第2話 廃棄ビルの中

2


そのドアは、アルミで出来ているのであろうか、

大きさの割には重さを感じさせない。

だが、長い年月の為か汚れが酷く手に汚れが付く。

中に入ると、何と無く肌寒い、そして異臭がする。


「何か、臭うね」

と、僕は少し怯えて言ったが、

雄一君は何も応えてはくれない。勇敢にも奥に入って行く。

ビルの中は薄暗く、数歩進むと階段があった。


「昔、ここはアパートだったらしいよ」

と、雄一君が階段を上がりながら、振り向き

僕に言った。


「アパート?!だったら此処には多くの人が住んでいたんだね」

と、何故かホッとする気持ちが湧いた。


「でもね、此処で何かあったらしよ」

と、雄一君が後ろにいる僕に聞こえる様に

少し大きな声で言った。


「何かって何?」

と、僕の声も大きくなる


「知らんけど?!誰かが言っていた。

此処で殺人事件があったとか、飛び降り自殺があったとか、そう言う噂があるんだってこのビルは。」


「なんだか、いい加減だね。噂なんてあてにならないよ」

と、僕は恐怖心を抑えながら強がるように言ってみた。


2階に上がると、目の前に廊下が見える。

右手の壁には埋め込まれた窓があり、そこからの日差しで明るさは保たれてはいるが、不気味な感じは否めない。


廊下を歩いて行くと左側に個室のドアが何室も並んでいた。

「誰か居ませんか?」

と、雄一君はおどけてドアをノックしている。


「居る訳なじゃんか!そんな事するなよ。

誰か居たら怖いし」

と、僕は大きな声で咎める様に云う


「居る訳無いのに、居たら怖いって矛盾するぞ。何言ってるんだ!」

と、怒ったのだろうか言い方が少し強い。廊下を歩いて確認すると、ドアは6枚あった。

部屋の数は6室だ。


「このビルは、4階建てだったね。だとすると、24室あるんだね」

と、僕は独り言の様に呟いた。


「全部が同じ造りだとは、限らないよ。上にあがろう。」

と、雄一君はまた、階段を昇っていく。


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