第22話 仮入部
仮入部期間中。
全然バスケができず、イライラと不満と鬱憤とイライラがたまりにたまり、思わず某バスケ漫画の名台詞「バスケがしたいです」が喉から出てきそうになっている今日この頃の僕。
そこにリングがあるのにどーしてシュートを打てない?
まだまだ練習したい事は山ほどあるのに…
む〜っと机に突っ伏していると声がかかる。
「どーしたの?マモ〜。だいぶ溜まってるねー。大丈夫ー?」
葉月が心配そうに声をかけてきた。
「大丈夫ではない。部活ってこんなにバスケができないとは思わなかった。まだ仮入部だけども」
「だよねー。まぁ、私は仮入部だけども結構色々やらせてもらってるけど」
「え!?何故?ホワイ?僕、全然やらせてもらえないのに。せっかく中学でリング高くなったから新しいことも練習できると思ったのに」
「私から見てもマモは群を抜いてるよ。小学生の頃やりあった田中さんと上原さん瀬谷さん、全員高校で月刊バスケに載ってたじゃない。あの人たちと互角以上にやりあったタツ君とマモは誇って良いし、自信は持ってくれないとね」
「自信はあるよ。常に。それだけの練習はしてきてるんだし」
「私はそんなあなた達に小学生の頃から鍛えられて、そんじょそこらの女子には負けませんwアピールしなくても普通にバスケして、ドリブルしてれば(いつもだったら取られてる)あなた上手いねって言ってもらえてるし」
「ズルい!僕もバスケしたい!ジャンプシュートも練習したいし、これから本格的にスリーポイントも打っていきたいし。一週間、長い!!」
「分かった!ならさ、今日の夜デートしない?」
「はぁ!?」
「あ…そ、そう言う意味ではなくて。私の父さんがたまに仲間集めて夜バスケしてるんだけど、わたしも参加してるからさ。お兄ちゃんもいるよ」
「お兄ちゃんって、駿君?」
「そうだよー」
「うわ!懐かしい!駿君元気にしてる?全然会ってないもんねー。バスケは続けてるんだね」
「うん、少し行き詰まってる感はあるんだけど。頑張ってバスケは続けてるよ」
「そっかー、葉月のお父さんの仲間ってみんな社会人なの?」
「そーだねー。みんな昔頑張ってやってたバスケが忘れられない人達だね」
「社会人バスケかぁ、良いねぇ。懐かしいなぁ…」
「は?懐かしい?何、マモ社会人の大会かなんかにでたことあったの?」
は!?やば!うっかり前世の記憶思い出して余計なこと口に出してたよ。
「え!?違う違う!この間、ちょこっと見た時あっただけだよ」
「この間、ちょこっと見た時あっただけだよ?それで懐かしいになるの?マモ〜ちょっと何言ってるかわかんないんですけど?」
「う、うん。そーだね。あ!そー言えばタツは?タツは行かないの?」
「…タツ君?聞いてないよ。タツ君はどっかの誰かさんみたく暇そうじゃなかったからね」
「どーせ、僕は暇そうですよ。てか、タツを誘わないのは意外だね。てっきり、タツのことは誘ってるもんだと思ったけど」
「はぁ!?なんでそうなるわけ?タツ君を誘わないのが意外ってどーして?」
「え?だって、普通に考えて葉月はタツのことが好きなんじゃないの?」
「マモ、それマジで言ってる?マジで言ってるなら私もマジで言うよ。私はタツ君じゃない別に好きな人がいるの!」
「いるんだ!」
「いるよ!?」
「誰!?」
「言うか!言うわけないでしょ」
「チッ」
「チッじゃないし!言わないし!」
「幼馴染なんだし、言ってもいいじゃん」
「言わない。絶対言わない。これは幼馴染とか関係ないの!私の沽券に関わる事なの。それよりも行くの?行かないの?どっちなの?」
「むー、行かせていただきます」
「よろしい。じゃ、お父さんに伝えておくね。時間は今日の夜7時に東スポーツセンターに集合で。遅れないでよ〜」
「遅れないよ!僕はバスケに関しては妥協しないから。なんなら仮入部の練習終わったらすぐに行くけど」
「いらないいらない。ちゃんと7時に来てください。あっ!チャイム鳴った。それじゃーね」
「あいよ」
そんなこんなで放課後です。
仮入部かったるいなぁ…どうせすぐ練習追い出されちゃうしなぁ。
