第25話 秘宝! 魔石
セルティスは仲間たちに囲まれて感動してしまった。
仲間と呼べる人は、ほとんどいなかった。
ずっと1人でいた時期が長かったから。
あることをきっかけに、ひとりでどうにしようと考えるようになり、人に頼ることもしなくなってしまった。
そんなセルティスをホーク、アラン、レビーが助けてくれている。
仲間というのは、こういうことをいうんだっけ?と思うほど、セルティスは大事なものを忘れていた。
仲間と協力していくことで強くなっていく。
辛さも悲しみも分かち合える。励まされる。
こうやってボロボロになった心を立て直すこともできる。
仲間がいるって素晴らしいことで、とても大事なこと。
改めてセルティスは思い知らされたような気がした。
「ありがとう。あたし、もっと信じる。皆を」
セルティスはそう言うと、自然と涙が出てきた。
「泣くなよ、らしくないなぁ」
ホークはそう言って、涙を拭ってやる。
ホークは笑顔だ。
セルティスは良い仲間に出会ってなんて幸せなのだろうと思った。
かつて、このような仲間がいただろうか。
それに、ホークは守ると言ってくれた。
恥かしかったけれど嬉かった。
肩の荷が下りたような感覚があってホッとしたのかもしれない。
「あれ…? 俺ら泣かしちゃったのか…?」
アランは心配そうにセルティスの顔を覗き込んだ。
レビーは笑っている。
「ホークに救われたな。ホークももっと気持ち伝えればいいんだけどな」
ホークはレビーを横目で見る。
「どういう意味だよ、それ」
セルティスは笑顔を見せた。
「感動して泣いた。皆の優しさと助けてくれたことに」
ホークはセルティスの笑顔を見てドキッとした。
可愛くて美しい。
初めて本当の笑顔を見た。
何があったか、ホークにはわからない。
でも、いつのまにか笑顔を失くしてしまったのだと感じた。
「とりあえず、今日は安静な」
ホークがきっぱりと言った。
セルティスは大丈夫と言おうとしていたが、ここはホークの言う通りに素直に従う。
「わかった…本当に皆、ありがとう」
アランとレビーは同時に答えた。
「当然!」
「仲間だしな」
「これからも俺らはセルティスについていく」
アランが代表して言った。
「だな。セルティスはひとりでなんでもしようとするから、ちゃんと見張らないと」
レビーはそう言うと、アランに合図した。アランもすぐにわかったため、病室を出て行く。
「じゃ、あとはお2人の時間な」
アランはそんなことを言って、笑っている。
「あっ……」
セルティスとホークは同時に何か言いかけたが、その時には2人きりになっていた。
セルティスもホークも2人きりになった途端に黙り込んでしまった。
しばらく沈黙していたが、ホークが口を開いた。
「……あのさ……たまにセルティスは悲しい顔をする。何があったんだ?」
セルティスはゆっくりと話した。
「悲しい顔か……まだ、忘れられないんだな、きっと」
フーッと息を吐きながら、心を落ち着かせて言った。
「修行や剣士になってからの仕事を一緒にやっていた男の人がいた。でも、あたしを庇って命を落とした。凄く大事な人だった」
セルティスは拳を握りしめた。
「それからかな……自分に許せなくて……その時に笑顔も幸せも置いてきた」
ホークはそれを聞いて、優しい笑顔で頷いた。
「安心したよ。なんか」
「えっ?」
セルティスは目を丸くした。何故なのか見当もつかず、頭には疑問符が何個も浮かんでいる。ホークはニパッと笑った。
「セルティスも人間なんだなと。あまり弱さを見せないからさ。でも、人間なんだから弱さもあっていい」
セルティスは頷いた。
「そうだな、ありがとう、ホーク」
ホークは一息ついてから、真剣な眼差しをセルティスに向けた。
「笑顔も幸せもまた、俺が取り戻してやる」
セルティスはまた目を丸くした。ホークは少し照れているように見える。
「あっ……いや、なんでもない。もう、今日は休もう」
そう言って話題を変える。
「セルティスが治療している間に、シオルの街の人から聞いた話でさ、秘宝があるって。秘宝は魔石らしいが、もしかしたら、一度だけ生き返らせるものかもしれない。俺は探しに行きたい。一緒に来てくれるか?」
セルティスは頷いた。
「あぁ。約束したからな。私に付き合うから、ホークにも付き合えって」
ホークはフッと笑った。
「セルティス、ありがとうな。無理矢理、付き合わせて」
セルティスは首を横に振った。
「こっちこそ、ありがとう。本当に巻き込んでごめん」
ホークは弱さも見せて、でも、セルティスらしさが戻ってきて嬉しい気持ちになった。
セルティスはセルティスだ。
男っぽい性格であっても、たまに女の子っぽいところ見せても、セルティスの全てがホークにとっては、必要だった。
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