第32話 大会前の試合3
ディフェンスで再開する。
相手は竹内先輩が危なげなくボールを運び、僕を若干気にしつつも周りを見て、いつも通りのガードの立ち回りをしている。
そして、動く。
相手チームの大木先輩が前川先生にスクリーンをかけに行く。
前川先生は完全にスクリーンに引っかかったので「スイッチ!」と言い、マークを変える。
中山先輩が逆サイドに展開して行くのを追いかける形で千葉先輩がついて行く。
中山先輩は悠々とパスを貰い、構わずそのままシュートに行く。
千葉先輩が遅れてついてきて届きはしないもののシュートを阻止しに行く為に全力でジャンプする。
「ナイスチェックです!」
スパンっ!
必死のディフェンスも虚しく当然の様に3ポイントが入る。
うちはチームは6点取っているが今の3ポイントで得点は6対5になった。
3ポイントはやはり入ると強烈である。
エンドからパスを貰い前を見る。
さすが!
もう龍也が前を走ってる。
星野先輩がついているが構わずパスをだす。
大きくだしたパスはピンポイントでターゲットである龍也の前に落ちる様に絶妙な加減で調節する。
キャッチした龍也は上手く星野先輩に体を寄せてタイミングをずらしてシュートを決めた。
このエセ速攻っぽい攻め方はバスケっぽくて好きなんだよな。
相手チームはすぐに攻めてくる。
そして、また前川先生にスクリーンをかけに行く。
しかも、今度はダブルで。
前川先生は右にも左にも行けない状況ですぐにスイッチと声を上げる。
ただ、スイッチする人が2人いるので躊躇ってしまった。
その隙をついて、中山先輩は逆サイドに流れてフリーでパスを受け取った。
ゆったりとしたシュートモーションで射つ。
射った瞬間に入ったと分かった。
キレイなシュートフォームとは言えないが独特な雰囲気がある。
あと、正確に入るシュートは毎日のように射っている証。
バスケのシュートは1日にしてならず。
シュートは反復練習でしか上手くならない。
射った分だけ入る様になる。
普通に尊敬するよ。
試合の方は今のスリーポイントで同点になる。
なるほど、確かにあのスリーポイントは厄介だな。
前川先生が警戒するのは納得する。
ボールを運びながら考える。
次はどう攻めるか。
千葉先輩はずっとあたふたしてる。論外。
ポール(北野)先輩は飯田先輩に上手く抑えられてる。キツそうだ。
前川先生は攻める気無さそう。却下。
最後の龍也の方を見てみると、自身満々でボールをよこせと手招きする。
おいおい、大した自信だな。
相手は2こ上の先輩だぞ。
身長は向こうが上、速さはほぼ互角。
本当に大丈夫なのか?
星野先輩も挑発にのってパスをカットせずボールを見逃す。
龍也にボールが入る。
1対1。
フェイントを交え、ドリブルで切れ込む。
やはり速さはほぼ互角。
星野先輩も辛うじてついて行く。
だが、龍也は水泳で鍛えられた体幹によって軸が全然ブレない。
構わずレイアップシュートに行く龍也。
阻止しようと思いきり体を当ててくる星野先輩。
ファール確定で止めにきた。
そのまま空中でも体が当たる。
これはもう普通にファールだな。
しかし、龍也は空中でもバランスが崩れず、そのままゴールを決めてしまう。
「今のはファールだな。バスケットカウントにワンスロー」
前川先生がジャッジをしてくれる。
おいおい、てか上級生相手に全然怯んでないやん。
それどころかファール貰いにいって、3点プレイをもぎ取りやがったよ。
僕も水泳やっとけば良かったかなぁ。
いやいや、ゴールデンエイジはボールコントロールに全振りするって決めたんだ。
やり切ったとは思ってるし!後悔してないし!今からでも体幹は鍛えられるし!
試合の方は龍也がフリースローを決め、再び3点差。
ただ、今ノリに乗ってる中山先輩のスリーポイントは簡単には止められないだろう。
なのでこの3点差はあって無いようなもの。
次のディフェンスは大事にしたい。
竹内先輩はある程度離してても大丈夫だと信じて僕は味方のカバーに行こう。
それでもボールを持ってたらつかないといけないけどね。
さっきまでと同様に大木先輩が前川先生にスクリーンをかけにくる。
3度もやられまいとスイッチがスムーズにいくように千葉先輩が早めに中山先輩をチェックにいく。
その瞬間を狙われる。
竹内先輩が絶妙なパスを繰り出す。
お手本のようなピック&ロール。
外、外と攻めて意識が外に向いたところを突かれた。
大木先輩が中でパスを貰うとそのままシュートに行く。
ポール(北野)先輩がカバーにいき、シュートを弾こうと手を出す。
大木先輩はそこから1つドリブルをついてポール(北野)先輩をかわす。
そのままレイアップシュートに持ちこむ。
フリーでのシュートで誰もが入ったと思った時、タイミングバッチリで龍也がブロックショットに行く。
「取った!」
ブロックショットの瞬間、大木先輩はボールを持ち替えて横にパスをだす。
待っていたのは星野先輩。
ここだ!
竹内先輩をフリーにするのは少しリスクだったけど、ゴール下フリーで受け取らせるよりマシ。
読みがバッチリハマって相手のパスが取れるかと思ったが、大木先輩のパスが鋭すぎて弾いてしまった。
「ちくしょう!」
ボールはラインを割り、スタメンチームのボールになった。
先輩方もなかなか強い。
一進一退の攻防は続く。
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