第14話 稽古をつけてくれ!

 セルティスはアランにじっと見つめられてギョッとする。


「なんだ……?」


 そんなにじっと見られても困る。アランはハッと我に返った。


「あっ……いや……」


 そんな様子を見ていたホークは、アランの今の思いを代弁した。


「セルティスの強さに惚れたんだってさ」


 セルティスは目が点になった。


 「は?」


 ホークの冗談だと思っていた。


「バカなこと言うなよ。それよりもケガは大丈夫か?」


 アランの様子を見て声をかける。


 アランはまたじっと見ている。凄く綺麗だ。


 剣士としてかっこいいだけじゃない。


 女性としても魅力的だ。


 セルティスから、ほんのりと優しい良い香りがする。


 香水でもつけているのだろうか。


「立てるか?」


セルティスは優しく声をかけた。


「……えっ……あぁ……」


アランは戸惑った。


 18歳のアランにとってセルティスという女性は刺激的だ。


スタイルが良くて、胸が多きすぎず、小さすぎず、ほど良い大きさで理想の形……ヒップもふっくらとして……お年頃の年齢なので、つい、綺麗で美人な女性を見ると体のラインを見つめてしまう。


 セルティスはアランを小突く。


「ったく、男ってやつは……」


 呆れてため息をつく。


「それなら、歩けるだろ。帰るぞ」


 セルティスは先に酒場のマスターのところへ向かう。


 その動きはさばさばしていて、気持ちが良いくらいだ。


「ちょっと、待てって」


 ホークは早々と歩いていくセルティスの後を追う。


 アランを連れて。


 アランは、セルティスが天使のような人に見えた。


「綺麗で強くて、優しさもあって……なんか人間としてリスペクトする」


 アランは呟いた。


 ホークもセルティスの強さと優しさは、認めている。


「だよな……尊敬するよ」


 ホークも頷いた。


 酒場のマスターのところに帰ってきたセルティスたちは、休憩した。


 ホークは既にお酒を飲み始めている。そんなホークにセルティスは一言。


「あまり飲み過ぎるなよ」


 セルティスの優しさ。


 たまに見せるその優しさが、ホークには嬉しかった。


 悲しく寂しい気持ちが落ち着く。


 ホークはまだ、恋人を失ったという事実を受け入れられない。


 それが本音だ。


 アランはケガの治療を受けていた。


 治療が終わると、ズカズカとセルティスのほうに向かった。


 セルティスはその気配に目を向ける。


 アランは訴えるような目でセルティスを見る。


「なぁ、どうしたら強くなれるんだ? セルティスみたいに」


 セルティスは首を傾げた。


「どうした?」


 アランの目つきは真剣だ。


「俺、セルティスみたいに強くなりたい!!どうしても、親が犠牲になった真相を突き止めたい!! だけど、四天王も復活するって聞いたし、四天王も倒したい!!」


 セルティスは少し困惑している。


「あたしは強くない。強くなれる方法はない」


 アランはセルティスに顔を近づける。


「嘘だ! 俺は感動した。強くて凛としていて、優しさもあって!!」


 セルティスはアランの熱量に引いてしまった。


「あぁ……」


 アランはマシンガントークをしているかのように話す。


 「なぁ、教えてくれ!! 強くなるために稽古してくれ!!」


 セルティスは目を丸くした。


「は? 稽古って……」


 アランはとんでもないことを言いだした。


「だったら、俺も連れていけ! 一緒に行けば、強くなるために勉強できる!!」


 ホークは、セルティスとアランのやりとりを面白そうに見ている。


 マスターも呆れかえっていた。


 それでも、セルティスにお願いする。


「頼む、一緒に連れて行ってくれないか。それと稽古もつけてくれ。あいつ、かなりの強い覚悟があるみたいだからさ……」



 セルティスはため息をついた。


 「わかったよ……一緒に連れていく。あと稽古もつける」


 あまり乗り気ではなかったが、仕方ない。それを聞いてアランは、ニッと白い歯を見せた。


「ありがとうな」

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