第2話 七姫

昼休みに理事長からの依頼を受けてその場は解散となった。

そして放課後、俺は理事長に言われた通り3階の一番奥の教室に向かった。


「ここほんとに教室か?」


言われた場所と思われるとこに来たがあまりにも教室と言うには異様過ぎる。

まずは扉だ。普通の教室ならスライド式のやつだがこの教室?はザ・扉って感じの扉なのと、あと廊下側に窓がなく、雰囲気も近寄るなって感じが半端ない。


「だが入らないわけにはいかないよな」


依頼を受けたからには流石に顔も合わせずにいかないわけにはいかない。気合を入れ直して扉をノックする。


「鷹宮です」

「入っていいわよ」


中から許可が出たので俺はゆくっり扉を開ける。

重いなこの扉!?

学校に設置するには明らかにおかしい重さを扉から感じた。

教室に入るとそこは学校とは思えない別世界だった。

教室2,3部屋分の大きさの部屋に赤いカーペットが敷かれ、ところどころに調度品があり、それぞれのスペースを主張するかのような7つの机が存在する。

そしてそこに鎮座する7人の美少女。


「来たわね」


目の前の一際大きな机に腰を掛ける一条先輩。

俺は今日からこの7人の世話をするのか。


「じゃあまずは正座」

「……え?」


一条先輩から放たれた初手の言葉に俺は戸惑う。なぜ俺が正座を?


「早く正座しなさい」


一条先輩は笑みを浮かべ再度俺に告げた。

だが俺はなぜ初対面の人達の前で正座をしなくちゃいけないのかわからなかった。


「いや、なぜいきなり正座を?」

「ん?なぜって頭が高いのよ」

「はい?」


頭が高いってあの女王様とかがよく言う定番のアレか?


「だから言ってるでしょ?頭が高いのよ。あなたは私をなんだと思ってるの?私は一条グループの令嬢よ。それをわかってる?」


そんなことは知ってる。一条グループは国内では電気メーカーとし地位を確立もをし、更に他にも食品、ITと幅広く現在もその勢力を拡大させ海外の会社とも太い繋がりも持つ一流企業。そして一条先輩はその一条グループのご令嬢だ。


「いや、だからなぜ俺は正座を」

「何度も言わせないで」

「……!?」


明らかに雰囲気が変わった、先程まで当たり前のことをと思っている箱入りお嬢様だったのに、突然まるで獅子のような、格の差思い知らされるかのような圧を感じだ。そして一条先輩がこちらを睨みつけるような鋭い眼光を向ける。

俺は仕方なしにその場に正座をする。


「いい子ね♪」


一条先輩は満足そうに自分の席に座った。

一条彩花、その一流企業の令嬢と言う地位とそのカリスマ性とこの傲慢と言える性格から学園では彼女のことを皆『獅子姫』と呼ぶ。


「あははは!いい子に言うこと聞いちゃって先輩はプライドとかないんですか~~?」


右奥から聞こえる小馬鹿にしてくるような煽り口調でそう言ってくる制服を着崩し男を誘うような際どい格好をしてる少女。


「何か言ったらどうですかセンパ~~イ?」


小悪魔の様にこちらの目を胸に、そして腿に向けさせようと強調するこのメス餓鬼は二宮雫にのみやしずく。そのまだ未発達な体ながら幾万もの男を釘付けにしてきた魔性のメス餓鬼。ジリジリとその魅惑に付け込まれ、ハマったら逃げ出せないことからついた異名は『蠍姫』。


「雫さ、そんなことしなくていいからとっと終わらせよ。アタシ今日バイトあるから早く帰りたいんだけど?」


二宮の真反対かた聞こえる愚痴。そこには二宮と同じく制服を着崩しているが二宮ほどではなく。ちょうどいいぐらいに焼けた肌にいろんなアクセサリーを身に着けスマホをいじるギャル。


「遅刻して怒られるのアタシなんだから早くしてよね」


彼女の名前は三秋千尋みあきちとせ。女性専門用紙の専属モデルとして活動しており特に女子中高生から高い人気を得ている現役モデルだ。その整った容姿とスタイルで他のモデルからの人気をも奪い取るように今地位を確立し、他のモデルを食ってると表現することから『狐姫』と呼ばれている。


「そこうるさい。集中できない」


二宮の一つ手前の机のパソコンからジャージの袖は飛び出していた。


「でも千尋の意見には賛成。僕も締切あるから早く終わりたい以上」


パソコンの横から身長の丈に合わないジャージを着て顔を一瞬見せてきた美少女。

彼女の名前は四乃原涼しのはらすず。小説家、画家、音楽家としてその才能を開花させ様々なコンクリートや賞を獲得した才媛。その想像力と手先の器用さ。そしてそのマイペースさから『熊姫』と呼ばれている。


「あたしも今日ソフト部の手伝いあるからなるはやで行かなくちゃいけないんだけど」


気まずいそうながら三秋の手前から聞こえてくる元気の良い大きい声。三秋以上に焼けた肌に発育の良いスポーティーな体つき。


「あ、鷹宮っちもお久だね」


笑顔でこちらに声をかけてくる彼女は五十嵐梨華いがらしりか。万能なスポーツセンスを持ち、特定の部活には所属していないが多くの部活に貢献し、様々なスポーツの賞を獲得してきた運動の才媛。決して諦めず、他の選手に食らいつくことから『蛇姫』と言われている。


「ねえ早く始めないさいよ!」


四乃原の手前の机から聞こえるイライラとした声。腕を組み明らかに機嫌の悪そうな彼女。


「どうせ時間の無駄なんだから!」


彼女の名前は六倉楓ろくそうかえで。生徒会会計を務め、文武両道を体現するように勉学も運動も上位の成績を誇る秀才。だが常にイライラして暴言を吐き孤立していることから『狼姫』と呼ばれている。


「六倉はいつもイライラしてるな。それだと余計なエネルギーを消耗するだけだ」


五十嵐の手前の席から冷静な発言がとんできた。そこには眼鏡を掛け片手で本を読みもう片方の手でベーコンを食べる幼女がいた。


「そんなんだからいつもダイエットがどうだかと嘆くのだ」


身長130ちょいの低身長に母性がくすぐられるその可愛らしい容姿を持ちながら常に何かを食べている彼女の名前は七星瑠璃ななほしるり。彼女の持つ情報量はパソコンとも比較できるとされ、計算スピードは将来はかのジョン・フォン・ノイマンに追いつく可能性もあると言われる。いつも何かを口にして、自分の知りたいことはとことん調べ、解明しようとするその行動から『猪姫』と呼ばれる。


「はいはいそこまで。私も忙しい身なの。とっと終わらせましょう」


一条先輩が手を叩きこの場を鎮める。

そして一条先輩が俺の前に来て足を止める。


「そういういことでこれから私たちのサポートよろしくね。鷹宮君」


何がどういうことかさっぱりだ。だがこれだけは分かる。俺は今、この依頼を受けたことを後悔していると。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る