第19話 七姫試練 三の試練 美貌
翌週の月曜日の放課後。とうとう来た七人からの試練。俺たちは今8人で近くの大型ショッピングモールに来ていた。ここはフードコートから雑貨屋、ゲームセンにといろんな施設があって近くの学生たちの溜り場として有名だ。
そして俺たちがいるのはその中でも女子高生がよく買い物にくる服屋だった。
「じゃあ最初はアタシの試練ね」
1日目の試練は三秋の試練だ。
「アタシの試練はアタシがモデルとして納得するアタシに似合うコーディネートをすること。チャンスは一回だけ。ハンデとして一度だけ試しに合うかどうか評価してあげる。制限時間は2時間」
つまり2時間以内に三秋が納得する服装を三秋自身に施せということだ。
普通に考えてきつすぎ。だって毎日の如くファッション雑誌の一面飾ってるやつのコーディネートなんて一介の男子高校生ができるかって話。
それとそれ以前に
「何か質問はあるかしら?」
「なあほんとにここでやるのか?」
「そうだけど?」
「そう…」
周りの視線がと言うか目立つんだよな~~ただでさえ人が多いのに超絶美少女が7人もいる。しかもその一人は人気のファッションモデル目立たないはずがなかった。
「他には?」
「いや、ない」
「そうじゃあよーいはじめ」
三秋の合図と共に俺はまずは中を見て回る。とにかくこの店にどんな服があるか分からないとどうしようもない。
一応三秋が載ってる雑誌をあるだけ見てきた予習はしたがコーデが多すぎて逆によく分からんくなった。
「やっぱり何かしらテーマがいるよな」
一通り見て回ったがどれも安い割にいい服なんだろう。全部古着屋の格安服しか持っていない俺の意見だが。
だけどやっぱりテーマがあればもっとピンっと来ると思う。
「そうなるとやっぱり夏に着るって感じだよな」
最近暑くなってきたし軽い服装の方がいいのか?確か生地も風通しの良いものがいいとか。
「とりあえず良いと思った服をキープして後で組み合わせてみるか」
もう一周周ってそこで夏っぽいもの、暑さを紛らわせるものを選んで行く。
そうこうしている内に1時間が経過していた。
「やばいな、もうあと一時間か」
「ほんとですよ先輩」
「うわっ!?二宮なんでいんだよ」
入り口付近の待合場で選んだ服たちを見てコーデを考えていると後ろから急に
二宮が話しかけてきた。
「先輩があまりにも遅いんで様子を見に来たんですよ」
「遅くて悪かったな」
「ほんとですよ。時間かかり過ぎて私も選んじゃったじゃないですか」
皮肉なつもりだったんだがな。
二宮がそう言って後ろから一着やばい服を見せてきた。
「どうです先輩これ」
二宮が笑いながら俺にそれを渡そうとしてくるが俺はそれを拒む。
「知らん。だがそれ三秋に着せるつもりなんだよな?」
「もちろんですけど?」
「なら、なおさらアウトだ!」
「そうですか?いいアイデアだと思ったのですけど」
「なわけあるか!こんな人ごみの中バニーなんて着せられるか!!」
二宮が持って来たのはよくアニメとかにあるバニーコスだ。
てかこの店そんなもんまで売ってんのかよ…
「とにかくなしだ。そんなのこの場で普通着れないだろう」
「私は全然余裕ですけど?」
「それはお前がおかしいだけだ。羞恥心とかないのかよ?」
「仕方ありませんよ。誰しもこの雫ちゃんの魅力に逆らえないんですから♪」
キランっとウィンクしてポージングをとる二宮。
「へいへいそうですか」
「ちょっと、冷たくないですか!?」
「普通の人ならコンぐらいだろう。それとも俺が股を両手でふさぐ姿でも想像してたか?」
「……もういいです。せっかく手伝ってあげようと思ったのに。ふん。おかしいのは先輩ですよ。何も反応しないなんて」
ムスッとした感じで二宮がどこかに行ってしまった。揶揄い過ぎたか?でも今は目の前のことに集中だ。
切り替えてコーデを考える。
「とりあえず上下はこれでこれにこれかな帽子でも持って行くか」
俺は一度決めた洋服を三秋のところに持って行く。
「かなり時間かかってたわね。それでそれでいいの?」
「ああ、一度これで試してもらいたい」
「分かったわ」
三秋は俺から服を一式受け取り試着室に入って行った。三秋が試着室に入ると周りにいた他の女子たちがザワザワしだした。
「随分と長かったけど平気かしら?」
「一条先輩、なんですかその袋は?」
一条先輩が店の外から別の店の袋を持って来た。それも俺でも知ってる超高級ブランドの。
「これかしら?あまりにも君が遅かったから、ちょっとばかし久しぶりのショッピングを」
「一体いくら使ったんですか?」
「ざっと300ぐらいかしから?」
「さっ・・・!?」
たった4つの袋にどんだけ価値がある物が…てか一体何を買ったらそんな値段すんだよ!
「じゃあこれよろしくね」
「え…?ぬわ!?」
一条先輩が俺の目の前で持っていた袋を離して俺は慌ててその袋をキャッチする。
「こ、これ俺が運ぶんすか?」
「当たり前でしょう?ここまで持ってきたあげたんだから」
そう言って一条先輩はまたどこかに行ってしまった。
「とりま怖いし置くか」
言いたいことが無いわけではないがその前に今持ってる物が怖いんで近くのソファーに置く。
「にしてもみんな自由過ぎるだろう……」
「まあまあかしらね」
試着室から三秋が出て来た。
いつものちょっとキビキビした雰囲気からクールな感じの三秋。
彼女が出て来た瞬間周りが騒がしくなる、一部の女子からは黄色い悲鳴が響く。
「すごいな。モデルみたいだ」
「みたいじゃなくて本業なんだけど。まあそれは置いといてまあまあね」
「どんな感じだ?」
「上と下は悪くないわ。着る人の事も考えて通気性の良い生地だし。でもこの上着がだめ」
そう言って三秋は上着を脱いで俺に向かって投げる。
「それに帽子も服に合わない。スタイリッシュ系なのに帽子が可愛いのはちょっと変ね。それに靴にも合わない」
「靴って、ここに靴なんて売ってないぞ?」
「違うわよ。アタシの今履いてる靴に合わせるのよ」
「マジで……」
この場で買うものだけ判断するんじゃないんですか?
