
「もちろんです!」
六倉は力強く返事をする。
俺と六倉の了承を見てもの凄い自然な笑顔で一条先輩は言った。
「では鷹宮君、楓さん、お付き合いしなさい」
「「・・・・・・えっ?」」
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