第6話  ミニバス体験

水曜日になりました。

幼稚園からママと帰ってきて、手を洗い、お水を一杯飲む。

ふー、落ち着いた。

時間を見ると2時過ぎだ。

「ミニバスの無料体験は16時からだから、15時半くらいに出ていくわよ」

「はい、ママ」

少し時間があるなぁ…家用のボールでハンドリング練習でもしとくかな。

とか考えてると、ピンポーンとインターホンの音が鳴り響いた。

あ、そっか龍也が来るんだった。

「今出るよー!」

ガチャッと玄関のドアを開けるとそこには龍也が立っていた。

「こんにちはー。真守ぅー。来たよ」

「うん!龍也、こんにちは。上がってよ」

「おう」

龍也を家にあがらせてリビングに連れていく。

「真守のお母さん、こんにちは。今日はよろしくお願いします」

「あらあら、龍也君こんにちは。こちらこそよろしくね」

「龍也、麦茶でいい?」

「何でもいいよ。ありがとう」

「はい、麦茶。ってそれバッシュ!?」

「うん!父さんと母さんにバスケやりたいって言ったら、先週の週末にスポーツ用品店でボールとバッシュを買ってくれたんだ」

「うわー、いいなぁ。僕も欲しいなぁ」

「真守ー。そう言うのはパパと相談なさいね。ママよく分からないから」

「え?バッシュ買ってもらえるの?」

「必要なんでしょ?」

「うん!ありがとう!ママ」

「よかったな、真守」

「うん!」

「あら?そうこうしてるうちにもうこんな時間よ。2人とも用意はできてる?」

「僕も龍也も準備はできてるよ」

「それなら、そろそろ出発しましょう」

『はーい』


ミニバスの練習場所は南小でやっているらしい。

家(うち)からなら、歩いて15分ほどで到着する。

南小に到着して、体育館の入り口から中を見ると、そこにはバッシュに履きかえてる子やゴールにシュートしたりしてる子がいた。

その中にここの指導者であろう人が丁寧にモップ掛けをしてるのが見えた。

体育館の入り口付近で中の様子をうかがっていると、モップ掛けを終えた指導者であろう人がこちらに近づいて来た。


「こんにちは。今日、指導をする中川祐一と申します。えっと〜、真守君のお母さんですか?こっちの2人が真守君と龍也君でいいんですよね?本日の予定なんですが2人にはまずボールに慣れてもらうために対面でパスをしたり、見よう見まねでいいので他の子に倣ってドリブルからのシュートなどをしてもらいます。ではそろそろ集合なのでこちらに来てください」

「よろしくお願いします」

隣では龍也が急いでバッシュ履き替えていた。


「集合!」

その一言でみんなが集合し始めたので中川監督は喋りはじめた。

「皆さん、こんにちは。今日は皆さんより小さな友達が一緒に練習することになりました。色々教えてあげてくださいね」

「はーい」

「うん、それじゃ軽くアップから始めましょう!」


コートの周りを軽くジョグ程度で走り、そのあとストレッチか…

ストレッチはしっかりとやらないと本来のパフォーマンスが発揮されないからな。動的ストレッチをいつもより入念にやっておこう。


「次、2人1組になって対面でパス練習!」

ピィ!とホイッスルを吹いて、すぐに対面に並んでパスをし始める子供達。

なるほど、これは毎日龍也とやってるパス練習とほぼ変わらんな。

「ミートを心がけて、すぐ相手に返す」

バシッとキャッチし、すぐにきたボールを対面にいる相手に返す。

キャッチしたらすぐ返す、キャッチしたらすぐ返す。

ん?やべ!監督がめちゃくちゃ俺のほう見てるよ。少しやり過ぎたか?ちょっとパス弱めるか。

「おい!真守!いつも通りちゃんとやれ!!」

え?ご、ごめん。


「はーい!終了!次はハーフコートラインからゴールに向かってドリブルからのランニングシュートね!」

「はい!」

ランシューかぁ、いいねー。この子達の後ろに並べばいんだな。

あ、そうだ。龍也にランシューのやり方教えとくか。

「龍也、ちょっといい?次のランニングシュートは、先にやってるあの人たちみたいに走りながらそのままシュートを射つ技術で練習すれば誰でも簡単に入れられるようになるシュートなんだ。

んで、やり方なんだけど、右手で射つ時のステップが右、左でシュートって射つとやりやすいし入りやすいからやってみて。狙いはボードの内側の黒い枠ね」

「わかった、やってみる」

あ、てか先に俺からだった。

ランシューなら、前世ではしなかった…いや、できなかった、あのシュートをどうせなら練習したいなぁ。

やってみるか。


「前の子がシュートしたら、すぐ次の人ドリブル始めて!」

「はい!」

いくぞ!

