第15話 土日の約束続
「ん・・・い、いにゃい!」
「もう少し、あと少しだから」
「にゃ、にゃめ!もうちょっ・・・にょ、や、やしゃしくぅ・・・!?」
「あと、あと少しだから」
「だ、ダメェ〜〜!!」
「よし、肩はこれで終わりだな」
開はベットから降りて机に置いたウェットティッシュで手を拭く。
「大丈夫か?」
「う、うん・・・だ、だい、じょうぶ・・・」
五十嵐は枕に顔を埋めて息を大きく吸って吐いて身体を落ち着かせる。
「かなり無理してるだろう。身体のそこら中がカチカチだったぞ」
開が今日五十嵐を家に呼んだのは彼女に休息を与える為だ。毎日休日すらも複数の部活の練習に参加している彼女は休む暇なんてなかった。それに気づいた俺は彼女を呼んで肉体と精神に休息を与えようと考えた。
「べ、別に無理してる…わけじゃぁ…」
「嘘つけ。先週何部かよくわからないが日曜、練習に来てくれないか誘われてただろう?その時、先輩がいなくなった後、倒れかけたろ」
「み、見てたんだ」
「たまたまな」
開は次に腿の筋肉をほぐす。
「ん…」
「ただでさえ肉体の疲労が限界に達して、いや超えているのにそれによるストレス。更にはそれを超えた肉体の酷使。このままじゃ死ぬぞ」
「そ、そこまでは…流石に死にはしないよ」
「馬鹿言うんじゃねえ。日本じゃ過労死なんてすでに一般用語だ。それは必ずも仕事に限らない。特にお前みたいに頼み事とかを断りにくい性格の人間なんてまさに該当者だと俺は考えている」
日本人は無駄に責任感とかが強いと俺は考えている。ではそれはなぜか?答えは簡単だ。失敗すると面倒だからだ。怒られるのが怖いとかじゃない面倒なんだ。だから失敗しないように過度に力を入れ過ぎて結局失敗する。そして更に面倒がきていつの間にかポックリ逝っちまう。
「な、なら別にここまでしなくても。教えてくれるだけでよかったんじゃ」
「何言ってる。?それでお前が止まれば苦労しねえよ。事前にお前のクラス奴らに聞いたが何度か休んだ方がいいんじゃないかって言ってくれたらしいな。その時お前はなんて言った?」
「う…そ、その内休むから平気って言いました」
「でだ、それからお前、休んだか?」
「そ、それは…」
「言っとくが事前に運動部の部長たちにお前がどんなペースで来てくれるかとか誘って来てくれた日を聞き出してあるから嘘は通じないぞ」
「は、はい…ありません」
「だよな」
俺は手を止め五十嵐を起こし飲み物を手渡す。
「今日は休息日だ。しっかりと体と精神を休めるぞ。その為にいろいろと計画してきたんだからな」
「そうなんだ。ありがとう。で、これから何するの?」
「午前は特にすることは無い。予定は午後からだ」
「じゃ、じゃあ午前だけでも予定入れとけばよかった」
「それがだダメだっつてんだ」
「すみません」
「とにかく、アニメでもゲームでも映画でもなんでもいいからやろうぜ。時間は有限なんだからよ」
「う、うん!」
俺と五十嵐はリビングに戻り、五十嵐の要望でテレビにゲームを繋げる。
「どれにするんだ?」
「じゃあ、これ!」
五十嵐が手にしたのはいろんな作品のキャラクターが戦う某対戦型ゲームだ。
「あれ?まだキャラ全開放されてないの?」
ゲームのキャラ選択画面が映されるがあと4分の1ほどのキャラが解放されていない。
「一緒にやれる奴がいなかったからな。途中で飽きた」
「でもこれ、一応ネット対戦できるよね?」
「金がない。だから繋げてない。今の時代ネット対戦するにも金がかかる時代なんだよ」
「そ、そうなんだ…なんかごめん……」
「やめろ…逆に虚しくなる」
開と五十嵐の間に気まずい空気が流れる。
「じゃ、じゃあやろうか!!」
「そうだな」
五十嵐が無理矢理前に進めてくれた。
