都市伝説

ボーン

第1話 真昼の肝試し



廃墟のビルがひっそりと、建っている。

解体される事も無く、哀れな姿を晒している。

灰色のコンクリートに覆われ、外の壁は所々に穴が空き

朽ち果ていく様は、一つの時代の終わりを語っている様にも見える。


灰色の雲が空全体を覆って、今にも泣きそうな

日曜の午後、

傘の用意もせずに、二人の少年が廃墟のビルを見ていた。


「あのビルだよ、伝説の霊スポットは」

と、雄一君が指を指す。

僕は黙ってビルを見ていた。

「なんだか、あのビル可哀想」

と、僕の呟きが聞こえたのだろうか、

雄一君は、笑いながら言った。

「ビルが可哀想だって?建物に感情なんてないよ。

橋田君は詩人だな(^^)」


「詩人じゃないけど・・」

と、僕は少しむくれながら小言で言った


「入ってみようよ、あのビルに。何があるか見てみようよ」


「入ってどうするの?」

と、僕は少し驚きながら、雄一君に聞いた。


「夜だと怖いから、昼間だったら怖くないでしょ。

だから、今なら入れるよ。冒険してみようよ」


「雄一君は、豪傑だな。あんな所に入っても仕方無いよ。」


と、僕は嫌そうな素振りをしたが、雄一君はビルに向かって歩いて行く。

僕は、雄一君の背中を追って歩きだした。


「お〜い、僕たち、何処に行くの?そんな所に行ったら危ないよ!」

と、自転車に乗った見知らぬおばさんが、

僕たちに呼びかけている。

だが、雄一君には届いていないみたいだ。


雄一君はビルの入り口のドアを開いた。


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