ドリブルを勢いつけるために走りながら右、左と交互にボールをついていく。

ゴールが近づいてくる。

踏み込む足は右から。

右→左とステップを踏み、勢いは残しつつジャンプは気持ち真上を飛ぶ感じで、相手ディフェンダーのタイミングをずらすように手首を返さず早めに放るイメージ。

あ、外した!ちくしょー!

次は外さんぞー!できるようになるまで練習だー!

あ、龍也のシュートの番だな。

あの、少しの説明だけであんなにキレイなシュートフォームで射てるなんてな。

あいつやっぱりセンスの塊だな。

羨ましい限りだぜ。


「次、2人1組になってエンドラインからオールコートでの1対1を想定してのドリブル練習!ディフェンダーの方は手はださなくていいから、とにかくドリブルについていくこと!」

「はい!」

よし、次は俺たちだな。

「龍也、来い!」

「おう!」

俺が先にディフェンスね。

前世の俺は小さいなりにディフェンスは頑張ってたから、一応基本はできてるつもりだ。

ディフェンスは好きだし、少し本気でやってみるか。

「お、おい。真守〜ディフェンス激しすぎるよ!ドリブル前つけないよ。あ、ミスっちゃった」

あ、なんかごめん。

「次は僕のディフェンスだぞ!真守には抜かれないよ」

よし、やってやろう。

フロントチェンジで相手を揺さぶり、相手が前に出てきた瞬間、半歩前に足をだし、上半身を動かし、シフティの動きでフェイクをかけ、相手が反応したらレッグスルーで逆に抜いていく。

「うわ、真守それ上手すぎだよー」

「龍也、それは違うぞ。今のは龍也のディフェンスが悪いだけだよ。ディフェンスは基本、爪先に重心を置くんだ。かかとに体重が乗った時点で抜かれちゃうよ」

「そうかぁ、わかった。爪先ね、意識してみるよ」

お?今のアドバイスだけでついてこれるようになってるよ。

やっぱ、龍也はこの素直なとこも武器だよね。


ピィ!

笛を鳴らし「集合!」と声を上げる。

子供達が駆け足で集合してくる。

「えー、真守君と龍也君は体験教室と言うことでここで終わりになります。他の子達はこれからゲームやるから2チームに分かれておけなー」

「はーい!やったーゲームだぁ!」


「真守君のお母さん、今日はこれにて終わりになります。ありがとうございました」

「いえ、こちらこそお世話になりました、ありがとうございます」

「で、今後なんですがうちの教室でやる気があるなら事務所の方に連絡してください。手続きがありますので」

「分かりました。2人にも話し合って決めたいと思います。2人ともー帰るよー」

「ママ〜わかったよー」

「では、失礼します」

「あの、お母さん。その子たちはほんとにまだ幼稚園に通ってるんですよね?」

「ええ、もちろん。4歳で幼稚園は年少のタンポポ組みですよ」

「そ、そーですか。あの、またよろしくお願いします」

「はい、またよろしくお願いします。失礼します」


あ〜めちゃくちゃ楽しかったー。

フローターシュートはまだまだ完成にはほど遠いなぁ。

「龍也ー。体育館でゴールがあるバスケはどうだった?」

「うん!思った以上に大変だったよ。まだまだ、僕は下手くそだってわかったし、ディフェンスって難しいね。でもすごく楽しかったよ!もっといっぱいやりたいよ」

「そうだね!僕ももっとやりたい!ママ、いい?」

「そうねぇ、ママも外から見てたけど、あなた達2人とも楽しそうだったからいいんじゃないかしら」

「やったー!帰ったらパパに言わないとね。龍也も大丈夫なんでしょ?」

「大丈夫!母さんは最初から容認してくれてたから大丈夫だよ。なんせ、体験教室だってのにバッシュ買ってくれてる時点でわかるでしょ」

「確かにw」

「んじゃ、うちこっちだから。また明日なぁ」

「またねー」

「さ、帰って晩ご飯作らなくちゃねー」

「僕は風呂入らないと汗だくだよー」


そして、僕と母さんは家路に着くだった。

明日またバスケ頑張ろっと。

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