第15話  練習試合5

第4クォーターが始まる。

予想通り、最初のメンバーが出てきた。

あのガードは要注意だな。

「樹君、あのガードは僕が付かせてね」

「分かったよ。真守の方が上手いし、悔しいけど任せる。僕にも少しはパスちょうだいね」

「うん!フリーになったらどんどんパス送るから勝とうね!」


こちらからのボールで始まる。

樹君からパスを受ける。

よし、相手のあのガードも僕についてきたな。

一瞬周りを見る。

仲間の位置を把握して、ドリブルに移行する。

フロントチェンジからレッグスルー、バックチェンジして一気に抜きに行くと見せかけて、ビハインドザバックチェンジからもう1回バックロールターンで逆をつく。

見透かされてる?

こんだけ技を駆使しても相手ディフェンダーは余裕を持って僕に付く。

怪訝に思っていると、

「君、上手いね。俺、本気で潰しにいかないとかな」

勝手に話かけてきて、プレッシャーも増してくる。


プレッシャーがキツい中、龍也の動きが一瞬視えた。


試合直前の相手チームの矢のようなパス、よろしく。

僕のありったけの今できるパスを放った。


試合開始の時、あのパス取れるのヤバない?って思ったけど、うちにもいた。

僕のこのパスも大概ヤバいやつだと自覚しつつ。

龍也は平然とキャッチしてワンフェイク入れてバックシュートを決めていた。


「龍也、ナイスシュート!どんどんパス回すからな!常に僕を見ててよ」

「うん。もっとパス欲しい」

「よーし!ディフェンス1本止めるよー」

「おう!」


よし!ディフェンスだ。

相手はあのガードだ。

ボール運びもあのガードがする。

と、思っていたらパスを戻して前に走り出す。

ボール運びしないのか、と思ってマークについていく。

するとローポストで面をとり始めた。

なるほど。なかなかエグいことしてくるな。

僕の今の身長は110cm無いくらいで、相手のガードは130cmくらいはあるんじゃなかろうか。

20cmくらい開きがあり、このミスマッチを活かして攻めてくるのは当たり前っちゃあ、当たり前である。

僕でも身長差があればそうする。

簡単にローポストにボールが入る。

相手はボールをキープしながら周りをみる。

敵ながら落ち着いている。


次の瞬間。スピンムーブ。


一瞬にして僕の前から消えて、ゴール下でカバーにきた湊君のマークマンにパスを出し、簡単にシュートを入れられてしまう。

ちくしょう。


「ごめん。油断した」

「どんまい!」

「次。次」


エンドからパスをもらい、ドリブルしながら考える。

さっきのはヤバい。

目の前から一瞬でも目に追えなくなるとか、相手との能力の差…歳の差はあるにせよ、少し上方修正せんと。

もしかしたら、僕もついていくのだけに精一杯になるかも。

ただ、攻めに関してはまだ通用してるのでこれから射ち合いになるかもしれない。


ボールキープ。

相変わらず、圧がすごい。

だが、奪われるわけにはいかない。

相手の動きに注意しつつ、周りを見る。

みんなしつこいマークに苦戦しているようだ。


ただ1人を除いて。


龍也がマークを外してパスを要求してくる。

そこにピンポイントでパスをだす。


パスを貰うと同時にもう、シュート体勢に入っている。

キレイなシュートフォーム。

放たれるボール。

ボールはゴールに一直線に向かっていく。

パサッ。

一瞬の間。


「うわー!ナイスシュート!!」


おいおい!龍也、完璧にジャンプシュートをモノにしとるじゃん。

あんなキレイなジャンプシュート、前世でも見たことないかも。

まぁ何にしても「ナイスシュート!」

「いやいや、パスが良かったからでしょ。ただ、シュート打つだけで良かったし」


よし!切り替えだ。ディフェンス。

また、同じパターンで相手は攻めてきた。

屈辱ではあるが、このパターンは見た!

僕を少しみくびりすぎてないか?

とりあえず、ローポストに入れさす。


僕は前世もセンターはやったことないのでローポストでのせめぎ合いは試合ではやったことがないのだが、練習では結構やっている。

僕が身長163cmに対して、相手は身長190cm代。

どう見ても勝ち目はないが意外と守れる。

まずはターンを簡単にはさせない。

ターンなんて簡単にできるだろって、思うかもしれないが相手の軸足を見極めて、まずバックターンをさせない。

バックターンは相手にもリスクが付きまとう。

後ろ向きであまり見えない状況だと、気軽にターンをするとチャージングをとられる可能性もでてくる。

ので、バックターンが簡単にできないなら、フロントターンの方に意識を集中して警戒をすることができる。

ターンができないなら、シュートができないので次にとる行動はパスかドリブルになる。

パスなら戻すしかないので、それならそれでいい。

じゃあ、攻めるならドリブルで突破するしかない。

その瞬間を狙う。

ドリブルをする瞬間、ボールを下げなければならない時がくるはず。

相手の動きを集中して警戒をしていればその瞬間にボールをカットするチャンスも出てくるはずだ。


先ほどと違い、ターンができないことに焦りが見える。

うん、パスの選択は無さそうだ。

業を煮やし、ドリブルをしようとした瞬間。


バチンっ!


低い身長をさらに低い姿勢で下からボールを叩(はた)いた。

「何っ!?」

叩(はた)いたボールは前に転がり、それに向けて走りだす。

ルーズボールをとって、前を見れば樹君と龍也が走っている。

相手チームは1人しか戻れていない。

3対1だ。

そのままドリブルで真ん中を走る。

右に龍也、左に樹君。

右の龍也にパスをだす。

ふりをしてディフェンスが反応したのでビハインドザバックパスで逆にいる樹君へパスを送った。

パスをもらった樹君も面食らった顔をしてたけど、焦りながらもちゃんとシュートを決めてくれた。


「ナイッシュー!」

「ナイスパス!」

「さぁ、1点差だぞ!」

「ディフェンスもー1本とっちゃおうぜ!」


相手は先ほどと違い、あの上手いガードがボール運びをするようだ。

慎重にマークについているが、簡単に上を通されてしまう。

相手の選手はノーマークになり気持ち良くシュートを決めた。


ここから3分間、お互いのチームが点を取り合う展開をみせた。

こちらが1点差にすれば、すぐさま相手も3点差に戻す。

相手が3点差に戻せば、こちらも1点差に返す。


そして、残り1分になり試合が動く。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る