第49話 生徒会

「どうですか?」

「お、美味しいです……私の入れたのよりずっと……」

「え~と、それはどうも……?」


生徒会室について数分、まだまだ生徒たちが学校に来るのにはまだまだ時間があった。その為西園先輩が気を利かせて紅茶を入れようとしてくれたが流石に先輩にそこまでさせる訳にはいかないと俺が紅茶を入れると言った。

そして入れた紅茶を西園先輩に振る舞ったのだが反応はあんまり芳しくない。

というのも


「はぁ~二年間紅茶入れてきたのに数か月の子に負けちゃった…また怒られちゃう……」


と、美味しいとは思ってくれているみたいだがなんとも喜んでいいのか反応に困る。


「その~俺あんまり西園先輩の事しらないですけど西園先輩って生徒会に入りたくて入ったんですか?」


ちょっと空気が悪くなったので鷹宮は話を変えた。


「あはは……私が生徒会に入ったのはほんとに成り行きなんです」


西園先輩は乾いた笑みで笑いまるで死んだ魚のよな目で語り出す。


「私ってものすごく臆病なんです。だからいつも誰かとお話するとき緊張しちゃって何にも話せなくて2年生の夏休みまでずっとボッチだったんです」

「それは誰かと話すのが怖かったからですか?」

「え、ええまあ、そうですね。だって怖いじゃないですか!自分は何もしてないのになんでか嫌われてあられもない噂流されたりいじめられたり!だったら元からいないって思われた方がいいかなって………」

「それは少し飛躍し過ぎじゃないですか?」

「だ、だって!それがないとは言い切れないじゃないですか!!」


西園先輩は唇をぴくぴくさせ目に涙を溜めて訴えてくる。


「うちの副会長をあんまりいじめないでもらえるかしら鷹宮君」


そんな時、入り口の方から聞き覚えのある声が聞こえた。


「会長!?」


入り口には相変わらず綺麗な気品のある雰囲気を纏った一条先輩がいた。

一条先輩に気づいていなかった西園先輩は慌てて席を立った。


「玲さんおつかれさま。鷹宮君を連れてきてくれてありがとうね」


一条先輩は西園先輩に笑顔でお礼を言った。だが俺から見ればその笑顔は完璧にできた作り笑顔にしか見えなかった。


「もう少しで他の生徒会メンバーも来るからもう少し待っててね。玲さん?」

「は、はい!今すぐお入れしますー!!」


一条先輩が笑顔で西園先輩の名前を呼ぶと西園先輩は慌ててお茶を入れ始めた。

それから俺たち3人は会話もなく生徒会室で他のメンバーが来るまで待ち続けた。


「おはようございます」


一条先輩の次に入って来たのは眼鏡を掛けた好青年だった。

彼は俺に気づくなり俺の方に歩いて手を前に出してきた。


「君が鷹宮開君だね。僕の名前は井之頭大地いのがしら・だいち。生徒会の書記をやってる3年だよ」

「井之頭先輩ですね。初めまして。それちらは知っているようですが改めて。鷹宮開です」


俺は井之頭先輩と握手を交わす。


「おはようございますっす」


次に入って来たのは井之頭先輩とは真逆で髪もボサボサ、制服も乱れている不真面目そうな男子生徒だった。


「紹介するわ鷹宮君。彼は長谷都空はせと・そら君。役職は庶務よ」

「お、あんたが鷹宮か。会長から聞いてるぜ結構出来る男だって。だからさ、今度俺の仕事を代わりにやってくんね?」

「空、君は仮にも生徒会の一員だろ?それなのに後輩に仕事を放りなげるのは関心しないぞ?」

「なんどよ大地、おめぇには関係ねぇだろ」


出会ってそうそう後輩に自分の仕事を押し付けようとする長谷都に井之頭が小言をこぼす。それに反応した長谷都が井之頭に突っかかる。


「あ、あの~ケンカはしない方が……」


西園先輩が小声でそう言うがそんな遠くじゃ聞こえないと思いますよ。西園先輩は壁と同化すんのかってぐらい壁に張り付いているので到底人が聞き取れる声量とは考えにくい。


「おはようございます」


そんな中、キリっとした声が生徒会に響いた。入って来たのは柔らかい雰囲気を纏い、どことなく東を思わせる美少女だ。


「あなたが鷹宮開君ですね。私は入山愛莉いりやま・あいりです。あなたと同じ2年生で生徒会広報を担っております。本日はよろしくお願いいたします」

「ああ、よろしく」


入山は礼儀正しくお辞儀をして鷹宮に挨拶した。鷹宮は思わずそれに合わせて出来るだけ綺麗にお辞儀をする。


「おはようございます」


最後に入ってきたのは六倉だった。


「あら六倉さん。随分と遅かったですね」


なぜか六倉が入ってきた途端入山が六倉に突っかかる。

しかし六倉はどこ吹く風か顔色変えず自分が遅れた理由を語る。


「ええ、会長に少し頼まれごとを。あなたこそ何も用事がないようですが随分と遅い登校ですね」


嫌味を言ったつもりなのにまったく反応しなくて内心イライラする入山といつものことかと呆れながらも入山を眼中に入れていない六倉、二人の間でバチバチと火花が散る。


「ま~た始まった」

「またっていつもこうなんですか」


長谷都先輩が手を後ろに組んでしれっとそう言った。


「まああの二人はこの生徒会で唯一の2年だからな。必然的にあの二人のどちらかが次期生徒会長になるってわけだ」

「つまりお二人は次期生徒会長の座を狙うライバルと言うことです」

「もうあの二人のどっちかが来年の生徒会長になることが決定なんですか?」

「それはどこの学校も同じだろ。生徒会長は基本生徒会経験者がなるもんだろ」

「まあ、ごくまれにその年の生徒会2年生全員が立候補せず初生徒会の生徒会長が出ることもありますが、基本的には空の言った通りです」


長谷都先輩と井之頭先輩が説明してくれた。

そんなこんな思っていたより個性豊かな生徒会を知れたところで一条先輩が話を戻す。


「みなさん、おふざけはそこまでです。時間もありませんので本題に入ります。各々自分の席についてください」


一条先輩がそう言うとさっきまでゆるゆるだった雰囲気が急に締まり役員全員が黙って自分の席に着いた。


「それではこれより生徒会、臨時会議を始めます」











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