第21話 七姫試練 七の試練 追憶

3日目、欲求との勝負に勝った俺は今現在昨日と同じく姫の部屋にいる。

今日のこの部屋はいつも通りで、逆に一日で元に戻ったのがちょっと謎だ。

だがそれは今はさておき、いや置いといていい問題ではないが置いといて、今日の姫の間は昨日とは別の欲求を誘惑するが充満していた。


「はやく始める。こっちは昼抜いてお腹ぺこぺこ」

「はいはい七星ちゃ〜んもうちょっとの辛抱ですよ〜〜」


涎を滝のように流す七星をあやし涎を拭く二宮。

そしてその奥でを混ぜる五十嵐と六倉。


「な、なんで私がこんなことを」

「もうちょっとだから頑張るっす!」

「来たみたい。じゃあ七星の代わりにアタシが説明する。今日は七星の試練。これから二人にはアタシたちが用意した問題に答えてもらうから。で、より多く正解した方が勝ち」


七星が提示したのは知識を問う早押しだ。知識を貪り尽くしてる七星らしいと言えばらしい試練だ。


「ハンデとして七星は一問につきカレー一皿完食するまでクイズには答えられない」

「今聞いてもハンデが過ぎると思うがな」

「仕方ないでしょう。これも七星が自分で決めたんだから。とにかく始めるよ。もう七星も我慢出来そうにないしね」


七星の方に視線を向けると更に涎の滝が激しくなっていってる。このままいけばワンチャンこの部屋が涎の海になる可能性もあるかもしれん。

俺は七星の隣に用意された椅子に座る。目の前の机には電卓とペン、それと計算用紙と早押しボタンがあった。


「ではこれより第1回七姫クイズを始めます。司会はアタシ三秋と」

「雫ちゃんで〜〜す!」


昭和のクイズ番組かなんかかよ。

そして七星の前に大盛りのカレーが置かれる。


「それでは第一問。ブラックホールは重力が非常に強く光すらも」


ピコン!


問題が読まれてすぐにボタンが押された音がした。

だが俺じゃない。

俺が横を見ると綺麗に完食されたカレーと青く光早押しボタンがあった。


「事象の地平面」


ピンポンピンポン!


「さすが七星ちゃん大せ〜かい!」


早い!?完食スピードが異常だ。カレーは飲み物と豪語する変人たちは世に何人もいるがそれにしてもマジで水でも飲むみたい飲み干すやつがいるか!

それとやっぱりその知識だな。なんだその事象の地平面って?


「ブラックホールは重力が非常に強く光すらも吸い込み、光や物質が脱出出来ない堺がある。イベントホライズンとも言われる時空を閉じた領域とは?正解は事象の地平面です」


は・・・・・・?なんだそれ?なんじゃそれ?そんなもん知るわけねえだろう!!宇宙オタクとか物理オタクとかそこら辺のやつしかわからないクソ問じゃねえか!!


「それでは続いて第二問」


そのまんま続けるのかよ!!

