第11話 どんな趣味だよ
山頂に近い場所に辺境伯の城が
「さてと、この城門をどう通るかだな。リンの魔法で吹っ飛ばすか?」
ラピーチが荒っぽい提案をする。ヤクザの出入りの感じだな。そう思いながら城門にもたれかかった。すると城門が開いたのだ。突然の思ってもない出来事に俺は、うわっ! と声を出して驚いた。
「開きやがったぜ。不用心だな」
「心配しなくても、こんな所に好き好んで入る人いないわよ」
ラピーチの言葉にリンが冷静に答えた。それを見たラピーチ以外が
城門の中に入ると、城内への入り口の前の左右に石の土台に載った二体の石像が見える。その石像は、顔が人間で体が
「うわぁ。可愛いー!」
美姫が石像を指さして叫んだ。俺は思わず、こけそうになった。うひゃぁ、どんな趣味だよ。思えば俺は、美姫の趣味とか何も知らなかったんだよなぁ……。
「そうだな。あんなペットを飼いたいよなぁ、美姫」
ラピーチが笑いながら美姫に言った。ラピーチよ、自分に嘘をついちゃいけないよ。その笑いは、面白がっているだろ? 俺もそんなことを思いながら微笑し、歩んで行く。
城内への入口まであと少しの距離に来た。すると、ガタガタと石像が
石像は、バタバタと羽を羽ばたかせだす。俺は、立ち止まった。
「やばそうだぞ。皆、気を付けろ。ラ、ラピーチ、捕まえたら? ペットにするんだろ?」
俺がたじろぎながら、ラピーチに提案する。ラピーチからは、先ほどまでの余裕の雰囲気が感じられない。打って変わって、ギョッとした表情だった。
「気持ち悪い、いるか!」
「えーっ!」
ラピーチの叫びに、美姫が顔を
「向かって来るわよ!」
リーエルが叫んだ。その直後にあの二体の石像が俺達に突っ込んで来る。俺達は、それをしゃがんでかわした。リーエルが透かさず弓を構えた。
「美姫、ごめんね。倒すわよ」
「き、気にしないで。凶暴なの嫌いよぉ」
美姫にお
「だめだわ! 硬い、刺さらないわ! 動き出しても石は、石のままだったかぁ」
リーエルが残念そうな声を出した。しかし、俺の武器はこれしかないんだ。俺はバスタードソードを抜いた。ラピーチも背中のグレートソードを両手で持った。その俺達にもう一体が向かって来る。
掛け声を上げて、俺が石像に切り付ける。その後にラピーチが剣を頭上に振り上げ構えた。
「うおりゃぁぁぁ!」
いかにも気合の入った感じの声で叫んだラピーチが、剣を石像に
「駄目だ、効かない」
ラピーチも
リーエルが左手を天にかざしたのが目に入る。そして、彼女は全員に対して、
「聖なる力よ、私達を守りたまえ、出でよ! バリード!」
リーエルが、そう叫ぶと時の指輪が光輝き出した。そして、リーエルを中心として
「頭の中で呪文を唱えるわ。私が合図をしたら、魔法での防御を解除して」
そう言いリンが小さな杖を両手で握った。そして、右手で杖を持ち、空に舞い上がった石像に向けて構えた。
「今よ、リーエル!」
リンの合図でリーエルが左手を下ろした。すると金色の光は消えた。
「行きなさい、ファイヤースワロー! ファイヤースワロー!」
リンが叫ぶと杖から、光る赤玉が二つ発射された。光る赤玉の一個は、一体の石像に直撃した。ドカーンと爆音がして、石像は粉々に飛び散った。俺は、思わず歓喜の声を上げて喜ぶ。だが、もう一体の石像は、直線上に居なかったので、命中せずにこちらに向かって来ようと狙っているかの
それを見た美姫が恐怖に耐えられなかったようだ。悲鳴を上げた。しかし、リンは反対に落ち着いていた。
「大丈夫よ。ファイヤースワローは、獲物を逃さないわ」
リンのいう通り、光る赤玉はUターンして石像を追尾し始めた。ドカーンと爆音が再び鳴り響き、最後の石像も粉々の
「ドアーラ」
そう言い、リンが杖を城内への入り口のドアに当てた。すると、ドアが瞬間的に光り輝き開いた。どうやら
「お邪魔しまーす」
俺は何気なく、そう言い城内に入った。中に入ると広いロビーのような感じだ。中央に上に行く階段と地下へ続く階段が見える。皆が俺の後に続き中に入って来た。
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました」
突然に男性の声がした。俺が後ろの皆に気を取られた瞬間に現れたようだ。その声の主は、
「予言の勇者様達と特務部隊のお二人様、我が
そう言った執事の眼光の鋭さに俺は、彼があの狼男であると直感で感じ取った。
「先生と犬養は、無事なのか!」
今一番知りたいことを俺は叫んでいた。
「
執事は淡々とそう言った。二人とも取りあえずは、大丈夫のようだな。犬養も命が無事なら何とかなるかもしれない。もう戻れないなんて、信じないぞ。そう自分に言い聞かせて、気を抜いた。そしたら、何かに呼ばれてる様な気がした。
「行かなければ……」
俺は、呟いて階段の方へ歩いて行き、執事に近づいた。
「どうぞ、ご自分の思うがままに」
執事がそう
「蓮輔! どうした? トイレか? そうか、大きい方か!」
ラピーチが俺に向かって叫んでいたが、構わずに階段を駆け上がる。思えば、猿ヤンがこんな感じになったな。これが、運命に引っ張られるってことなのか? そんなことを考えながら階段を上っていくのであった。
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