第13話 練習試合3
第3クォーターが始まる。
相手ボールからのスタートだ。
まずはディフェンスからね。おっけー。
こんだけ点差開いてると前からあたらないと追いつけないだろう。
僕がマークしてるの子は20cmくらい、僕よりでかい。
前世では常に相手がデカくて当たり前だったんだ。
バスケット選手の身長だけが能力の違いではない!
ディフェンスは身長ではなく、長年培ってきた経験が1番だってことを見せてやる。
マークを甘くして僕のマークマンにボールが入るようにする。
前からあたるにしても、抜かれては意味がない。
少し相手との距離を保ち、一歩で抜かれないようにする。
そして、ライン側(ぎわ)まで追い込むためにエサを用意する。
エサとはライン側(ぎわ)に追い込むまで、ドリブルを誘導するためにマークのつき方を気持ち内側に寄せてディフェンスをする。ドリブルをする側から考えると片方によられているのでライン側(ぎわ)に近い方がスペースが空いてるふうに見える。見えると言うか、実際空いてる。
そこのスペースにドリブルさせて、ライン側(ぎわ)に近づくほど相手との距離を詰めていく。
すると、あら不思議。
ライン側(ぎわ)と僕のダブルチームの出来上がり。
この時点で僕の勝ち。
ボールが止まった相手にプレッシャーを与える。
相手は苦し紛れのパスを出す。
雑に放たれたパスを陸君がカットする。そのまま、ノーマークで点を取る。
「ナイスシュート!どんどんプレッシャーかけていくよー!」
「おう!」
さて、問題は次である。
相手も次は警戒するはずなので対応が難しくなるからだ。
また、マークを甘くしてボールを入れさせる。
先ほどと同じ距離感で対峙する。
相手は少し嫌がっているのが分かる。
ただ、相手もボールは運ばなくちゃならない。
相手は僕から見て右、すなわちスペースが空いてない方向にフェイクを入れる。
僕は軽く反応する。
フェイクではなく本当に抜きに来た時に行かれてしまうかもしれないので警戒の意味で反応する。
反応はするが相手がドリブルをつかないのでまだ動かない。
ここで相手はフェイクとは反対側、スペースが空いてる方にズバッと抜きに来た!
一気に来たのでサイドステップでは間に合わない。
僕は自分の一歩目をクロスステップを踏み、相手のスピードに対応する。
よし!ついていけた!
相手は僕を抜けず、そのまま、ライン側(ぎわ)まで追いやられる。
先ほどと同じでライン側(ぎわ)まで追い詰めたのでプレッシャーを与える。
さっきはパスを出したが、カットされたので余計にパスが出しづらい。
ボールを持って5秒がたってしまいオーバータイムを審判から告げられる。
「ナイスディフェンス!」
「おいおい、あのちっちゃい奴。小さいくせになかなか動きが良いな」
うるせぃ!小さくて悪かったな!こちとら毎日大きくなるために好き嫌いしないで食べてるつもりだよ!絶対、おっきくなってやっからな。
心の声でそう叫んだ。
サイドからスローインで再開。
駿君からボールをもらう。
お?あっぶね!
