第13話 憧れる強さ

 セルティスはハルを睨み付けて、斜めにラグナロクを振って、身体の動きを確かめた。


 身体のキレは良さそうだ。


 セルティスは1秒も経っていないくらいの速さで、ハルに接近した。


「速い……」


 アランはセルティスの素早さに唖然としていた。


 セルティスは接近すると、ラグナロクをハルに突きつけた。


 ラグナロクは炎を纏った。


 炎に包まれたハルは膝をついた。


「女だと思って油断してた」


 不敵な笑みを浮かべたハルは、爪をセルティスの胸に突き刺す。


「セルティス!」


 アランがセルティスを助けに行こうとする。


 ホークはアランのケガの様子を見て、腕を掴んだ。


「やめとけ。セルティスなら大丈夫だ。黙って見てろ」


 セルティスは、ハルの爪に胸を突き刺されたと思われた。


 ところが、ラグナロクでガードしていた。


 掠りはしたものの、ほぼ無傷だ。


 アランは目を丸くしてセルティスを見ている。


「なんで……ダメージを与えることができるんだ?」


 セルティスはラグナロクをハルに真上から振り下ろす。


 ハルも爪でラグナロクを防御した。


 しばらく、爪がラグナロクを、ラグナロクが爪をガードするという戦いが続いた。

 アランの目には、セルティスとハルの動きが見えなかった。


 ヒュンッという音を立てて、ラグナロクは土に突き刺さった。


 セルティスはラグナロクを取りに行こうとするが、ハルの爪がセルティスを狙った。


「危ない!!」


 アランが叫ぶ。


 セルティスは腕を瞬時に掴んだ。


 そして、足払いをして、ハルのバランスを崩す。


 そこがチャンス。


 その隙にハルの図体を投げ飛ばした。


 ハルが起き上がる前に素早くラグナロクを手に取って構える。


 アランは再び驚愕する。


「投げ飛ばした……」


 かなり驚いているアランにホークは、ニヤリと笑う。


「戦い方に惚れるよな。セルティスは、ただの剣士じゃないぜ」


 アランはあまりの衝撃にセルティスに見惚れてしまった。


 ハルはセルティスを睨み付ける。


「おまえ……」


 セルティスに接近し、爪を食い込ませようとする。


 セルティスの肩に爪が食い込む。


 しかし、フワッと横に身体を反ったため、傷は浅かった。


 セルティスはラグナロクを振り回した。


 強烈な炎を作り出して、ハルを斬りつける。ハルは地面に背中を叩きつけられて倒れた。


「おまえ……何者だ……なんで……俺が……」


 セルティスはラグナロクを鞘に納めると、ハルを睨み付けた。


「あたしはただの剣士だ」


ハルは口角を上げる。


「上には上がいるか……俺は一番強いって思っていたんだけどな……もっと強くなりたい……お前よりもな……」


 そう言って、ハルの身体は消えた。アランは震えていた。セルティスの強さを目の当たりにしたからだ。


 厳密にいえば、肉体や戦い方ではない。


 セルティスの持つメンタルに衝撃を受けたのだ。


「すげぇ……心が強い……」


 アランは弟子にしてほしいと本気で思うほど、セルティスの強さに憧れを持った。

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