第5話 ライバル
ある日、
いつものように幼稚園が終わり、ママに許可をとって公園に赴いてバスケの練習をしていた時のこと。
逆回転をかけてボールを放り、地面にバウンドさせて、自分のところに戻ってきたボールをキャッチして、左足を軸足にしてシュートフェイクからそのまま右にドリブルしてから一歩前に出て、右手から左手にレッグスルーでボールをわたし、左にドリブルしようとしたら相手がついてきたのでキャンセルムーブを意識して、左手でバックターンをし、回転中にボールをキャッチしてシュート!
をイメージしたんだけど、左手でバックターンをしてる最中にボールがすっぽ抜けて、豪快にボールがすっ飛んでいっちゃった。
あーあ、ボール取りに行かなきゃ。
ん?あれ、誰か僕のボール持ってる?
誰だろう?
「おーい、それ僕のボールなんだけど…」
声をかけた相手は僕のことを無視して、持っているボールをずっと睨んでいた。
ぱっと見、僕より少し身長が高いかなぁくらいの男の子で10人中8、9人は美少年だって思うほど顔立ちが整っていた。
美少年は僕に気づくと
「これってバスケットボールって言うんだっけ?」
「そうだよ。僕今練習してるんだ。そのボール返してくれる?」
「いいけど。ねぇ、バスケットボールって楽しい?」
「うん!楽しいよ!上手くなればなるほど、もっと楽しくなるよ!」
「そっか…僕もやろうかな、バスケットボール」
「やるといいよ!一緒にやろうよ!」
「うん。僕、龍也(たつや)って言うんだ。君は?」
「僕は真守だよ。よろしく!」
そのあと、2人で日が暮れるまでバスケを楽しんだ。
「また、明日もあそぼーね!」
「いいよ。また明日ね〜!バイバイ!」
それから、1週間…毎日、龍也とバスケの練習をしたんだけど、本当に思った。
天才っているんだなぁと。
教えたことをスポンジが如く、すぐ吸収して次の日にはできちゃうし。
俺はドリブルの練習、頑張って頑張ってやっと形になってきたのに…龍也はすぐできちゃうし。
でも、やっぱり1人でやるより2人でやった方が楽しいのは間違いない。
あと、2人だとパスの練習ができるのは嬉しいよね。
対面でパスをするだけなんだけど、パスの種類もけっこう多い。
チェストパス、オーバーヘッドパス、ショルダーパス、バウンズパス、フックパスと色んなパスがあり、龍也とパスの練習にも勤しんだ。
チェストパスはバスケの基本中の基本のパス。
自分の胸元から、味方の胸元へボールを両手で押し出すように投げるパスである。
1番確実に安定したパスが出せるのでこのチェストパスが1番使用率が高くなる。
バウンズパスはチェストパスの姿勢でボールを1バウンドさせて味方にボールを渡す。
バウンズパスの用途は敵ディフェンダーによるパスカットがされにくいこと。
バウンズパスは基本、敵ディフェンダーにパスカットされないように敵ディフェンダーの足元をバウンドさせて味方にだすパスである。
さらに片手でバウンズパスをさせる技術もある。
普通のバウンズパスだと自分に相手ディフェンダーがついてる時、味方にパスをだす時、突き出した手の動きで読まれてカットもしくは弾かれる可能性があるので、片手でバウンズパスをディフェンダーの脇からだすとカットされにくい。右も左も使えるようになりたい。
ショルダーパスは片手で上から投げるパスで、大きく前に強いパスを出す時に用いることが多い。
動作が大きくなるため、相手ディフェンダーに読まれやすいのでフェイクを交えて使いたい。
これも右左、両方使えるようになりたい。
オーバーヘッドパスは頭の上から両手で投げるパスで、サッカーのスローインを想像してもらうと分かりやすい。
相手ディフェンダーの上を通す時に用いることが多いかな。
フックパスは相手ディフェンダーに対して後ろ…よりは少し横を向いて体の後ろから片手で自分の上を通してパスをだすイメージかな。
このパスは相手ディフェンダーと所持しているボールの間に自分を置く事によってパスの出し手を相手ディフェンダーが遮り辛くして、パスを出しやすくするものである。
当然、右手も左手も使えて当然にしたい。
ちなみに前世での俺(163センチ)はフックパスと、フックシュートとフローターシュートの間くらいのシュートを使ってでかい相手(190センチくらい)に向かって行ってました(無謀)
あーやっぱり、1年以上1人で地道にハンドリングを徹底的にしてドリブルの練習も始めてけっこう経つけど、1人でやるより2人でやる方が全然楽しいよねー。
龍也が上手いからなのもあるけど、1人でやってるとモチベーションを保つのに苦労するよ。
心はおじさんなのでその辺の子供よりは辛いことも我慢できるけど、バスケ好きだし、だから余計に楽しくやりたいよね。
今の時点での自分の強さを知るためにも試合とかもしてみたいとも思い始めてるんだよな。
…パパに頼んでお願いしてみようかなぁ。
今日の夜、聞いてみるか。
お?5時のチャイムだ!