相手のマークマンめちゃくちゃプレッシャーかけてきたぞ。
さっきの2つのプレイは悔しかったんだろーな。
分かるよ。
だが、しかし。
これは勝負なのだよ。
情けはかけられない。
こっちは負けてるし。
相手の圧が強いので、相手に対して背中を向ける。
ターンのフェイク入れて、逆を抜きにいく。
相手もちゃんと対応してくる。
うん!この子、ディフェンス上手いな。
だが、しかし。
右にドリブルをかまして、ディフェンスがついてきて僕の進行方向を塞いだ瞬間、バックロールターン(左足を軸にバックターンで相手を背中越しに感じつつ、右足をクルっと前に出して一気に抜き去る)を瞬時に決める。
フリーになって前を見る。別のディフェンダーがカバーにくる。
だが、少し遅い。
僕はすでにシュートの体勢になっており、相手のカバーより早くフローターシュートを射つ。
フワッとした無回転のシュートはゴールに吸い込まれる。
「うぉー!なんだそれー!ナイスシュートー!」
「ディフェンスー!切り替えろ〜!まだまだこっちは負けてんだからなー!」
「おう!ディフェンス1本止めていくぞ〜!」
「山田ー!山田がボール入れろ〜!桧山がボール運んでやれ〜」
向こうの監督がそう叫ぶと僕のマークマンがエンドからボールを出す。
お?僕のマークマン、山田って言うのか。山田君、よろしくね。
と、訳の分からないことを頭の中で呟きつつ、山田君をマークする。
山田君から桧山君にボールが渡り、桧山君のマークについている駿君が少しプレッシャーをかけてディフェンスする。
プレッシャーはかかるが桧山君も落ち着いてボールを運んでいる。
ダブルチームに行こうか悩んだが、僕のマークマンの山田君が前に走ったので僕もついていく。
やはり、1対1だと相手チームの方が分がある。
桧山君が陸君のマークマンにパスをする。
パスを受け取った瞬間、ノーフェイクで抜きに行こうとする。
だが、陸君もついていく。
構わず、ジャンプシュートを射ちにいく。
早い!これが入るなら、僕でも簡単にはとめられんぞ!
「スクリーンアウト!リバウンド!」
ボールはリングを弾き、落ちていく。
よし!落ちた!パスを貰いにサイドに開く。
尊君がリバウンドを取り、僕は「ヘイ、パス!」とパスを催促する。
尊君はサイドに開いた僕にパスをくれる。
「龍也〜、走れ〜!」
「もー走ってるよ」
前を確認して、ゴールに走りこんでいる龍也の前に落とすように大きくパスを出した。
あ、ちょっとミスった!少し大きくなりすぎちった。
「龍也!ごめん!少し強いかも!」
「ん?全然平気、ナイスパス」
難なくキャッチして、ノーマークでレイアップを決める。
おいおい!今の余裕で追いつくのかよ!
あいつも大概だなぁ…
「龍也、ナイスシュート」
「おう」
戻ってきた龍也と拳を突き合わせる。
「みんな!どんどんパス出すからなぁ!リバウンド取ったら走っちゃっていいよ!」
「おう」「分かった」「了解」「はい」
各々返事を返してくれる。
うん!流れは良い。
勢いを増した味方が奮闘する。
僕のマークしてる山田君がエンドからボールを出す。
桧山君がボールをもらい、駿君と対峙する。
駿君がさっきより動きが格段に良い気がする。
桧山君もちょっと嫌がっている。
たまらず、パスを出す。
陸君がそのパスをカット。
桧山君が陸君にチェックしに行く。
陸君は慌てず駿君にパスを出し、駿君がシュートを決める。
小1コンビのプレイが光る。
2人でハイタッチ。
良いぞ!4ゴール連続で決めてる。
これで41対26。
15点差ならまだわからんぞ。
と、ここで「タイムアウト!黒!」と告げられ、ベンチに戻る。
中川コーチが「よく頑張った!まずは座ってくれ。座りながら聞いてほしい」
と、一拍おいて「今日、ここで試合してる10人は良くやってると思う。負けててもめげないし、勝つために最善の行動をみんなが起こそうとしているのは見てて分かる!この試合、俺は勝ちたい!お前らはどうだ!勝ちたいか!?」
「勝ちたいです!!」
「よし、分かった」
「はい!てゆーか、勝てるんですか!?」
「うん!いいか、基本は1対1をどんどん仕掛けていけ!リバウンド取ったらすぐ走る。トランジション、つまり攻守の切り替えを早くする。あとは駿!お前がボールを運べ!他の4人を上手く使ってみろ」
ビーー!「時間になりました。始めてください」
「よし、行ってこい!」
「駿君。駿君がボール運んでくれるなら、速攻できなかった時は少し僕の動きを視野に入れてみてくれない?僕も周りの人を使って攻めてみるから。上手くいけば、フリーになる人が出てくるようになるよ」
「わ、分かった。やってみる」
さーて、相手を撹乱していきますかな。
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