「あたし結構強いから覚悟してね!」
「俺も簡単には負けねよ」
それから体感40分ぐらいゲームをした。五十嵐は確かに言うほどの実力があった。途中で俺は「こいついつゲームなんてやってるんだ?」と思ってしまったが空気的に聞かぬが華だろう。
「ふぅーーちょっとお腹すいてきた!」
「時間もいつの間にか12時回ってるしどっか食いに行くか」
「え、もうそんな時間!?」
五十嵐がスマホを確認すると確かに時刻は12時を回っていた。
「あたし1時間ぐらいしか感じなかった」
「俺もそんな感じだな。じゃあこのまま飯食いに行くぞ」
「あたし牛丼がいい!」
「いいな。俺も食いたいと思ってた」
俺と五十嵐は牛丼を食いに行った。
「あたし明太子マヨの特盛で!」
「じゃあ俺はチー牛の大盛りかな」
タッチパネルでメニューを注文して少し雑談をする。ちょっと待つと店員さんが牛丼を持ってきてくれた。
「お待たせしました。明太子マヨ牛丼特盛とチーズ牛丼大盛りです」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「失礼します」
店員さんはすっと仕事に戻った。
「食べるか」
「うん!いただきます!!」
「いただきます」
美味い!牛丼なんて何年ぶりだ。ご飯の熱で肉とご飯に絡みたくチーズ、これを食べずにいられる訳がない!
「やっぱりいつ食っても美味いな」
「ほんと美味しいね!!」
五十嵐もとても美味しいに牛丼を食べる。七星ほどではないが五十嵐もスポーツマンだからな。結構食うな。いや、比べる相手が悪いかもしれんな。
「ふぅ〜〜割と満足満足」
「俺も腹いっぱいだ」
久しぶりにチー牛食ったが満足度は直近でトップ級だ。
「じゃあ軽く消化がてら次の場所に歩いて行くか」
「どこに行くの?」
「お楽しみだ。特別ゲストも呼んだるからな」
「特別ゲスト?」
「ああ、ある意味今のお前に一番必要な人材かも知れないな」
「誰よそれ?」
「それは行ってからのお楽しみだ。行くぞ」
「ちょっと待ってよ!」
俺と五十嵐が牛丼チェーンから出て数十分、俺たちは栄えてはいるが人通りが割と少なめな大通りを歩いている。
「結構遠くに来たね。帰りはバスで帰るから安心してくれ。お、どうやら向こうは先に到着してるみたいだな」
「ん?」
少し遠くの先に見えるおしゃれな女子が日傘をさして立っていた。
「悪い待たせたか?」
「やった来たのね。10分も待たせて」
「三秋ちゃん!?」
「そうだ。彼女が今日のゲストだ」
俺が呼んだのは三秋だ。意外なゲストに五十嵐は驚くが三秋はちょっと不機嫌にこっちをみる。
「ゲストかどうかは置いといてこいつに呼ばれたのは確かよ。まったくもうちょっと涼しい日に呼んでくれない?てかなんでアタシなのよ」
「だってお前が俺に借りがあるとかいうからその清算にって連絡しただろう」
「なんでアンタがそんなことを知ってるのよ…」
「一条先輩がRISEで教えてくれてな」
「あの時ね…言わなきゃよかった……」
此間家で掃除をしてる時急に一条先輩から連絡がきて一方的に三秋が俺に借りがあると感じてるって連絡をくれた。
なので今回はそれを使わせてもらった。
「ここに来てくれたってことはお前もその気で来てくれたんだろう」
「アンタがおごってくれるって言うからね」
「ああ、俺の我儘だし入館料ぐらいは俺が持つ」
「アタシも久しぶりだしやっぱりお肌のケアにはこういうのも悪くないからね」
「ねえ!二人してなんの話をしてるの!」
「何って「温泉だ(だけど)」」
「温泉!?」
今日の目玉は温泉による回復dayだ。
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