第17話 ヒロイン
どーも、僕です。
先週の練習試合の次の日、疲れからか体がガタガタになっていて起きたのは昼過ぎでした。
その日1日はとてもではないが動けなかったのでバスケを始めてから、初めてボールを触らずに過ごしました。
試合自体はとても良い経験になったのではないかと思いますね。
毎日ずーっとボールに触り、練習をこなしてきただけあって、ボールコントロールはかなり上達したのではないかと自分でも思ってみたり。
試合で色々できて、確認できたのも良かったなぁ。
まだまだ、我がバスケ人生は始まったばかりなのでこれからも楽しく継続していく所存でございます。
そんなこんなで今日も今日とて、バスケをしようと公園に出向いているでございます。
いつも通り、ハンドリングからのボールタッチの確認。
軽くボール一個でドリブル練習。うん!調子は良さそうだ。
今はメインに2ボールドリブルをしてドリブル強化実施中。
ドリブルに関しては試合で結構感触が良かったのでこのまま続けていけば前世よりも上手くなることは間違いないだろう。
続ける、大事。
まだ、真夏で暑いので汗を拭き、水分補給をしている時。
ふと視線を感じ、辺りをキョロキョロ見回すと、木の陰からジーッと睨んでくる奴がいた。
おもくそにこっちを凝視してくるのですぐ分かった。
えーと…どうしようかな。
んーて言うか、今再確認できたけど、僕の視野、前世よりめっちゃ上がっててビックリしてる。
試合の時もそうだったけど、視野の広さと判断力。
それが知らないうちに鍛えられてることに驚いた。
多分、ドリブル練習時のオフハンドとルックアップの意識を高くしていたことによるものだと思う。
前世では視野は狭い方だったしなぁ。
正直チビだったのでボール運びを常にやらされていまして、ドリブルが特に上手い訳でもなく、ボールハンドリングも悪く、ドリブルが下手なので当たり前ですけど自信もないのですぐ下を見る。
下と言うか、手元を見てしまうので一瞬の判断がいつも遅く、間に合わない。
相手ディフェンスの裏へのパスとか、速攻の時の前に送る大きいパスとか。
そういう、いつも周りを常に見てないとだせないパスができてなくて。
練習しても練習してもできなくて。
できないことはできないと諦めて…できることをもっと練習しようと。
その結果、ディフェンスとシュートに特化したプレイスタイルになってしまった。
ディフェンスは頑張るしかないので頑張るけど、シュートの方はドリブルとパスが上手くないので自分で打開ができないのだ。
待ち一辺倒になってしまい、味方頼りになってしまう立ち回りしかできなくて、味方の負担は当然大きくなる。
挽回するためにディフェンスをより一生懸命無駄にやってしまい、最後にはガス欠…ってパターンがよくあって、そのせいで試合に出る時間が減ってしまったのだ。
味方のガードとセンターが相手を上振れば、僕もフリーでパスをもらう機会が増えるので良いんだけどね。
って、そうだった!今はあのめっちゃ睨んでくる奴のことだったね。
どうしようかな。
まぁ、気になって練習にならないから声かけてみるか。
「ねぇ、きみ。見てないでバスケ一緒にやらない?」
「ふぇっ!?えっ?あのっ…は、はい!やりまふ!」
あ、噛んだ。
心の中で苦笑しつつ、ボールを渡した。
ボールを持って、何か考えごとをしているのか、ぶつぶつ言っている。
よく聞き取れないのでとりあえず待ってみることにした。
「あの…バ、バスケやりたいです。お、教えてください」
ペコリと頭を下げてお願いしてきた。
「うん!いいよ!一緒にやろうよ」
頭を上げて、にっこり笑ったその子を改めて見ると美少年がそこにはいた。
髪は短めで、龍也とは違った可愛い系の美少年だ。
ちょっとドキッとしたのは内緒だ。
「とりあえず、ボールを地面についてみてよ。この公園、ゴールが無いからシュートはできないんだけどね」
「はい!」
と、元気に返事をしてボールを地面ににつきはじめる。
「ドリブル頑張って上手くなれば、こんなふうに股を通したり、体の後ろで交互につけたりするから。色んなことができてくるともっと楽しくなるよね」
