第14話 土日の約束

「おほほほほ!!まだまだちびっ子には負けないわよ!」


マスターは高らかに勝利宣言をあげる。代わって開は汗びっしょりで床に寝そべり、目をかっぴらき、息を大きく吸って吐いてを繰り返し息を整える。


「前よりタイムが短いな。いててて…」


開は起き上がり時刻を確認する。時計は夜の8時を示していた。


「仕方ないわよ。昔のハーちゃんと違って瞬発力と脚力、あと腕の筋力かしら?それらが衰えちゃって」

「シャワー借りる。この服捨てるんで洗わなくて結構です」


開がシャツを脱ぐ。シャツはいろんなところが破けて流石にこれ以上は着れない。


「オッケー♪場所は分かるわよね?」

「出て左に曲がって3つ目の部屋だろ?」

「そうよ。ちゃんと覚えてるじゃない」

「当たり前だ」

「じゃあ私はバーに戻るから。今度買い物付き合ってあげるから。それと今度はできるんならお友達も一緒にね♪」


マスターは最後にウィンクしてバーに戻って行った。


「連れてこれるダチいねえけどな」


開はシャワールームに向かう。シャワールームは綺麗に掃除されており、タイルもピッカピカ。


「まあこれだったらギリ間に合うか」


流石にマスターとの鍛錬は身に染みるな。それに肩凝りにも効く。

開が肩を動かすと硬かった肩の筋肉が少し柔らかく曲げやすくなった。


「だけど疲れて痛みが半端ねえ。荒治療も荒治療だな」


シャワーのお湯が汗を流し運動で凝り固まった筋肉をほぐしていき、頭の中をスッキリさせてく。


「今日の飯はちょいと豪華にいくか…」


開はシャワーを浴びて家に帰った。


***


翌日、朝10時、青空の下、少しの雲が彷徨う素晴らしい天気。


「お邪魔しまーーす!!」

「いらっしゃい」


今日は前の約束通り五十嵐の休日を拝借させていただいた。そして事前に俺の家に来てくれとRISEリセで伝えてある。もちろん住所付きで。


「男の子のお家なんて初めてだから緊張するな~」

「そんな変な家じゃねえよ。面白いものも何もないしな」

「そういうことじゃないよ!女の子って言うのは男の子のお家は友達でも緊張するんだよ!」

「そうなのか?」

「そうなの!」


俺にはその感性はよくわからない。異性の家になんて行ったことないし。てかそもそも友達の家に行ったことないし。


「まあくつろいでくれ」

「お邪魔しまーす」


俺は五十嵐をリビングに案内する。


「へぇーここが鷹宮っちのお家か~。ほんとに何もないね」

「遠慮ないな。まあその通りなんだが。そこに座ってくれ暑かっただろう。お茶、水、ジュース、後炭酸もあるが何がいい?」

「じゃあ炭酸で!」

「コーラでいいか?」

「大丈夫!」


冷蔵庫からコーラの缶を取って五十嵐に渡す。五十嵐はプシュッと開けて気持ち良くコーラを飲む。


「あ~~生き返る~~」

「いい飲みっぷりだな」


俺もコーラを飲む。


「それであたしをお家に呼ぶなんてなんのよう?」

「う~ん。あるにはあるが無いとも言えるな」

「何それ?あたしそういう難しいのは分からないんですけど?」

「じゃあちょっとついて来てくれ」


俺は五十嵐を二階のある部屋に案内する。


「え~とここは?」

「俺の部屋だが?」

「うぇ!?」


そう言うと五十嵐は結構わかりやすく驚いた。


「そこまで驚くことか?」

「いやだって、あ、あたしも男の子の部屋に入るなんて初めてだし……」


五十嵐は体をもじもじさせながら戸惑っている様子だ。いつもそんな仕草見せないくせに意外にうぶなんだな。


「それじゃあ適当にくつろいでくれ。俺はちょっと荷物取ってくるから」


そう言って開は五十嵐一人を置いて部屋をでた。一人になった五十嵐はきょろきょろと部屋を観察する。


「こ、ここが男の子の、鷹宮っちの部屋……なんか想像してたより綺麗」


開の部屋は割と綺麗に整頓されていた。というより元から散らかるものが少ないと言った方がいいかもしれない。


「男の子のお部屋って漫画とかフィギュアとかポスターが張ってあるかと思ってたけどそう言うのじゃないんだ」


ちょっと気になったのか五十嵐はクローゼットを覗き見る。中には開の私服が綺麗にそろえてあった。


「綺麗に整頓されてる。あたしよりも……」


あたしもちょっとは洗濯とかできたほうがいいかな?


「でもなんか似たお洋服ばっかり。それに5着ぐらいしかないんだ。男の子がお洋服に興味がない人が多いってホントなんだ」


五十嵐は静かにクローゼットの扉を閉めた。


「あと男の子のお部屋って言ったら」


五十嵐が目を付けたのはベットの下だ。

男の子のベットの下に、その…え、エッチな本を隠してるって漫画で見たことあるし!ほんとかな?

五十嵐はベットの下をのぞき込む。


「ん~よく見えないな」


五十嵐は手を伸ばしてベットの下を探る。すると奥の方んいある何かに触れた。

こ、これってもしかして!

好奇心のまま五十嵐は手をギリギリまで伸ばしてどうにか取ろうと奮闘する


「あと、あと少しで!」

「何があと少しなんだ?」

「!!??」


五十嵐は体を硬直させ振り向くとそこには冷たい目で自分を見る開の姿だった。


「それで、何してるんだ?」

「あ、あはは……」


五十嵐はすっと伸ばした手を戻して正座する。対して開は腕を組み見下す。五十嵐は開の顔を見れず気まずそうに下を向く。


「はぁ〜、何してたかは知らんが人様のベット下下がるのはやめとけ。はしたないとおもわれるぞ?」

「はい・・・・・・」

「じゃあベットにうつ伏せで寝てくれ」

「え、ええ〜〜!?」


五十嵐は顔を真っ赤にして顔を隠す。ま、まさか今日呼ばれたのって!?


「何驚いてんだ?いいからうつ伏せに」

「ちょ、ちょっと、まだ心の準備が!!??」

「いいからそんなに痛くないから」

「嘘だ!みんな言ってたもん!最初痛いって!」

「最初だけな。後から少しずつ気持ちよくなっていくはずだから」

「気持ちよく!?」


五十嵐の頭はあれやこれやのことで煙を吐いている。だがそんなこと気にせず開は五十嵐を自分のベットに優しく寝かす。


「大丈夫、何度かやったことあるから」

「な、何度も!?」

「安心しろ」

「ぷ、プシュ〜〜〜」


それを機に五十嵐は頭オーバーヒートでされるがままだった。

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