第31話 大会前の試合2
ジャンプボールでゲームが始まる。
相手チームの飯田先輩は背もそこそこ高くバランスが良いタイプの選手。
一方、こちらのチームの北野先輩は身長全振り、技術より高さ重視のごりごりのセンターである。
ジャンプボールはこっちが有利……と思いきや、結構ギリギリだよ。
ただ、ちゃんと僕にボールを落としてくれた。
キャッチする前に周囲の確認はしてる。
1人すでに走ってるやつがいるのを視野の隅で確認してキャッチと同時にパスをぶっ放す!
ズドン!
ゴール下に一直線に放たれたパスが通る。
キャッチしたのはもちろん龍也。
このワンプレイで1ゴールをもぎ取る。
先輩達の目の色が変わるのが分かった。
やっと、本気になってくれたかな?
「マジか!結構やるじゃねーか!」
「おい!切り替えるぞ!」
「分かってるよ!」
などと、言いながらゲームが再開する。
エンドから再開。
ボールを運ぶのは竹内先輩。
見て分かるくらい、塩系のイケメン。
そして、ボールコントロールも抜群。
バスケセンスもある。
モテること間違いない!
リア充爆発しろ!
と、脳内で宣いつつ。
ディフェンスをするんですけど……今まで(前世も含めて)会ったことのないほど読めない相手ではある。
ボールコントロールが良いので余計に逆を突かれると言うか。
自由奔放。全てに余裕があるバスケをする人だなぁと。
ただ、常に抜きにくる態勢ではあるので油断はならないです。
前川先生は中山先輩にべったり付いてる。
中山先輩は噂じゃ、めちゃくちゃ3ポイントが入るとか。
前川先生のあの警戒も仕方ないか。
反対サイドの星野先輩と龍也のマッチングも少し面白い。
どっちがホントに足が早いかここで決着がつけるのも面白いなw
ポール(北野)先輩のとこもセンターとしての対応なら良い勝負ができそうである。
問題は大木先輩と千葉先輩とこの能力のミスマッチだな。
あきらかに大木先輩の方が上手い。
千葉先輩は確か中学からやり始めたって聞いたな。
そうすると、まだ1年ちょっとしかバスケやってないんだもんな。
仕方ないよね。
僕がカバーするか?
と、一瞬考えを濁らせた瞬間。
顔の横を掠めてボールが横切る。
千葉先輩がマークを外されてフリーになった大木先輩にパスが通る。
ポール(北野)先輩はカバーが間に合わず、大木先輩がゴール下を決める。
くっ!しくじった!
結構屈辱ではあるんだよね。今のパス。
僕の油断だ。
次はもっと警戒しなくちゃ。
「ドンマイ!分かっていると思うが竹内は上手いぞ。ストリートバスケを小さい頃からやってたらしいからな」
おお!ストバスかぁ!なるほど、自由な感じはそれなんだね。
「はい!切り替えます」
楽しいけど冷静な気持ちを忘れるな。
ふぅ……集中しよう。
相手は年上。
精神年齢はこちらが上でも体格差は向こうが上。
……誰が小さいおじさんじゃ!
1人ボケ1人ツッコミはいいから!
いかんいかん!
集中しろ集中!
チラリと前川先生を見る。
あまり動こうとしない。
僕に任せるつもりか。いいだろう。
フロントチェンジを繰り返し、タイミングを測る。
竹内先輩は落ち着いて僕の様子をうかがっている。
良いディフェンスだと思う。
抜かれない間合いを保ち、いつでも反応できる様に集中力を高め、周りの状況も把握する為に顔を上げて対応する。
ポッと出の1年相手に油断しない立ち振る舞いも完璧。
ただ、まだちゃんと僕の能力を把握しきれてない感は否めない。
その間合いは正解じゃあない。
あともう一歩、いや半歩は間合いを空けなきゃだね。
この間合いならフェイントはいらない。
そして、身長差を逆に利用する。
一瞬で相手より低く、前にドリブルをつく。
相手が1歩踏み込んで僕について来ようとした時には僕は2歩進んでいる。
相手が2歩目に移行した時には3歩目に達し、実質置き去りにする。
僕がフリーなので前は人数有利。
いきなり抜かれた事で虚をつかれたのか相手ディフェンスのヘルプも来ない。
この展開はいつも通りだが、10センチ以上高いセンターがカバーに来るかもしれないので警戒してフリースローライン付近からステップをし、早めにスクープショットを放つ。
幼稚園の頃から始めて10年近く練習してるシュート。
感覚は手に取るように分かる。
しかも、どフリー。
ボールが空中に放たれる。
意識しないでも無回転で射てる様になっている。
ゴールに吸い込まれる。
「ナイスシュート!凄いな!」
「相変わらず、真守は凄いな!」
「萩原くん、ナイスですよ」
「凄っ!」
「ありがと!この調子でどんどん攻めよう!パス回していくからね!常に集中!ボールから目を切らないでね!」
「「「「おう!!」」」」
こっちのチームは今のプレイで盛り上がりをみせる。
逆に相手は少し困惑して声が出ないでいる。
この勢いを大事にしたい。
今組んでいるチームは皆んなそれぞれ良くやっている。
ただ、やはり千葉先輩のとこが穴である事は間違いない。
竹内先輩をフリーにするのは危ないが千葉先輩のとこにある程度はカバーに行かないとならない。
大木先輩は僕より身長も高く、ジャンプ力もバカみたいにある。
飛ばれたら僕にはどーしようもない。
飛ばれる前が勝負である。
大木先輩が面を取りパスを貰う。
千葉先輩が大木先輩の背中越しに対面する。
パワードリブルでゴールに詰める。
ゴール下まで行ったら大木先輩の勝ち。
千葉先輩も必死に堪える。
うん!頑張ってるよ!この頑張りに応えたい。
予想以上に耐えている千葉先輩に対して焦ってシュートに行ってしまう大木先輩。
その瞬間を狙う。
どんなにジャンプ力が高くても、アリウープ以外はボールを持ってからジャンプするのだから。
ドリブル終わりのジャンプする前の、その瞬間、その低い位置の領域は僕のもの。
ボールを両手で持った瞬間にバチンとボールを弾く!
「タツ!走れ!!」
ルーズボールを掬い上げスタートを切った龍也に大きなパスをだす。
悠々とレイアップを決め戻って来てハイタッチで出迎える。
「ナイスラン!相変わらず、早いね!」
「なんとなく真守がボール持つ瞬間が分かるって言うか、なんにせよ走ればボール貰えるから走るw」
なんじゃそりゃw
ん?先輩達の雰囲気さらに変わった?
そっか、面白い!僕ももっと全力でやりたい!
まだまだ行くぞ!
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