いつの間にか七星の前に新しいカレーが置いてある。


「え~とかつてはモデルとして活躍しており現在は○○○○を○○〇〇してか○○○○する○○妻や○○○○仕込みの○○○○などの○○女優として活躍する」


ピンポーン


「○○○○」


ピンポンピンポン


「正解正解大正解!!!大当たりですよ七星ちゃーーん!!」

「「………二宮(さん)ーーーーーーー!!!!!!!」」


余りにも18禁過ぎる問題に俺と三秋が荒れ狂う。


「これつくったのてめえだろ!!」


俺は速攻二宮に詰め寄る。そんな二宮は言い訳をする。


「違いますよ。これは三秋先輩の問題をちょ~と私風に改良して」


だがその言い訳を三秋が否定する。


「なにが改よ!!アタシはもっと健全な問題だったでしょう!!」


要約すると二宮が三秋の問題を盗んで改悪して完全アウトな問題を作り上げたということだ。


「てかなんで七星さんは正解できたのよ!?」


そうそこが理解できないなぜ七星が正解できたのか。


「私も少なからず生物。女だって性欲はある」

「それでも普通答えないでしょう!?恥じらいってものはないの!?」

「ない」


まさかこんなところで七星の性事情が垣間見えることになるとは…


「あ~あ、先輩へのサービス問題のつもりだったのに。五十嵐先輩から先輩の部屋に本がなかったからてっきりリアル派だと思って」

「五十嵐ーーー!!!」

「あ、あたし!?」


カレーを煮込み中の五十嵐に向かって叫ぶ。


「お前こいつに何言った!?」

「べ、別に、みんなに土曜日のことちょっと話したらちょっと食いつかれちゃって……」

「お前って奴は・・・」


ちょっと詰め寄ったら五十嵐は全てをげろった。


「なるほどなるほど。とりあえず」


1分後


「それでは第3問に参ります」


さっきとはちょっと変わりスッキリとした三秋と俺。そして部屋の隅でたんこぶつけて指いじりする二宮。

ちょっと異様な風景だが誰もツッコまずそのまま続ける。

そしてだんだんと問題は消化されていき気が付けば30問目。


「2020年から着実にプレイヤー人口を伸ばしていっているスマホ一台と刀2本」


ピンポーン


「サッセン!」

「正解」

「はぁはぁはぁ・・・・・・」


何とかラス問までこぎつけた。ここまで耐えれたのには二つの要因があった。一つは七星が流行やスポーツ系の問題に弱かったこと。今回は七星除く6人が作った問題だったから俺でも答えられる問題が意外に多かったこと。それともう一つが七星が満腹になっていったこと。これは今までの二つの試練に比べて明確にハンデが活きたことを感じた。17問目ぐらいからシンプルに完食するのに時間がかかっていた。まあそれでも問題を読み終えるギリギリで完食はしていたが。

この二つの要因のおかげでラス問31問目に挑むことができる。


「それでは最後の問題」


俺は神経を研ぎ澄ませて早押しボタンと耳に集中する。七星はスプーンを構える。


「人を殺す時、誰にもバレず、武器を使わず、あらゆる痕跡を途絶えさせることも可能な殺害方法とはない?」

「は……」


なんだこの問題、明らかに今までの問題とテイストが違う。

この問題には読んでいた三秋もカレーを用意していた五十嵐も六倉も黙り込む。


ピンポーン。


静寂の中、場違いな音が鳴り響く。鳴ったのは七星のボタンだ。そして七星は動じず淡々と答える。


「毒殺」


ブ、ブー。しかし鳴り響いたのは不正解の音だった。

どうやら設定されていた回答とは違うようだ。だが七星はそれに納得いってないようだ。


「おかしい。薬物の中には時間経過で証拠がなくなるものもあるし、摂取したものがわかりにくい。体内に取り込んだことでなくなることもある」


それに応えるように三秋が用意されていた紙を読む。


「えーと、それについては毒殺は必ずしも特定されないとは限らないからです。例えば臭いや死体の状態や解剖後に特定される可能性があるからです。そして特にバレにくい薬品は入手経路が限られていて特定されやすいということです」

「む……」


なるほどな~まあよくわからんけど。とにかく今回答権があるのは俺だ。多分ここが最大のチャンスだ。

だが今の七星の回答からするに一般的な殺害方法、刺殺、斬殺、撲殺、溺死、毒殺などなどは該当しないと考えられる。

となれば他殺の線をなくして自殺の線を……いやそもそも聞かれているのは殺害方法、つまり他殺だ。それにこの問題には何か生生しいものを感じる。となると実体験?もしくは何かから得たインスピレーションをもとにできたのか?


「人を殺すための手段……人を…殺す……」


その時一瞬開の頭にはある光景を思い出させた。


「まさか……」


ピンポーン。


開のボタンが鳴り響く。

開はスッと自分自身を少し疑いながら答えた。


「言葉……言葉か……」


ピンポンピンポーン!!


正解音が鳴り響く。


「誰が作った……こんな問題……」


開は正解したことより誰がこの問題を作ったことを考えていた。

七星を除く6人の誰かがこの問題を作ったのは確実。じゃあ誰が。


「鷹宮」

「ん……?」


開が考えていると七星が手を出してきた。


「握手、合格」

「え、あ、ああ、ありがとう」


俺は七星と握手をする。どうやら合格らしい。


「それじゃあおかわり」

「ちょっとまだ食べるの!?」

「当たり前。まだ5分目」

「どんだけ食べるのよ……」


そして七星はすぐに六倉にカレーを求めに行って六倉に憧れた。

だがこれで一旦七星の試練はクリアしたらしい。


「ちょっとこぼしてるわよ!?」

「じゃああたしもカレー食べよーー!!」

「いいわね。ずっといい匂いしてて私もお腹が空いたわ」

「アタシはダイエット中だから」

「じゃあその分もらう」


七姫試練 七星の試練合格

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