龍也も今日は他に顔出すって言ってたし。
せめてジャンプシュートまでやりたいんだけどなぁ。
まぁでも、スクエアパスだけでも良い練習にはなるからな。
結構みんな、アップのつもりで惰性でやっちゃうけど本気でやればパスの練習にはもってこいなんだよな。
それとこの練習だけでもだいたいのバスケの腕が分かるから今後このチームで試合することになったら情報としては欲しいところだよね。
うん、見た感じキャプテンと呼ばれてる人はスピードが桁外れに早い。この人にパスを出すのは難しい反面パスを通すことができればだいたいフリーになりそうだよね。
副キャプテンの人は第一印象が地味。
お!あの人は全身バネみたいな人だね。
あっちの人はボールコントロールが抜群だなぁ。
あのでかい人は…不器用そうだ。それに遅い。根っからのセンターって感じ。
とまぁ、見てると色々と情報を収集できるので無駄にはならないか。
スクエアパスの練習も終わり、ランシューの練習も過ぎ、もー帰るのかと思ってたら、キャプテンが「今日はまだ時間あるから1年もジャンプシュート参加していけ!」と言ったのだ。
うほー!ナイスキャプテン!と心の中で思いつつ、ジャンプシュートに参加させてもらった。
「1年はまず見ててくれ。理解したなら入ってくれ」
と言うのでまずは見てみる。
各々がボールを持ってトップとコーナーに別れる。
ここで言うトップとはスリーポイントラインからゴールを見て90°に位置する場所。攻める時にポイントガードなんかがよくいる場所でもある。
逆にコーナーはスリーポイントラインからゴールを見て0°の位置になる。攻める時はその時々で誰がいるとかはないんだけどね。中を攻めた時にこの場所で待ってるとフリーになりやすい重要な場所。あとはセンターも面取りをしきれない時にひらいてもらう時も使うかな。なので誰でも使うんだよね。攻められる側はここにボールがくると守りづらいしね。
で、二手に分かれたらどちらからでも45°にパスを出してそれに合わせてシュートをする。シュートをしたらパスを出した側に並んで次を待つ。そんな感じかね。
理解したので列に並ぶ。
順番がきてパスを出す。
もらった相手は僕のパスにキレイにミートしてシュートを決める。
次は僕がシュートを打つ番。
う゛…パスを出してくれる相手は不器用そうだと思ったでかい人。
パスをもらう、うん、やはり変なとこにパスを出される。
だがしかし!無理矢理、自分のシュートモーションに持ち込む。
世の中、パスが超絶上手い人ばかりではないのは承知の上。
下手なパスをもらう、これも勉強。
これを理解した上での少し態勢を崩してのミートからのシュート。
当然外れる。
パスを出した人に「どんまい」と言われて腹わた煮えくりかえりそうになったけど、お前が下手なパス出したんだろ!とは言えず無言で会釈する。
この時!新たな目標が爆誕した!
《あの下手なパスでも高確率でゴールを決めれるシュートを身につける》
あのパスを受けたら上手いパスでシュートを入れるのは当然なんだなぁ…って心から思った。
でもさ。よく考えたらさ、どんだけ上手いパスを出せる人でも、例えば体勢が崩れてたり、人間なのだから一瞬の判断も誤ったりでパスが雑になったりする場面だって無くはないのかなって思ったりもしまして。
それを踏まえてのこの練習。次にくるパスは…うわ、良いパス!
自然なミートからの……こういう良いパスだされると前世を自然と思い出す。
前世のシュートフォームで打つシュートはバスケットのリングをキレイに通過して、リングには触れずに網の擦れる音だけを綺麗に残す…
パシュ…
ぞくっとする。この音はシューターにとってのご褒美です。
ただ、練習なのですぐに他の人のボールがなだれ込む。
うん!勉強になった!忘れてたことを思い出させてくれた。
満足!
そー思っていると「時間が来てしまったなぁ。1年、悪いが帰る時間だ!」
そー言われて帰り支度をする自分がいた…(悲)
まぁ、この後もバスケするけどねw
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