「わ、私にもできるようになる?」
「続けていればね」
「そっか、私にもできるんだ…」
その日は家に帰る時間までその子とバスケを楽しんだ。
帰りぎわに
「あの…なんでもない、今日はありがとうございました」
そう言って駆け出して行ってしまった。
「うん!またね」
何か言いたそうだったけど、まいっか。
次の日はあの子は来ず、1人で公園で練習していた。
最近は龍也が色んな習い事で忙しいらしく、ここのところは1人で練習している。
なんだかんだで1人でやるより誰かいたほうが楽しいよね。
昨日は最後の方は教えるばっかりでほとんど練習しなかったけど、楽しかったのは間違いないし。
おっと!もうこんな時間か。
1回家に帰って支度しなくちゃ。
夕方の体育館はなんか好き。
体育館来るとウキウキするよね。
バッシュに履き替え、準備していると中川コーチから「集合!」の声がかかった。
なんだろ?と思っていると、中川コーチの隣に誰かいる。
あれ?昨日の子?とか思っていると
「今日は新たに仲間になる奴がいる!葉月。」
「はい。田村葉月(たむらはづき)と言います。この間の練習試合を見て私もバスケがやりたくなりました。皆さん、よろしくお願いします!」
「葉月は駿の妹だから、みんな仲良くしてやってくれ!それじゃ練習始めるぞ!」
へー駿君の妹なのか…妹!?女の子だったのか…通りで可愛いはずだ。
男の子だと思ってたから、ビックリした。
練習前のランニング中に葉月が近づいて来て
「これからよろしくお願いしますね。真守君。」
一瞬、目が合って、笑いながら舌を出して、ベーっとしていた。
うっ!不覚にもおじさん、ドキッとしてしまった。
「よ、よろしく」
心の中を悟られないようにそう言うのが精一杯だった。
さ、さぁバスケに集中しよう!
練習も終わり、龍也と帰り支度をしていると駿君と葉月が近寄ってきた。
「真守、龍也、妹のことよろしくね。2人と同い年だから仲良くしてほしい」
「同い年かぁ。こちらこそよろしくですよ」
「よろしく、僕は龍也と言います。龍也でいいよ」
「龍也君と真守君だね。よろしくお願いします」
「あ、そうそう!葉月なんだけど、この間の練習試合で真守と龍也のプレイでめちゃくちゃ興奮したらしくて。そのあと、ずっと私もバスケしたいって言ってて。教えてあげてくれると嬉しいな」
「僕はともかく、真守は教えるの上手いから真守に教えてもらうといいよ」
「そうなんだ。じゃあ、真守君よろしくね。また、公園でも教えてくれると嬉しいな」
「公園?お前ら初対面じゃないの?」
「うん。昨日公園でバスケしてたらめっちゃ見てくる人がいて、それが葉月ちゃんだったってこと。んで、バスケに興味あるのかなと思って声かけて一緒にバスケしたって話です」
「へー。じゃあ、その公園でもよろしくな。真守」
「はい。僕は夏休み中はほぼほぼ昼間は公園でバスケしてるんで、来れば一緒にバスケしますよ」
「夏休み中ずっとって。どんだけバスケ馬鹿なんだよw」
「バスケ馬鹿…良い響きだね」
「そうですか(棒)てか、そろそろ帰ろうよ」
「そうだね。それじゃまたね」
「うん!またね」
そのまま、田村兄妹とは別れて、龍也と帰る。
帰りの道中、龍也が
「この間の試合…僕、通用してたかな?まだまだやれることとかあったんじゃないかって。どう思う?」
「まだまだ、やれると思ってたほうがこの先ももっと上手くなれると思うよ。あの時点では、あれが限界だったとしても今はあの時より上手くなれると思ってやればどんどん成長していけるとおもうよ」
「そうだね。あの時ダメでも次はできるようになってれば良いんだね」
「そうそう!まだまだ人生は長いんだからきらくに行こうよ」
「真守は時々おじさんくさいねw」
「う、うるさいなぁ」
「ははは。それじゃね!」
「おう!またな!」
龍也の後ろ姿を見つつ僕も帰るのであった。
さ、明日からもバスケ頑張りますかな。
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