「龍也〜そろそろ帰ろうよ」
「分かった。また明日な」
最初は無表情だったけど、今はちゃんと笑顔で挨拶してくれる。
美少年に笑顔で挨拶されたらこっちが照れてまうやないかい!
ドキドキしながら、「うん、またねー」
と別れの挨拶済ませ自宅に帰宅する。
「ただいま〜!ママ〜お願いがあるんだけど、聞いてくれる?」
「おかえり〜。あら何かしら?真守ぅ〜その前に手を洗ってきなさい!お願いはその後聞いてあげるわよ」
「ほんと!?すぐ洗ってくる!」
洗面所で手を洗い終わりすぐにリビングに戻るとニコニコしてるママが待っていた。
「ママ〜あのね…」
俺が言い終わる前にママが口を割って話してきた。
「言わなくてもだいたい分かるわよ。バスケのことでしょ?」
「え?うん、僕ねミニバスやってみたいんだ」
「ミニバスね。そーいえばパパが真守が熱心にバスケやってるからって言ってミニバスのことも調べてたわよ」
「え〜?ほんとに!?」
「多分ねー。パパが帰ってきたら、聞いてみなさいよ」
「うん!分かった〜。あ、ちなみに今日の夜ご飯は?」
「今日の夜ご飯は豚カツよ。」
「マジで!?やった〜!じゃあ先にお風呂入ってくるね〜」
「はーい」
お風呂に入っていると「ただいま〜」と聞こえた。
あ、パパが帰ってきたな。
と、思っているとガチャっとドアが開き
「真守〜俺も入るぞ〜」
とパパが入ってきた。
俺は頷いて了承の意を示した。
全身を洗い終えたパパが湯船に入ってきた。
ザバァと湯船から大量のお湯が流れ出て
「ふあ〜、気持ちいいなぁ…なぁ、真守。お前ミニバスやってみたいんだって?」
「うん」
「やりたいんだったら、やっていいぞ。パパは応援するぞ。近くに3歳から受け付けてるミニバスがあるってネットで調べたから連絡してみるか?」
「うん!あとね、僕、最近友達ができたんだけどその子も誘っていいかな?めちゃくちゃバスケ上手い子なんだよ!もっともっと上手くなるよ!パパ、良い?」
「ああ、いいぞ!じゃあ、ミニバスのクラブチームには明日連絡取ってみるから待っててな」
「お願いします!じゃあ、僕先出るね!」
ザブっと湯船から出るとすぐに体を拭きパジャマに着替えた。
そのあとは家族で夕飯を食べ、寝る前のストレッチを入念にして歯を磨き、牛乳を飲んで眠りについた。
次の日、幼稚園から帰宅後、すぐに公園に向かった。
公園にはまだ誰もいない。
仕方ないので動的ストレッチで軽く体をほぐしてハンドリングからはじめるか〜とか思っていると後ろから
「おい、真守。1人でやってないでまぜてくれよ」
「龍也〜、いいよ。ほい」
向かいあった状態でボールを龍也にパスする。
龍也もそれに倣って返してくれる。
しばらく、パスの練習をして、自然と龍也がドリブルの練習に切り替えたタイミングで話を切り出してみた。
「なぁ、龍也。僕、ミニバス始めようと思うんだけど一緒にやってみない?」
「ん?なんだよ急に。ミニバスってミニバスケって言うやつだっけ?面白いのか?」
「やってみないとわからないけど、龍也と一緒なら楽しいと思うよ」
「そうなのか?俺は今の練習だけでも楽しいけどな。段々と上手くなっていくのが自分でもよくわかるし」
「龍也。バスケットって本当は5対5で戦うスポーツなんだよ。2対2とか3対3とかも他にあるにはあるけど、基本は5対5なんだよ。戦術とか作戦とかもあるし、何よりバスケにはなくてはならないものがある」
「なくてはならないもの?」
「そう!バスケットゴールだ!龍也はまだ、シュートを知らない。(今世の俺も知らないが)シュートを入れてこそのバスケットなのだよ」
「へー、シュートかぁ。おもしろそうだね」
「うん。と言うわけで、どう?」
「いいよ。僕もやりたいな」
「決まり!じゃあ、パパに伝えとくね」
「おう、楽しみにしてるよ」
その後、夕方までバスケをして帰宅した。
家に着いて、手を洗いすぐに風呂に入って出てきたタイミングでパパが帰ってきた。
急いで服を着て、パパの元に向かった。
「パパ、どーなった!?」
「おう?真守。ただいま!ミニバスの件だろ?来週の水曜日の16時〜17時の1時間、体験入部的な感じでできることになったぞ!」
「ほんと!?やった!来週の水曜日だね?明日、龍也にも教えとこ。じゃあ、僕、早く来週が来るようにもう寝るねー。おやすみなさい」
「そうか、おやすみ。真守」
来週、楽しみだなぁ。
ゴールを使えるなら、次はレイアップ系のシュートの練習も始めてみようかなぁ。
ま、何にしても今日はもう寝よう。
おやすみなさい。
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