第16話 室内の湯

「温泉!?」

「そう温泉だ。やっぱり疲労回復と言ったら温泉だろう」

「ええ、温泉には美肌効果に疲労回復、精神回復にもいいのよ」


俺と三秋は温泉のメリットを言う。もともとこの近くにはいくつかの温泉宿があり、今から行くところはその中でも値段の割に広い温泉と飯が美味いのが一部の学生の間で有名の隠れた溜まり場だ。


「二人の言いたいことは分かるよ!でもなんで三秋ちゃんもいるの!?」

「単純にお前の監視役だ」

「監視役?」

「そう。だってお前、もしかしたらサッと入ってサッと上がるかもしれないだろう?俺じゃあ女湯なんてもちろんのこと入れる訳ないから、その為に三秋を呼んだってわけだ」

「あ~そういうこと。最初はなんで後からアンタたちに合流とか思ったけど。そういうことなら納得したわ」

「何がどうで納得したの!?てかあたしだってお風呂ぐらいゆっくり入れるし!!」

「「本当に?」」

「本当だよ!」


五十嵐がゆったりと風呂に入れるかは疑問だがひとまず俺たちは温泉宿に向かう。

この温泉宿はちょっと昔の雰囲気、レトロとは言わないが俺たちが小学校低中学年ぐらいに懐かしむものがたくさん置いてある。俺たちは入館料を払って館内着をもらう。


「じゃあ上がったらゆっくりしててくれ。俺が先に上がったら二階の漫画が置いてあるところでゆったりしてるから」

「分かったわ。行くわよ」

「ちょっと三秋ちゃん押さないで!」


三秋が五十嵐を引っ張って女湯に向かった。その時の三秋の表情が少し楽しそうだったのは本人には黙っておこう。


「俺も日頃の疲れを思いっきり癒しに参りますか」


俺も日頃の疲れ(主に彼女たちのお世話の疲れ)を癒しにいつもよりちょびっとテンション高めで浴場に向かう。


***


「おおーー、広いね三秋ちゃん!」

「はいはい浴場では静かに。ほら、まずは軽く身体を流すわよ」


ザーと三秋が五十嵐に掛け湯をかける。


「熱っ!?ちょっとせめて前もって何か言ってよ!」

「そんなに熱くないでしょう」


三秋は五十嵐の文句を流して自分にも掛け湯をかけて汗を流す。


「じゃあお風呂に入るわよ」

「まずは露天風呂から行こうよ!」

「まずは室内からよ」

「えーー」

「文句言わないの」


二人は(三秋の独断で)まず室内の温泉から入って行くことにした。


「ふ〜〜、やっぱり疲れた身体に温泉は最高ね」


ゆっくりと肩までお湯につかって身体の力を抜いていきリラックスする三秋。

その姿はただお湯につかっているだけなのにあまりにも絵になり過ぎていて周りにいた女性たちも彼女を一瞬見てしまう。


「気持ぢ〜〜」


それに対して五十嵐は肩までと言わず唇のすぐ下までつかり完全に身体の筋肉が力を失い沈みかけていた。


「この温泉は疲労回復とリラックス効果、それに肩凝りや腰痛にも効くみたいよ」

「へ〜〜え〜〜そ〜〜なんだ〜〜」

「ええ、だからゆったりとしっかりつかって日頃の疲れを癒すのよ」

「ふ〜〜ん〜〜」


三秋が五十嵐に念押しするが彼女は既に温泉の魔力に沈み完全に聞き流している。


「じゃあ次に行くわよ」

「え〜〜」

「ほら沈まないの」


三秋は五十嵐を引っ張り出して次に向かったのはお湯の中に寝そべるスペースのある所だった。


「次はジャグジーよ」

「だけど泡ないよ?」

「いいから入るわよ」


そう言って三秋がそこに入ると寝そべるスペースから泡が吹き出し始めた。


「なるべく節制する為に誰も入ってときはジャグジーの機能がオフになって誰かが入るのを感知したらオンになるの」

「ハイテクだね〜」

「今時そんなハイテクでもないわよ」


こういうシステムは10年ほど前ならそこまで無かったと思うが今の時代ではそこまで珍しいものではないだろう。(主はその知識なし。出来るなら御教授願いたい)


「ジャグジーはね、泡によるマッサージと血行も良くなるのよ。それに睡眠改善にもいいの」

「三秋ちゃんって結構もの知りだね」

「美容の為よ。あ~気持ち~」


三秋はゆっくりと寝そべり、彼女の体を泡が刺激する。五十嵐も三秋に習って寝転ぶ。


「い、いたい……」


三秋の気持ちの良さそうな表情とはうって違い、五十嵐はちょっとだけ顔をしかめている。


「凝ってる証拠ね。どこが痛いの?」

「背中…と、肩」


五十嵐の体がだんだんとブリッジの様にそっていく。


「もう少しの我慢よ。そうね後3分ぐらい」

「3分も…」

「案外あっと言う間よ」


3分後


「じゃあ次に行きましょうか」

「お、終わった…」


余裕を持って上がる三秋と肩と背中を回す五十嵐は室内にある浴場をほとんど回った。そして二人は室内最後のお風呂に向かった。


「なんかいい匂いがする」


その風呂は他の風呂とは違い硫黄などの臭いではなく、その周りはどこかフローラルな匂いがで満ちていた。


「最後は花風呂よ。アタシのお気に入りなの」


三秋はゆっくりと花風呂に入る。それに続いて五十嵐も花風呂に。

花風呂の角には花びらを入れた袋が杭と紐でつながれて風呂の中で浮いていた。


「いいね~体が軽くなる~」

「美肌効果はもちろんのこと免疫にも効果があるとか、もちろん快眠にもいいわね」


それから二人は花風呂を存分に堪能した。

一方男湯、開はと言うと。


「やっぱり風呂上がりと言えばコーヒー牛乳だな!」


温泉を堪能しコーヒー牛乳を堪能していた。

これにより開はなかなかな時間の待機が決定した。

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