第16話  練習試合6

試合が動いた。

先に試合を動かしたのは相手チームだった。

湊君がスクリーンをかけられて、相手チームのフリーになった選手がシュートにいく。

焦ってカバーにいった蓮君がシュートを止めようとしてファールをしてしまった。

無情にもボールはゴールに入ってしまう。


「バスケットカウント!ワンスロー!」


審判のコールが響く。


「うぉー!ナイスプレイ!ナイスファーールー!」

向こうさん、めっちゃ盛り上がってんなぁ。


「蓮君、どんまい。ナイスファイトです。あれはどちらにしてもいかなきゃならないからね」

「そうそう!次ね、次。切り替えよう!」

「うん!次はファール貰わないように頑張る!」


フリースローも決められて、4点ビハインド。

ここまできたら勝ちたい!

勝ちたいのだが、この体、まだ幼いのもあってもう体力の限界なんだよね。

そうなると、あとは根性!ではなく、要所要所で集中力を高めて、高いポテンシャルをだし、強弱をつければ体力の温存にもなる。と思う。

確かに最初、試合に出た時は緊張で集中力もあまりなかったけど、今はだいぶ高まっている。

残り52秒。集中しろ。


エンドからパスをもらう。

あのガードがマークについてくる。

疲れた体に鞭を打つようにドリブルを開始する。

ふぅー…時間が無い。

一気に行くぞ!

緩急をつけて、フェイク無しで一気に行った。

フェイクしないのが逆にフェイクになり、ディフェンスを一瞬で抜き去った。

「なっ!?」

敵のゴール前で下がっていた2人がマークについてくる。

味方を見て、パスフェイクをし、1人をかわす。

もう1人はそのままついてくる。

構わず、シュート体勢に入る。

「射たすか!」

ドンピシャ!でシュートをブロックしにきた相手を空中でかわす。

体勢を崩しながらも、そのままシュートする。


ゴン、パサッ。


あぶねーリングに当たったけど、なんとか入ったな。

「ナイスシュートー!!ディフェンスだ!当たれ〜!」

切り替えろ!ディフェンス!


残り40秒。2点差。

相手の上手いガードがボールをもつ。

くそっ!疲労が蓄積していることで一歩が出ない。

見かねた龍也がダブルチームでつくことを選択した。

龍也がついてくれたことで一瞬周りを見る余裕が生まれた。

体は疲れているが頭は冴えている。

龍也とダブルチームでついているので少しは楽である。

龍也は頑張ってついてくれている。

ただ、相手もやはり上手い。

このまま、キープされると時間だけが過ぎていくことになる。

残り30秒。

龍也が痺れを切らして、ボールをカットしに行ってしまった。

相手のガードもさすがと言ったところか、僕を警戒しつつ、龍也の飛び出しに反応してバックザビハインドチェンジでキレイにかわす。

瞬間的に1対1になったので僕のことも抜きにくる。

踏ん張ってカバーする僕。

ちぃっと小さな舌打ちをする相手。

そこで抜かれた龍也が後ろからボールを弾く。

「くっ!」

「ナイス!」

ルーズボールになり、僕と相手のガードは競り合ってボールをとりに行く。

だが、体格で勝る相手のほうがボールをキープしてしまう。

「くそ〜、あと少しだったのに!」

悔しがる僕をよそに相手ガードは前にボールをだす。

これが通ってしまい、2対1の状況になってしまった。

シュートクロックが迫っていて、残り1秒でシュートを放つ。

これが入ると厳しい状況になる。

両チーム、祈る思いでボールの行方を見守る。

「入れー!」

「外れてくれ!」

ボールはリングに吸いこま…


ゴンっ!


「リバウンド!」

ほ〜!外れてくれた。

リバウンドは湊君がとってくれて僕にパスを渡してくれる。

残り時間13秒。2点差。

これが最後の攻撃だろう。

ドリブルを開始すると同時にディフェンスの圧が強くなる。

シュートまでいかせないってくらい気合いの入ったディフェンスだ。

残り10秒、時間が無い。

フロントチェンジからレッグスルーで相手との距離が少し開く。


残り9秒。

相手が詰めてくる。

そのタイミングでバックザビハインドチェンジをしてかわそうとする。


残り8秒。

相手も必死についてくる。

緩急をつける為、いったん止まる。


残り7秒。

相手も僕に合わせて動きを止める。


残り6秒。

相手が動きを止めた瞬間、一気に抜き去る。


残り5秒。

そのまま、ドリブルでゴール前に。


残り4秒。

頭がいつになく冴えてる。集中できてるのか?周りがスローに見えてくる。

湊君が龍也のマークマンにスクリーンをかけてるのが見えた。


残り3秒。

龍也がフリーになり、走り込む。

僕はそれに合わせて、バックドア気味にバウンズパスを放つ。


残り2秒。

龍也にボールが渡る。


残り1秒。

龍也がレイアップシュートを射つ。


0秒。

ブーーーーーーー!

試合終了のブザーが鳴ると同時にゴールに吸い込まれて行った。


「バスケットカウント!」

得点のジェスチャーをしながら、審判の声が響き渡る。


「うわー!!ナイスプレイ!!」

「ナイスシュート!ナイスパス!」


は〜…どうにか同点にできたなぁ。

それにしても疲れた〜。

今日はもう走れないよ。

「真守、おつかれ」

「龍也、おつかれ。最後ナイスシュート!」

「真守こそナイスパスだったぞ。よく見えてたな」

「アレね、僕も自分でも思ったよ。よく見えたなってw」



「ねぇねぇ、君たち。めちゃくちゃ上手いねぇ。名前なんて言うの?」

龍也と話してると相手チームのあの上手いガードの人が話しかけて来た。

「おい!和哉(かずや)!人に名前聞く前にまずは自分から名乗れよ!」

「ん?あーそうか。ごめんごめん。俺は上原和哉(うえはらかずや)。こっちの2人は田中真斗(たなかまさと)と瀬谷昌宏(せやまさひろ)ね。で、君たちの名前は?」

「えっとー、僕が萩原真守(はぎわらまもる)でこっちのが三浦龍也(みうらたつや)です」

「おー!真守に龍也ね。俺のことは普通に和哉って呼んでよ。こっちの2人はなんでもいいや」

「おい!なんでもいいやじゃねーだろ!俺のことは真斗って呼んでくれよ。こっちのでかい奴は昌宏な」

「はい!皆さん、めちゃくちゃ上手かったですね!僕もークタクタですよ」

「いやいや!真守と龍也の方がやばいだろ!だって絶対、歳下だよな?」

「多分。僕と龍也、2人とも幼稚園の年少です」

「嘘だろ!?俺と5歳も違うのかよ!ありえない!」

「俺は逆に良かったかも。同年代なら上に行った時に戦わなくちゃならなかったからね。正直、中学高校でやりたくないからね」

「確かに!そう考えると良かったかも。まぁ何にしてもこれから、よろしくな!」

「はい!」


「おーい真守〜、龍也〜!集合しろ〜!」

「はーい。湊君が呼んでるんで、皆さんではまたです」

「おう!またな!」


はー、今日はめちゃくちゃ濃い経験を積んだ気がするよ。

ほんとは今日もう1試合やる予定だったのだけど、両チームとも予想以上に疲労してるんじゃ無いかと言うことになりまして本日はお開きになりました。

まぁ何にしても僕の弱点的なものも少し見えたからこれからはそれと付き合っていこうかなと思う。


それにしても試合楽しかったなぁ。

さぁ今日も帰ったらストレッチやって早めに寝まーす。

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