第26話 社会人バスケ3
いそいそと体育館に入ってきた人物が口を開く。
「いやー、遅くなっちゃったよー。まだ、やってるよね?」
葉月のお父さんが親しげに話す。
「おう!時間も時間だし、今やってるゲームが終わったらあと1回で終わりにしよーかなって思ってるけど」
「マジか!わかった。急いで支度するよ。幸いさっき、少しだけど走ったからアップ無しでも大丈夫だと思うし」
「了解!しかし、驚くなよー。今日はとんでもないのがいるからな」
「え!?何がだよ。驚かすなよな」
「ま、やってみたら分かるよ。最後はお前も入るしマンツーマンするかw」
「おう?ありがと。」
「じゃ、準備できたら声かけてくれ」
「わかった」
味方のセンターらしき人がリバウンドをきっちり取り、パスを貰いにサイドに開く。
相手のディフェンスがそこに反応し、僕にパスを入れさせないように動く。
サイドに開く動きをフェイントにし、バックターンのステップをかまして逆の動きをとり、相手の裏を見事にかく。
走りながら前にパスを出してもらうように手で合図する。
少し大きなパスを片手で弾き、そのままドリブルに移行する。
現状は前を走る駿君とセーフティで戻ったディフェンス。2対1。
駿君にパスをして駿君がシュートモーションに入る。
ディフェンスもドンピシャでシュートを止めに行く。
ディフェンスの反応をギリギリまで待ってから上手いパスで僕にリターンがくる。
「ナイスパース!」
完全フリーでランニングシュートを決める。
ブー!
残り時間がゼロになり、ブザーが鳴る。
一旦ゲームが終わり、小休憩に入る。
僕はまだまだ体力があるので使ってないゴールでシューティングを始める。
向こうで葉月のお父さんが休憩してるメンツに話しかけてる。
「みんな〜、次のゲームが今日の最後になると思う。なのでやってない人に出てもらいたいので、鈴木さんすいませんけど交代してもらっていいですか?」
「ん?俺?あー良いよ。それじゃ、審判でもやろうかな」
「すいません、よろしくお願いします」
「最後のゲームは前川さんもきたことだし、マンツーマンにしますか。真守君は前川さんに付いてもらってもいい?」
「はい!えっと後から来たさっきの人ですよね?」
「そうそう!前川さんは上手いから勉強になるんじゃないかな」
「分かりました!駿君、ボール運びは僕に任せてもらえるかな?やばそうな時のフォローだけよろしくお願いします」
「え?いいの?了解!僕は2番的な立ち位置で良いわけね」
「はい!ではやりましょう!」
ジャンケンで相手ボールからスタートになりました。
前川さんがボールを運ぶ。
え?いや、普通に凄いの一言。基本の塊。
僕がディフェンスについてるんだけど、基本は前を見る。
でも、僕(ディフェンス)がボールにちょっかい出しに行くと、すぐアームブロックで防ぎヤバくなったらシールドリブル。
ボールが取れそうもない。ポイントガードの鏡だなぁ。
あと、ものすごく身体が強い。
体幹?なのかな。
少し当たったくらいじゃ、びくともしない。
そうこうしてるうちにボールが運ばれてしまった。
前川さんがトップの位置でボールをキープしてると、他のオフェンスがスクリーンをしにくる。
スクリーン(壁)を気にしつつ、ピッタリとディフェンスにつく。
抜かせる気はない。
前川さんはピッタリとくっつく僕に対してシールドリブル気味にゆっくりとスクリーンの方にドリブルをついていく。
スクリーンをしている壁の人に当たるが強引にディフェンスをしようとする。
その瞬間。
前川さんが動く。
スクリーンに気を取られ、尚且つ緩急をつけた動きに一瞬対応できず、1テンポ遅れてしまう。
スクリナーはピック&ロールの動きをして中にキレる。
そこに生まれるスペース。
すでに1テンポ遅れてついていってる僕に対して急な動きでスペースに侵入する。
完全に置き去りにされる。
ゴール下のディフェンスの人がヘルプに立ちはだかる。
そこにすかさずフリーになったセンターへヒョイとパスを出す。
ゴール下で、どフリーになったセンターは難なくシュートを決める。
「ナイスパス、ナイスシュート」
「2人ともナイス〜!」
うん!ナイスプレーだ。
別に僕のディフェンスが特段悪いわけでもなく、少し…ほんの少しのほつれを切り裂いてきたわけだ。
しかもリスクもなく。まぁ、敢えて言うなら時間を少しかけてしまったことは小さなリスクなのかとは思うけど、時間内にシュートを打っているのでそれくらいは全然範疇だと思う。
勉強になる!
エンドからボールを駿君に貰う。
おほっ!オールコートからバチバチに当たってくる。
ちなみに僕が前川さんみたいにシールドリブルで着実にボール運びをできるかって言うと正直難しい。
今の僕は身長が160前後くらいで、前川さんは多分175くらいあると思う。
15センチの体格差はデカくて、シールドリブルでブロックしていても相手の手が届いてしまう。
前世からずっと体格差と闘ってきた僕にとってここは登竜門みたいなものかも。
“ドリブルこそチビの生きる道”
某人気漫画の人気キャラクターの言葉。
その通りで素直に称賛する。
前世はドリブルスキルも無かったのである意味、地獄だったのかな?
逆にドリブルスキルがなくても充分にバスケができる証明にはなったか。
だがしかし!今世はもう10年はドリブルスキルを磨いてきた。
肌で感じた格上感。
この相手は試すにはちょうどいい。
前を向く。
敢えて、すぐにドリブルをつく。
単純にドリブルで突破してみたい。
フロントチェンジで様子を見つつ、左に行くそぶりを見せる。
前川さんはすぐ反応する。
どうやら僕に右に行かせたいらしい。
それなら、逆に右に行きますか。
レッグスルーで左に行くフェイントかける。
前川さんはまたすぐに反応する。
そこから、フロントチェンジをして一気に右に加速する。
だが、前川さんはしっかりついてくる。
ライン際(ぎわ)によせてドリブルを止めるつもりなのだろう。
予測した通り、ライン際(ぎわ)までくるとドリブルの進行方向を潰してきた。
進行方向に前川さんが入ってきた瞬間、一瞬体が接触する。
その瞬間にバックターンを行い、前川さんを背中越しに感じつつかわす。
ただ、さすが前川さん。
かわされてもギリギリついてくる。
だが、ボールは運べた。
駿君に目で合図してスクリーンをかけにきてもらう。
前川さんが壁(スクリーン)にあたり、僕が中に侵入しようとする。
駿君のマークマンは葉月で中を警戒している。
前川さんも僕にそのままついてくる。
逆サイドのスリーポイントラインにフリーで構えた駿君を視野の片隅に捉えた。
普通にパスをしたら前川さん相手には厳しいとおもう。
ドリブルで1フェイク入れて、距離を詰める。
前川さんがドリブルに警戒した瞬間、ビハインドザバックパスで駿君にだす。
「なっ!?」
どフリーの駿君は落ち着いてゆっくりシュートをする。
ボールは綺麗に放物線を描く。
パシュ…
「ナイスシュート!ナイスパス!」
「2人ともナイスプレーだ!」
「ナイスです!今の決めきれるのは凄いよ!駿君!」
「へへっ!パスが良かったから。真守くん、どんどんパスちょうだい!」
「了解!皆さんもどんどんパス回すんで走ってくださいね!」
「おう!」
前川さんとのゲームはまだまだ終わらない。
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