第26話 ビシレットダンジョン

 眩しい日差しで目が覚める。


 どのくらい休んだのだろう。


 身体も心も元気になって、モヤモヤが消えたセルティスは、ゆっくりと身体を起こす。


「ん?」


 重みを感じる。


 セルティスは驚愕した。


 ホークがベッドの上でうたた寝していた。


 セルティスの脛あたりにホークの頭がある。


(ずっと看病してたのか……)


 最初に会った時は最悪だった。


 からかってきて、何かを企むような笑顔。


 しかし、そんなホークでも、もう一度、大事な人を生き返らせたいと秘宝を探すほど一途。


 仲間思いで優しい。


 最初の印象から随分と変わった。


 セルティスは気持ちよさそうに寝ているホークを動かさない方がいいと思った。


 だから、そのままセルティスも動かず、ボーッと壁を見つめた。


 しばらくして、ホークが目を覚ます。


「??」


 まだ、寝ぼけ眼のホークは状況を掴めなかった。


 が、セルティスの姿が目に映ると、慌てて飛び起きた。


「どうした?」


 セルティスは、もの凄い勢いで飛び起きるホークを見て目を丸くした。


 ホークは動揺して、言葉が続かない。


「いや、その、俺……なんで起こしてくれなかったんだ?」


 セルティスは何もなかったかのようにあっさりと言う。


「気持ちよさそうに寝てたし、起こさないほうがいいかと」


「いや、悪い」


 ホークはうたた寝をしてたとはいえ、セルティスの膝枕で寝ていた格好だ。


 恥ずかしくなってしまった。


 セルティスはフッと笑う。


 照れるとは可愛い。ホークはセルティスの笑顔に、さらに照れた。


「もう、起きるぞ。アランとレビーが待ってる」


 ホークは照れているのを誤魔化した。


 セルティスとホークは準備を整えて、病院を出た。


 アランとレビーが待っている。アランはホークを小突いた。


「なぁ、2人の時間はどうだった?」


 ホークは焦って、何もないのに咳き込む。


「ばっ……バカか! 何もないっ!!」


 アランには簡単に想像できたのか、ニヤリとしている。


「へぇ……」


「お前なぁ」


ホークは、からかうアランにゲンコツする。


「いってぇー」


 アランは頭を痛そうにさすっている。ホークはアランを睨みつけた。


「軽くやったのに痛いわけないだろ」


 そんなやりとりに、ホークとアランが親子のような関係に見える。


「親子か? お前ら」


 レビーは目をパチクリさせながら言った。


「親子じゃないっ!」


 ホークとアランが同時に答えた。


「仲がいいな」


 レビーはニヤニヤしながら呟く。


 セルティスは、ただ、笑顔で仲間を見つめながら歩く。


 しばらく歩くと、セルティスは急に立ち止まった。


 「おっ?!」


 ホークはセルティスの背中にぶつかる。


「ホーク、何、動揺してんだよ」


 レビーが呆れていた。


「べ……別に動揺なんかしてない」


 ホークはそう言うと、周りを見渡した。


 セルティスが立ち止まった理由がわかった。


 大きな穴がある。


 ここに秘宝の魔石があるのかもしれない。


 ホークは大きな呼吸をひとつする。


 ビシレットダンジョンと呼ばれる洞窟に秘宝の魔石があると聞いた。


 これがビシレットダンジョン。


 ホークは、生き返らせることのできるものだったらと期待をしながら、入っていく。


「ホーク、焦るなって」


 セルティスは呼び止めるが、先にどんどんんでしまう。


 セルティスはアランとレビーに合図した。


 セルティスたちもホークを追って、ビシレットダンジョンへと入っていく。

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