第20話 新しい王と勇者の道
ミヤマオ城内は、勝利に酔いしれていた。城内に
謁見の間には、騎士団長、国王親衛隊長や、その他ボダリア国の
やがて、エディットと由衣が謁見の間に入って来る。二人は、俺とリーエルの変わり果てた姿を見て、驚きの表情を一瞬したように見えた。そして、エディットは玉座に座った。
「予言の勇者達と特務騎士、宮廷魔導士のお陰で暗黒教祖なる者と魔人の野望を打ち砕き、国は守られた。
エディットは、俺達の活躍を
「皆様、
女王補佐官である由衣がそう叫び声を上げると、謁見の間は静まり返った。
「本日この場において私は、王の座を従兄のラピーチに譲る」
エディットは、険しい表情でそう発表した。決意の固さが顔に表れているのだろう。
特務騎士の英雄が王になるのだ。誰一人として、異を唱える者は無いようだ。
エディットは、立ち上がり玉座の横に立ちラピーチの方を見た。
「ラピーチ、玉座に座って」
エディットの言葉に頷くラピーチ。そして、彼は玉座に座った。
「皆の者、聴いての通りだ。今より俺が王である。王となったからには、国の繁栄と民の幸せの為に力を尽くすつもりだ。ボダリア国を最高の国にする。だが、これだけは、覚えておくのだ。国の危機を救った王は、前女王のエディットであると!」
「ははあっ!」
ラピーチ王が熱く語ると、一同は、声を上げて頭を下げた……。
それから、謁見の間から一同が去り、俺とラピーチ王だけとなった。
「エディットは、国王相談役となってもらい、リンを大臣に、由衣を副大臣にするつもりだ」
ラピーチ王は俺に語った。皆、国の要職に就くんだな。普通の国なら権力者達が怒り狂う人事だが……。まぁ、リンが大臣なら大丈夫だろう。
「なぁ、蓮輔。相談なんだが、俺と共にこの国を治めてくれないか? 特別職を用意するぜ」
ラピーチ王は、真剣な眼差しで俺に願いを言った。俺は、驚きはしなかった。そうなる気がしていたからだ。俺の気持ちは決まっていた。
「ラピーチ、いや、ラピーチ王よ。この城から東に向かい友が死んだ。南に向かった時は、友は狼になる病となり離れて行った。そして、東に向かい我が身が老いた……。俺の居た世界で、聖人がその運命への道に目覚める前に、城の門を出て東で老人、南で病人、西で死者に出会った。最後に北門を出て出家者に出会う。そして出家の道に志したという伝説がある。俺は、出家をするつもりは無いが、北に向かえば自分の生きる道を見つけられる気がするんだ」
俺は、ラピーチ王に気持ちを話した。王は、静かに聞いてくれた。
「わかった。それなら、北の山に俺の別荘がある。その屋敷をお前に与えよう。そこで暮らすがいい。見つかるといいな、蓮輔の生きる道」
「ああ。ありがとう」
ラピーチ王は俺に手を差し出した。俺は、ラピーチ王と固い握手を交わした。それから、王はナンギーナ村を豊かに創生すると話してくれた。良かった。ナンギーナも幸せに暮らせる村になりそうだ。
握手をする事で王の心の温もりが俺へと伝わった。ラピーチ王なら、この国の民をいつも笑顔で暮らせる世に導いてくれると信じている。
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