「当たり前でしょう。靴も立派なファッションアイテムなんだから」
「……そうなんですか……」
靴なんて気にしたことねえよ。サイズが合って、運動靴ならなんでもよかったからそれしか持ってねえよ。
「そういうい訳だから後は頑張ってね」
三秋は上と下はそのままで店の奥に行ってしまった。
「あれはあの二つに合わせなさいってことか?」
多分着たまんまってことはそういうことなんだろう。して変えるのは帽子と上着、プラスαあの靴に合うと言う条件付きか……どうしよう。
どんな服を合わせれば彼女の魅力を伝えられる?
俺が選んだ中で残っている選択肢は帽子は3つ上着は5つ、その中で三秋が着けている3つに合う服はなんだ・・・・・・。
「何ずっと考えてんのよ」
「六倉」
「同意。六倉も珍しく良いことを言う」
「後が余計よ!!」
突然いなかった六倉と七星がいた。
「それで、なに悩んでんのよ?」
「・・・・・・」
「何よ?何か言いなさいよ」
「いや、どれを選んだら三秋が納得するか」
「そんなの考えても仕方ないでしょう。お題は決まってるんだから」
「その通り、気楽で良いと思う」
「お前らな・・・こっちは真剣に」
「だから早く終わらせてよね」
「うむ」
それだけ言って2人はまたどこかに行ってしまった。
好き勝手言いやがって。考え過ぎね。お題は決まってるか・・・もう一度三秋の言葉を思い返してみる。
「・・・・・・もしかして、ワンチャンありか・・・・・・そういえば五十嵐が此間たしか・・・・・・」
温泉から帰る途中で五十嵐に言われたあることを思い出した。
「ワンチャンだな」
俺はそれを確かめる為に三秋を探す。
ちょっとしてファンの子達と写真を撮ってる三秋を見つけた。
「三秋」
「うん?もう決まったの?」
「いや、一つ確認したいことがあってな」
「確認したいこと?」
「お前はモデルっ職に誇りはあるか?」
「勿論よ」
「お前ならどんな服でもその魅力を伝えられるか?」
「当たり前でしょう?それがモデルの仕事なんだから」
その言葉を聞いて行けると確信した。
「了解。じゃあ今から持ってくるからさっきの試着室の前で待っててくれ」
三秋に待ってるように言って急いで戻る。
深く考える必要はない。自分が良いと思った組み合わせを選らび取るだけだ。
俺は帽子と上着を一つずつ持って三秋の元に行く。
「待たせたな」
「それでどれにしたの?」
「これとこれだ」
三秋に選んだ帽子と上着を渡す。
「じゃあ着てくるから」
「ちょっと待ってくれ」
三秋が試着室に入る前に彼女を呼び止める。
「何?」
「お前は言ったよな、どんな服でもその魅力を伝えて見せるって」
「え、ええ?」
「じゃあ期待してるぜカリスマモデル様」
「アンタなに言っ・・・・・・アンタ・・・」
俺の言いたいことに気づいた三秋は一瞬怪訝そうな顔をするがすぐに諦めて仕方ないと言う感じに試着室に入って行った。
「鷹宮っち終わった!!」
「ぬわ!?」
またもや後ろから現れた。今度は五十嵐の大声で普通にビビった。
「終わったか」
「ようやくね」
「長かったですね〜〜」
「うむ」
「時間ギリギリね」
五十嵐に続いて四ノ原先輩、六倉、二宮、七星、一条先輩とゾクゾクと全員が集結した。
そして着替え終えた三秋が試着室から出てきた。
「流石ね」
一条先輩の一言が今の三秋の姿を言い表すのにピッタリだった。
三秋は確かに綺麗だった。だがそれ以上に服に目がいくような。自身は今着てる物達を際立たせるだけの者として自身の魅力を服に付与する流石はカリスマモデルと言わせる凄さがあった。
「それじゃあ2時間経過したわ。採点を聞きましょうか」
一条先輩は三秋に話を振った。
「センスはまあまあでもそうね」
三秋は少し周りを見る。自分の事を見る女子たちのことを。
「及第点。合格よ」
「は〜〜」
その言葉で一気に緊張が解けて大きく息を吐いた。
「お・め・で・と・う・ございます先輩♪」
後ろから二宮が胸を押し付けて来た。
「これで明日のお楽しみが出来ましたね♪」
「お楽しみかどうかさて置きありがとうな」
立ち上がり三秋の元に向かう。
「ありがとう」
「何に対してのお礼よ?」
「なんとなくだ」
「なんとなくって意味分かんない」
三秋はふんっと服を着替えようと試着室に向かおうとした時滑って転びそうになったところとっさに支える。
「大丈夫か?」
「・・・・・・////」
そして何故か三秋の顔が頬が紅くなっていって。
「どこ触ってんのよ!!!」
バチンッ!!!
「痛ってーー!!!」
ビンタをモロに喰らった。
三秋は逃げるように試着室の中に。
「しまり悪ぃな。まぁでも」
一つ目の試練突破だ。
七姫試練 三秋の試練合格。
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