第3話 信頼ゼロ

「結構カッコイイ人が来たみたいだし個人的には満足。でもこういう人に限って私に落ちちゃうのよね~~にしし」

「ねぇ~早く帰っていい?アタシ今日仕事あるんだけど?」

「ねむねむ~~~……」

「僕も今日ソフトの手伝い行かなくちゃいけないからなるべく早く終わって欲しい」

「どうせコイツも今までの連中と同じで1週間もしないうちに泣いて出て行くわよ。こんなとこに集まっても時間の無駄よ」

「ムシャムシャ。その可能性は高い。だがゼロとも限らない。人間関係はファーストインプレッション、第一印象が大事」


全員が完全別方向にとがった個性を持つ7人の美少女。俺は今日からこの7人の面倒を見るか。


「見ての通り私たちは優れた能力を持つこの学園のエリート。だけど能力も性格もばらばら。そこで学校側から私たちにお世話係をつけようって話になったのよ」


いや全然わからないんですけど?いやなんとなく理解はできるが意味がわからない。


「だけど私たちは全員女。力仕事とかを考えると男の子がいいんだけど、ほらやっぱりこの容姿でしょう?」


一条先輩が自分の容姿を強調する。はいはい確かにかなりの美少女ですね。これは不貞腐れても変えようのない事実だ。


「複数人だと結託して間違いが起きちゃったりしちゃうでしょう。だから能力のある男の子を一人お世話係に任命することになったの。そこで今回選ばれたのが君なの」


言っていることは分かる。確かにこの美少女たちの中に男が放り込まれたら邪な考えを抱かない方が無理があるのも納得の理由だ。


「という訳でこれからよろしくね鷹宮君」

「あ、あはは……」


苦笑いしかできない。現状の整理がまったくできない。自分から引き受けたとはいえもっとましな説明というか、せめて正座は勘弁してくれないのかな。


「今日は顔みせだからこれで解散。明日からよろしくね」


一条先輩はそのまま荷物を持って部屋を出て行った。


「やっと終わった。アタシもう行くから君、戸締りしといて」

「僕も家に帰る」

「あたしもソフト部行ってくる!」


三秋、四乃原、五十嵐も荷物を持って各々帰って行った。


「私は生徒会の仕事があるから。戸締りした職員室よって先生たちに生徒会に案件がないか聞いてきて。何もなかったら帰っていいから」


六倉は早速仕事を押し付けて生徒会室に。六倉は同い年だよな?流石にもっと言い方ってもんがあると思うんだが……まあそれを本人に言ったところで余計溝を深くするだけだしやめておこう。


「私は図書館にいるから。何か用があればそこにメールしとくから」


本とベーコンを持った幼女が出て行った後俺のスマホが鳴った。

確認すると謎のアプリが入っていた。


「世話役提示版……って」

「それは私たちが一方的要件を突きつけるようになってるから」


残った一人、二宮が俺を覗き見るように声をかけて来た。


「お前は帰らないのか?」

「私は他のみんなと違って特にやることないし~。今日は先輩と遊ぼっかなって」

「悪いが俺は金持ってねえぞ」


金欠だからこの依頼を受けたのに遊び過ぎて金が跳ぶなんて笑えない。


「別に取って食おうってわけじゃありませんよせ・ん・ぱ・い♡」


こいつ、小さくとも谷間はあるそのチッパイをチラ見せする感じで俺の前に屈む。


「そうかよ」

「それよりいつまで正座してるんですか先輩?」

「タイミングを逃したんだよ」


なんかことがとんとん拍子に進んで俺の理解が追いつくまでには終わっていたんだ。

俺は二宮に言われて、そろそろ正座を崩そうと立ち上がろうとするが、脳にビビット麻痺の感覚が走った。そのまま俺は倒れる。


「あははは!思いっ切り頭ぶつけてそれ可愛い後輩に見られて本当に面白いですね先輩♪」

「クッ…!」


いちいち言動がイラっときやがる。それにこれが素じゃなくてわざとなのが余計にムカつく。

俺は頑張って脚振るわせながら立ちあがる。だがずっと正座していて足がめちゃくちゃ痺れて歩くのがままならない。


「先輩見え張っちゃって可愛いですね♪あ、鍵は会長の机の上ですよ頑張ってくださいね。それじゃあまた明日~~♪」


二宮はそのまま俺を置いて出て行った。

クソ、最後までおちょくって。

だが歩くのは痺れた足が治ってから……



***


二宮が帰ってから10分後ようやく足の痺れが治ったので一条先輩の机の上からこの部屋のカギを持って戸締りをする。


「そういえば六倉から先生に生徒会への案件の有無を聞いてこいって言われてたんだった。……てか誰先生に聞くんだ?」


肝心の誰に聞くのか聞き忘れた。


「まあ鍵返す時に平野先生から聞けばいいか」


その場の機転でどうにかなるだろうと思い職員室に向かう。


「失礼します。平野先生はいらっしゃいますか?」

「いるよーー」


平野先生が手を振って自分の場所を表してくれたのでそこに向かう。


「どうだった彼女たちは」

「ちょっとばかし引き受けたことを後悔してます」

「あはは…それが普通の感想だよ」

「ですがやめる気はありません。やれるだけやってみようと思います」

「うんその意気だよ」

「それと六倉から何か生徒会に先生たちから要件はないかって聞きに行けと言われたんですが生徒会の担当って誰なんすか?」

「ああ、そんなことかい。あのーー誰か生徒会に用事がある先生はいますか?」

「ちょっ……!?」


急に平野先生が大声で職員室中に聞こえる声でその場にいた先生たち全員に聞いた。その行動に俺はあたふたする。というか恥ずかしい。先生たちは全員首を横に振り自分たちの作業に戻る。


「ないみたいだね」

「いや急に大声出すしないやってんですか!?」

「だってこの方が手っ取り早いでしょう?」


この人は…!ほんとどこか天然というかなんというか……!


「てか生徒会の担当はいないんですか?」

「いないよ?」

「え?」

「生徒会は校内ではほぼ完全な自治組織だからね。学校側の関係は最低限なんだ。だから担当の先生はいないんだ」

「それでいいんですか?」

「いままでそれでうまくいってたからね」


言われてみればこれまで生徒会の不祥事とか何も聞いたことがないな。それに最低でも現生徒会長があの一条先輩だからな。失敗とかめちゃくちゃ無関係そうだしな。


「まあ一応理解はしました。それとあの教室?の鍵返しにきたんですけど」

「それは僕がしまっとくから」


俺は平野先生に鍵を渡す。


「確かに預かった。明日から頑張ってね。それじゃあ気を付けて」

「失礼いたしました」


俺は職員室からでる。


ドンガラガッシャンーー!!


そのすぐ後職員室から物凄くでかい音がした。


「平野先生大丈夫ですか!!」

「…………」


あの人、教師以前に人として大丈夫か……?

だが俺は無視して家に帰る。

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